田中貴金属工業

TOKYO GOLD SESSION 広くわかりやすい情報が得られる金投資のセミナー

主催:田中貴金属工業、協力:ワールド ゴールド カウンシルで行なう、金の啓蒙や普及を目的としたイベント週間として、今年もTOKYO GOLD WEEK が開催された。銀座を中心に様々なイベントが催される中、10月24日に、金の話題を中心に経済や今後の動向などをわかりやすく解説する「TOKYO GOLD SESSION」が東京国際フォーラムで開催された。

第1部:「投資のトレンドは肉食系から草食系へ移ってきている」

 セミナーの第一部ではワールド ゴールド カウンシル 日韓地域代表の豊島逸夫氏による「草食系投資家のための金講座」と題した講演が行われ、投資家のスタイルが「草食系」へ移行しつつあることや短期、長期の金市場の見通しについて話した。

1.レバレッジを掛ける肉食系からコツコツ貯める草食系へ

 豊島氏は、レバレッジを掛けて積極的に投資をする投資家を「肉食系」投資家、地味だけれどもコツコツとためる投資家を「草食系」投資家に例える。サブプライム・ローン問題やリーマンショックにより、「肉食系」投資家が受けたダメージは深刻で、その後の回復も遅れている。今後は、世の中の全体的な流れとして、投資家のスタイルが「草食系」へと徐々に移っていく可能性があると見ている。

第1部 特別講演「草食系投資家のための金講座」
動画はこちら

 例えば、中国では現在、純金積立を中国の民間銀行で販売しようとする動きが広がりつつある。以前の中国では、金は投機の対象という見方が強かったものの、金融危機の後では、投資家の見方が変わってきており、信用リスクが比較的低い金を毎月積み立てる投資スタイルに注目が集まっている。中国の民間銀行による純金積立の販売は、日ごろから彼らが接している顧客の声が反映された動きであるようだ。

2.中国公的機関の買いに注目

豊島逸夫氏
ワールド ゴールド カウンシル
日韓地域代表 豊島逸夫氏

 金価格の動きを見る上でも中国の動向からは目が離せない。豊島氏は、中国の人民銀行が金の保有比率を高めていることは、「金の世界では今年の10大ニュースになる」としている。現在の中国は、2兆2千億ドルの外貨準備のうち、約7割を米ドルで保有。今後は通貨分散を図る必要があるものの、米ドルの代替となるような通貨は限られていることから、新たな外貨準備の手段として、金への注目が高まっている。ちなみに、中国の金の保有高は2009年3月末時点の約600トンから、9月末には約1,054トンに増加。金は、世界で年間約2,400トン程度しか取れないこともあり、中国が1国で年間約400トン以上の購入を継続した場合、金価格に与える影響はかなり大きい。中国の外貨準備の中で金の占める割合は、米国の約78%に対し、依然として約1.9%にとどまっており、今後も金の保有高を増やす可能性が高いことも、金への強気材料の一つとなりえる。

3.短期的には調整の可能性も

 今後の市況動向について豊島氏は、直近は大手ヘッジファンドの買いによって価格が押し上げられており、その動向が注目点の一つと見ている。具体的には、ニューヨークの金先物市場の買い残高が大きく積み上がっていることから、彼らが「どのタイミングで売り抜けるのかに注目」しているようだ。ヘッジファンドの動向によって需給関係は大きな影響を受ける可能性が高まりつつある中、短期的な金価格はやや過熱ぎみであることもあり、一度調整に見舞われたとしても不思議ではないと見ている。

 ただ、豊島氏はもう一つの注目点として、大手鉱山会社のバリックの動向を挙げている。バリックなどの金を採掘している鉱山会社は、以前から金の先物を買い付けて、自らの販売価格を安定させるというスタンスをとってきたこともあり、その動向が注目されている。特に、バリックは自社の先物の売り残高が約300トンあると発表しており、いずれは買戻しを迫られる可能性がある。こうした点を考慮すると、仮に前述の理由で短期的に下げたとしても、下落局面では買戻しが入ることが期待され、これまでの上昇基調を根本的に変えるまでには至らないと考えているようだ。

4.長期的な上昇の余地は大きい

 これらの金に関する需給面を見た上で、豊島氏は現在の金価格は需給に左右されやすい「バブル」的な部分と、実需が混在していると見ている。ヘッジファンドによる投機的な買いは前者に属するものの、中国における政府や民間からの需要、年金基金からの継続的な資金流入は後者に属する。短期的には調整する可能性もあるが、実需に支えられて、中長期的な上昇余地は大きいと考えているようだ。さらに豊島氏は、米国ではマネタリーベースが大きく伸びているように、世界的な金余りが少なからず金価格にも影響を与えているため、今後はバーナンキFRB議長がこれをどうやって吸収していくかという「出口戦略」についても、注目していく必要があるとしている。

