業界動向を追う−結婚式場運営業界−

2010年3月に東証マザーズ市場に上場したエスクリ(2196)に続き、7月23日にはジャスダック市場にアイ・ケイ・ケイ(2198)が新規上場する。ともに結婚式場の運営を手掛ける新興企業だ。続々と上場を遂げていく結婚式場運営業界は現状どうなっているのか。その動向と先行きを追う。

ここ数年、堅調に推移してきた結婚式場運営業界は足元で伸びが鈍化傾向にある。矢野経済研究所が実施した「ブライダル市場に関する調査結果2010」によれば、2009年の挙式披露宴市場規模は前年比1.4%増の1兆5150億円と2008年実績(前年比2.1%増)から伸び率が縮小。続く2010年も同1.0%増の1兆5300億円と微増にとどまる見込みだ。

結婚式場運営業界が伸び悩んでいる要因の1つが婚姻組数の減少。09年の婚姻組数は70万8824組と08年実績の72万6106組から1万8282組減少している(厚生労働省・人口動態統計)。婚姻組数は1970年代前半に100万組を超え、婚姻ブームを呈したが、その後は低下し、現状ではアップダウンを繰り返しながらほぼ横ばいの状態だ。今後は結婚適齢期(20〜34歳)の将来的な人口減少が見込まれ、婚姻組数は漸減傾向を辿る公算が大きい。

一方、挙式・披露宴にかける費用は増加傾向にある。結婚情報誌「ゼクシィ」の「結婚トレンド調査2009」によれば、挙式、披露宴・披露パーティ総額(全国平均)は05年の292.8万円から09年には330.7万円まで上昇しており、婚姻組数の減少をカバーすることでブライダルマーケットの下支えとなっている。ゲストハウスウェディングを専門とする新興企業が断続的に魅力的な店舗開発を進めたことに加え、伝統や格式にとらわれずオリジナリティやプライベート感を重視したサービス提供が増加したことが単価上昇につながっているようだ。

【婚姻組数と挙式、披露宴・披露パーティ総額の推移】

厚生労働省・人口動態統計および結婚情報誌「ゼクシィ」結婚トレンド調査よりMS作成

ただ、長期化する景況感の低迷や雇用不安を背景とした低価格志向の強まりなどを背景に、今後、単価が伸び悩む、または減少に転じる可能性がある。また、披露宴・披露パーティの招待客人数が低下傾向にあり、一部で小規模化の動きが出始めていることも懸念される。長期的にはブライダルマーケットの縮小は避けられないと見られ、結婚式場運営業界は競争激化が見込まれよう。各結婚式場運営企業が生き残るためには、サービス内容の充実や海外市場など新たなマーケットの開拓・創出が不可欠であろう。

国内株式市場に上場している結婚式場運営企業ではワタベウェディング(4696)が売上高500億円超の最大手だ。続いてテイクアンドギヴ・ニーズ(4331)、ベストブライダル(2418)、ノバレーゼ(2128)、エスクリ(2196)となる。ただ、時価総額で見た場合にはベストBが最も大きく、市場からの評価が高い。過去の株価推移でも安定的に良好なパフォーマンスとなっており、ベストBは結婚式場運営企業の中で優良な投資対象といえそうだ。

【結婚式場運営企業4社とTOPIXの株価推移】
(日足・09年初を100として指数化)

厚生労働省・人口動態統計および結婚情報誌「ゼクシィ」結婚トレンド調査よりMS作成

ベストBの評価を支えている要因が、高い成長性と収益性にある。過去5年間の営業利益成長率(年率換算)で見ると、ベストBの27.30%に対し、ワタベは3.22%、T&Gニーズは−11.61%と成っている。3社間での業績規模の異なりを考慮しても、ベストBの成長性は他2社を大きく上回っている。加えて、収益性でも自己資本当期純利益率(5年平均)で、ベストBが30.53%、ワタベが1.80%、T&Gニーズが7.25%とベストBの優位性が際立っている。ベストBはひとつの敷地内に複数のゲストハウスを配置することで利用者の多様な嗜好・ニーズに対応し、高い集客力と収益性を生み出していると見られ、今後も継続的な業績拡大が期待できよう。なお、ベストBの10年12月期会社計画は売上高355億円(前年比9.3%増)、営業利益65.5億円(同4.5%増)となっている。

