中国株式ファンド

新興国としての中国から、経済大国としての中国へ

2011-8-12

 中国の世界経済における存在感が近年、非常に大きなものとなってきている。今後、中国株式は、世界経済の成長を捉えた分散投資を実行するうえで、重要な資産クラスの一つとなっていくだろう。実際、2010年に、中国の名目GDPは5兆8,790億ドルと、日本の5兆4,742億ドルを上回っており、世界第2位の経済大国となった。また、中国の株式市場は、金融取引に関する規制や重複上場などを考慮していないものの、時価総額の合計額ではすでに日本を追い抜き、世界第2位となっている(2011年7月末時点、国際取引所連合のデータを基に中国国内における株式市場時価総額の合計額を算出)。

 このように中国株式は中国の経済規模の拡大に伴い、新興国経済の成長を享受するために投資するという対象から、世界経済の動きを捉えるために投資するという対象へ変化しつつある。ただし、中国株式には、様々な種類があり、投資する株式の種類によってファンドの値動きも異なるものとなる。

図1:中国と日本の株式市場の時価総額推移

中国と日本の株式市場の時価総額推移

出所:WFE(国際取引所連合)のデータをもとにモーニングスター作成
中国=香港証券取引所、上海証券取引所、深セン証券取引所の合計額
日本=東京証券取引所(2002年〜)、大阪証券取引所(2005年〜)、ジャスダック(2006年〜2009年)の合計額

中国株式には通貨や企業の所在地などによって様々な種類がある

  中国株式には取引に使われている通貨や企業の所在地などによって下記のような種類の株式が存在する。

図2:中国株の市場分布と種類

中国本土上場銘柄 上海証券取引所 A株
B株
深セン証券取引所 A株
B株
香港上場銘柄 香港メインボード H株
レッドチップ
その他香港株
香港GEM市場 H株
レッドチップ
その他香港株

 まず、中国株式は「香港上場銘柄」と「中国本土上場銘柄」に大きく2分類される。
  香港上場銘柄は、「メインボード」と新興市場である「GEM(Growth Enterprise Market)」 に分かれており、上場銘柄はさらにその会社の登記先によってレッドチップ、H株、その他香港株に分類される。レッドチップは、中国本土以外で登記された中国資本の企業が香港市場に上場した株式を、H株は、中国本土で登記された中国企業で香港市場に上場している株式を指す。また、その他香港株とは、香港企業や海外企業で香港市場に上場している株式を指す。中国株式ファンド(※1)の中でも香港上場銘柄を主要投資対象とするファンドは、運用実績が長く、設定本数も多い。  

  中国本土上場銘柄は、「上海証券取引所」および「深セン証券取引所」で取引されており、原則として中国国内投資家のみに取引が制限されている「A株」市場と、外国人投資家にも開放されている「B株」市場がある。B株市場は、A株市場に比べて銘柄数が少なく時価総額も小さい。そのため、2002年12月以降、中国当局は適格海外機関投資家(QFII)制度を導入し、一定の投資枠の範囲内でA株市場を外国人投資家に開放している。一部の日本の運用会社ではQFII制度を通じて、A株市場に上場する銘柄へ投資するファンドを設定している。A株を主要投資対象とするファンドには、中国株式ファンドの中で純資産額上位に入っているファンドも少なくない。しかし、上記のように投資枠の制限が存在することから、一定程度まで純資産額が拡大すると新規の買い付け申込みを停止するファンドもいくつか見られる。

  また、上海証券取引所と深セン証券取引所では、上海は大企業と外国企業、深センは中小・ベンチャー企業の銘柄が多いというという特徴がある。A株市場へ投資する中国株式ファンドの多くが上海証券取引所に上場する銘柄の組入比率を高くしている。ただし、中国株式ファンドの中には深セン証券取引所に上場する銘柄を主要投資対象とするファンドも存在している。

  また、中国株式ファンドのテーマなどに着目すると、中小型株式や環境関連、インフラ関連に着目するファンドなどが設定されている。中国株式ファンドのラインナップは投資対象や注目するテーマなどの面で多様性に富んでおり、様々な選択肢の中からファンドを選定することができる。中国株式ファンドへの投資にあたっては、各ファンドの投資対象やポートフォリオの中身を精査したうえで、選択すべきだろう。

※1 モーニングスター類似ファンド分類「国際株式・中国(為替ヘッジなし)」

中国株式市場の注意点はインフレ率

 最後に、中国株式ファンドをポートフォリオに組み入れるうえで、注意すべき点についてふれたい。ここ数年、中国株式市場における最大のリスク要因として注目されるのは中国国内のインフレ率である。インフレ率の動向次第で中央銀行や政府による金融引締め政策が左右されるため、中国の景気及び株式市場に大きな影響を与える。今後、中国政府が過度な金融引締めによって景気後退を引き起こさないか注視する必要があるだろう。

 次に懸念される点は中国の不動産バブルと地方政府の不良債権問題である。今後、不動産価格が下落基調に転じた場合には景気が減速する可能性が高い。加えて、中国の地方政府が運営する金融会社の借り入れが今後、不良債権化し、中国の景気を押し下げるリスクも一部から指摘されている。

  また、中国ファンドの過去5年間の標準偏差(年率換算)は31.75%と、モーニングスター類似ファンド分類の中で3番目(※2)に高いものとなっており、変動が大きい資産クラスといえる。つまり、高値掴みをして、その後、投資した水準を上回るまで時間がかかってしまうといったことになる可能性もある。そのため、積立投資などによって、投資する時期を分散するなどの工夫が必要となるだろう。

  世界経済の動きを捉えるうえで、中国株式を組み入れる重要性は、今後、ますます高まっていくだろう。中国株式ファンドへの投資にあたっては、上記のようなリスクを認識したうえで、各ファンドがどのような種類の株式に投資しているかなど、ポートフォリオの内容を確認し、投資してもらいたい。

※2 モーニングスターの類似ファンド分類のうち過去5年間のデータが存在する79分類の中で比較

図3:中国の消費者物価上昇率の推移

中国の消費者物価上昇率の推移

出所:ジェトロ、中国国家統計局のデータをもとにモーニングスター作成

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