第2部:パネルディスカッション「本音トーク」

 第二部のパネルディスカッションでは、豊島氏に加えて、フリーアナウンサー・ファイナンシャルプランナーの生島ヒロシ氏、田中貴金属工業株式会社 執行役員 貴金属部 部長 池田収氏を交えて、投資対象としてだけではない金の魅力や実際の買い付けにおける注意点などについて、各氏の「本音」ベースでのパネルディスカッションが展開された。

1.ポジショントークとは

 まず、はじめにパネルディスカッションの口火を切ったのは生島氏である。生島氏は知り合いの株式評論家の話にしたがい、ある銘柄を買い付けて失敗したという自らの実体験を明かした。これに対して豊島氏は、プロには「ポジショントーク」というものがあると指摘。「ポジショントーク」とは、プロであっても、それぞれのおかれた立場によって発言が異なる場合があるというもの。豊島氏はその例の一つとして、イラク戦争の例を挙げて分かりやすく説明した。

第2部 パネルディスカッション「本音トーク」
動画はこちら

 例えば、あるトレーダーが、戦争が始まる半年前から金価格の上昇を見越して、金を購入した。しかし、彼は開戦直後に受けたインタビューで、「有事の際の金は買いだ」と述べ、金価格が上昇したところで自分自身は売り抜けたのである。つまり、プロの投資家が常に真に自らの見通しを述べるとは限らず、場合によっては自分が保有するポジションに対して、有利な発言をするということである。

2.分散投資の重要性

生島ヒロシ氏
フリーアナウンサー・
ファイナンシャルプランナー
生島ヒロシ氏

 次に、分散投資の重要性を改めて認識すべきとの議論が展開された。ドル・コスト平均法による時間の分散のほかにも、資産の分散として金が買われているという面が指摘された。豊島氏は、サブプライム・ローン問題やリーマンショックが起きて、やはり「高いリターンが期待される金融商品には、それに応じた高いリスクがあるということが改めて認識された」と指摘し、分散投資の一環として改めて金が注目されてきていると述べた。生島氏も分散投資の重要性についてふれ、「分散投資の基本は金融商品と地域と時間を分けること」であり、手数料や税金などのコストにも注意すべきとしている。



3.金は「投資」よりも「資産」として

 次に、相続に関する資産の話へと移り、豊島氏は、金と不動産を代表的資産としてあげた。両資産はそれぞれ、一長一短があり、金への投資が有利な点として、「いつでも売買が可能」、「小額の資金からでも投資が可能」、「固定資産税がかからない」の3つを挙げ、一方、不動産への投資が有利な点としては「上もの(建物)が建てられることから、継続的な収入としての賃貸料収入などが得られる」メリットがあると述べた。
 池田氏はこれらに加えて、金のメリットとして「海外でも通用する」、「長期保有しても劣化しにくい」という点を挙げている。さらに、金は投資というよりも、むしろ「資産として購入して、無理のない範囲で長期保有すべき」であり、「あくまでも短期売買で大きく儲けたいと考えている人は、別の金融商品も選択肢の一つである」と述べている。

4.自分のリスク耐性や業者選びに注意

池田収氏
田中貴金属工業株式会社
執行役員 貴金属部 部長 
池田収氏

 さらに、各氏は改めて、投資家が資産形成を行う上で、注意すべき点をいくつか指摘している。豊島氏は、資産の上下動に落ち着いて耐えられる「投資耐性」の必要性について触れた。池田氏は、「資産は運用と保全との違いを認識し、その目的に応じて運用方法や投資対象を使い分ける必要がある」と述べた。また、最近は手の込んだ悪徳商法があるとして、業者選びについての注意点にも触れ、豊島氏は、「金地金流通協会の会員情報なども参考にしてもらいたい」と述べた。


5.最後に・・・

 最後に、各氏は金を含めた金融商品への投資スタンスについて述べた。まず、豊島氏は「株や金などの運用が関係ないと思われている人でも年金は株や外貨で運用されており、勉強はしておいたほうが良い」という。生島氏は「お金の奴隷にならない」ことの重要性を指摘した上で、増やすための運用以外にも保険やローンの見直しも含めて、「ファイナンシャルリテラシーを上げていくことこそが大切」だと述べる。池田氏は「金は勧めません。金は儲ける、儲けないというものではない。あくまでもポートフォリオの一部として長期保有を前提とすべき」と語り、その上で、池田氏は「金に投資する方法としてお勧めしているのは『純金積立』(金を毎日一定の金額で買付ける定額購入システム)」であるとし、「日本人にはそうしたスタイルが最もあっているのではないか」と述べた。


  • この情報は投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としてはいません。又、弊社が信頼できると判断したデータにより作成しましたが、その正確性、安全性等について保証するものではありません。
  • 著作権等の知的所有権その他一切の権利はモーニングスター株式会社並びにMorningstar,incに帰属し、許可なく複製、転載、引用することを禁じます。
Copyright© 2009 Morningstar Japan K.K.All rights reserved.