成長性、収益性の観点からはノバレーゼも評価できる。ノバレーゼの過去5年間の営業利益成長率(年率換算)は25.89%、自己資本当期純利益率(5年平均)は31.58%とベストBに引けをとらない水準にあり、過去の株価推移でもベストBとほぼ同様な値動きとなっている。ただ、時価総額が60億円程度と小さく、日々の出来高も少ないことから流動性にやや難点があるといえよう。また、上場して間もないエスクリ(2196)も、11年3月期計画で営業利益成長率32.34%、自己資本当期純利益率(10年3月期実績)42.90%と高水準だが、現状では時価総額・出来高がまだ小さい。ただ、ノバレーゼ、エスクリとも高水準の成長性・収益性を維持することでベストB同様、長期安定的な株価成長が期待できるといえそうだ。

業績面とは別に、今後の株価の動向をうらなう上でポイントとなるのがアジアマーケットへの進出だろう。その面でワタベに対する注目度は高い。ワタベは海外ウェディングの草分け的な存在であり、他社に先駆けて香港や台湾などアジアマーケットに進出している。業績への寄与はまだ小さいものの、ワタベの東アジア挙式事業は売上高10億円(前年実績2.0億円)を見込んでおり、今後の成長に対する期待は大きい。ほか、T&Gニーズやノバレーゼもアジアを中心としたグローバル展開を検討している。国内のブライダルマーケットの縮小が想定される中、人口が多く潜在需要が大きいアジアは魅力的なマーケットであり、アジア市場の需要の喚起と伝統・文化を超えたサービス提供が焦点となると見ている。

ノバレーゼ エスクリ ベストブライダル テイクアンドギヴ・ニーズ ワタベウェディング
コード 2128・マザーズ 2196・マザーズ 2418・マザーズ 4331・東証1部 4696・東証1部
株価 57,500 684 250,100 6,220 1,020
年初来高値 76,900(4/27) 1,013(3/5) 312,000(1/7) 12,190(1/8) 1,261(4/27)
年初来安値 53,900(5/25) 624(3/11) 232,000(5/25) 5,850(7/2) 955(1/27)
規模比較
時価総額(百万円) 5786.8 2547.6 20408.2 8066.9 10107.6
今期予想売上高(百万円) 11,500 7,021 35,500 47,759 53,100
前期実績総資産(百万円) 7,924 3,540 37,530 43,456 25,864
前期実績純資産(百万円) 4,151 835 12,546 16,322 14,976
バリュエーション比較
予想PER(倍) 5.26 7.79 5.78 9.41 12.63
実績PBR(倍) 1.39 3.05 1.63 0.50 0.68
予想配当利回り(%) 2.09 - 2.00 - 2.94
成長性比較
売上高成長率・5年間(%) 25.66 - 17.06 7.06 11.24
営業利益成長率・5年間(%) 25.89 - 27.30 -11.61 3.22
純利益成長率・5年間(%) 30.29 - 31.61 -21.67 -6.26
収益性比較
売上高営業利益率・5年平均(%) 16.29 - 16.81 6.76 5.77
自己資本当期純利益率・5年平均(%) 31.58 - 30.53 1.80 7.25
総資産経常利益率・5年平均(%) 26.13 - 16.03 7.32 9.76
財務安定性比較
流動比率(%) 71.8 82.2 100.3 51.2 95.4
デット・エクイティ・レシオ(%) 31.5 119.5 134.6 116.0 15.2
自己資本比率(%) 52.4 23.6 33.4 37.4 57.9

※1 5社中で優位な数値を赤字(1位)、緑字(2位)で示した
※2 全てのデータは7月8日時点
※3 成長性は今期会社計画を含む、収益性・財務安定性は前期実績の数値

(杉山 容俊)

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