グローバル企業比較「アップル・グーグルを追撃 ソニーに投資価値」

アップルの「iPhone」(アイフォーン)を中心に空前のスマートフォンブームに沸く世界の携帯電話市場。「iPhone」の対抗馬と目される携帯電話向け基本ソフト(OS)「Android」(アンドロイド)を有するグーグル。その「Android」を搭載した携帯や、電子書籍端末に力を入れる日本の雄ソニー。モーニングスターが持つデータを基に、いま世界で注目を浴びる3社を比較してみた。

アップルの攻勢続く

次々と新商品を投入するアップルの勢いが止まらない。6月24日、新型スマートフォン「iPhone 4」が日本を含む5カ国で同時発売された。5月28日の「iPad」(アイパッド)発売からわずか1カ月後のことだ。「iPhone」はアップル社の主力製品で、2010年の第2四半期(1月〜3月)決算では「iPhone」を875万台販売、全世界で累計5,100万台超を売り上げたと発表。過去最高の予約台数を記録するなど「iPhone 4」の出だしも好調と伝わっており、「iPhoneの」売上台数が2010年第3四半期(4〜6月)以降飛躍的に伸長する可能性が指摘されている。加えて、同社が手掛けるタブレット型のパソコン「iPad」も4月3日の発売から既に300万台超を販売するなど、消費者向け(コンシューマー)機器部門ではアップルの攻勢が続く。

一方、携帯端末向けOSのライバルであるグーグルは「Android」を搭載した携帯電話で対抗する。米モーニングスターのアナリストは「モバイルデバイス市場において、強力な2番手プレーヤーが現れる可能性は四半期を追うごとに低くなっている。グーグルの『Android』が2位を確保したとしても、その差は非常に大きくなるだろう」と見ている。ただ、仮に大きな水を空けられたとしても、やはり「iPhone」追撃の1番手は「Android」というのが市場の見方だ。その見方は現実味を帯び始めている。6月23日にグーグルは、携帯端末向けOS「Android」を搭載した携帯電話端末の世界中での販売台数が日に16万台であると発表した。これは第1四半期の「iPhone」の売り上げを1日に換算した台数の実に約1.6倍だ。端末売上とアプリ仲介手数料を収益源とするアップルと広告収入を収益源とするグーグルの収益率は大きく異なるが、このニュースが市場に与えたインパクトは大きい。

ソニーも黙って指をくわえているわけではない。グループ会社のソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズは「Android」を搭載したスマートフォン「Xperia(エクスペリア)」を発売している。また、電子書籍端末として「iPad」をみれば、ソニーの「Sony Reader」(ソニー リーダー)がライバルとなる。既に欧米では電子書籍端末の値下げ合戦が始まっており、「iPad」も単価下落の影響を受ける可能性がある。日本国内での電子書籍端末発売に供え、ソニーはコンテンツにも注力。朝日新聞やKDDIと共同で電子書籍配信事業に関する企画事業会社の設立に合意している。

【表1】
アップル グーグル ソニー
市場 ナスダック ナスダック 東証
コード AAPL
GOOG 6758
終値 270.97ドル
(6/23終値)
482.05ドル
(6/23終値)
2,521円
(6/23終値)
MSレーティング ★★★ ★★★ -
トータル
リターン(%)
1年 3年 5年 1年 3年 5年 1年 3年 5年
89.15 28.46 45.23 16.39 -0.83 11.86 13.82 -25.90 -6.82
時価総額 22兆2,168億円 13兆8,334億円 2兆5,298億円
前期実績売上高 3兆2,713億円 2兆2,017億円 7兆2,139億円
前期実績純利益 5,107億700万円  6,070億2,100万円 -408億200万円
総資産 5兆318億円 3兆7,840億円 12兆86,611億円
PER
現在 5年平均
30.3 31.4
現在 5年平均
21.88 46.9
現在 5年平均
21.32
PBR
現在 5年平均
6.27 6.54
現在 5年平均
4.01 7.95
現在 5年平均
0.85 1.25
ROA
(%)
12.21 18.05 -
ROE
(%)
23.35 20.3 -
Current Ratio 1.88 10.62 0.95
Financial Leverage 1.93 1.12
データは6月23日時点
1ドル=約90円で試算
データはMorningstar Directから取得
材料面では今後も大きな期待の持てる3社だが、投資対象としてはどう見ればよいだろうか?
【図1 iPhoneの販売台数とアップルの株価推移】

アップルの業績動向や株価は、過去の経緯から、今後しばらくは「iPhone」の売れ行き次第とみてよさそうだ。(図1)「iPhone4」の好調なスタートを見れば、業績拡大はまだまだ進む公算が大きい。グーグルは検索広告が従来型メディアから市場シェアを引き続き獲得。景気回復に伴い広告市場全般が回復していることも追い風となりそうだ。ただ、「今後複数の事業に対する投資強化を打ち出していることから収益率は限定的になる」(米モーニングスター)と懸念材料もある。ソニーは11年3月期の連結営業利益を前期比5倍の1,600億円と予想、これまで苦戦してきたゲーム事業の黒字化などを計画している。市場では「3D(立体映像)テレビの販売効果などによる家電製品価格の下支え。PS3を柱としたゲーム事業の回復が期待できることから会社計画は低め」とポジティブな見方が大勢を占める。

【図2】

[2007年1月1日を基準として当該3社、日経平均株価、ナスダック総合指数を表示]

3社の株価を比較すると、07年を起点としたトータルリターンはアップルに軍配が上がる(図2)。ゲーム、液晶事業で赤字が続いているソニーの株価は07年からのリターンは3社中最も低くなった。ただ、ソニーも直近1年のリターンはプラス13%とグーグルに引けをとらない数値となっており、市場でも見直し気運が高まっているといえよう。

株価指標面で、3社共通にいえることは、直近の株価は過去5年間の平均と比べても割安感が出ていることだ。(表1)さらに直近のPER、PBRと5年平均のPER、PBRのかい離が広がるようなら投資のチャンスと見ていいかもしれない。

企業間の横比較では、アップルの5年平均PERが31.4、グーグルが46.9に対し、ソニーは21.3とソニーの割安感が目立つ。PBRもソニーが群を抜いて低い。11年3月期の業績回復が期待できるソニーの評価はアップルやグーグルと比べて市場では低く見積もられている可能性がある。ソニーには事業の多様性が今後プラスに働く公算が大きい。電子書籍ではハードはもちろんコンテンツというソフト事業にも対応できている。また、広くコンシューマー機器を扱っている点は米国の2社とは一線を画す存在といえるだろう。ソニーには割安感もあり、投資対象として世界の企業と比較しても見劣りしない。

(宮本 裕之)

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