グローバル企業比較

建設機械・車両需要は先進国で下げ止まりの兆しがみえ、新興国では堅調な展開が続く。米国景気の鈍化、欧州財政懸念など先進国には不透明要素は残っているものの、アナリストの間では建機株に強気な見方が大勢を占める。世界展開をしている大手のキャタピラー(CAT)、アジアに強みを持つコマツ(6301.T)そして、農機のウェートが高いディア(DE)に焦点を当てた。その結果、コマツに投資妙味があることが浮かび上がってきた。

建機需要堅調

大手建機企業の業績は好調。前期に落ち込んだ反動増の影響が強いものの、先進国での需要に底打ちの兆しがみえる上、新興国では堅調な需要が目立った。

コマツが発表した11年3月期第1四半期売上高は前年同期比39.5%増、営業利益は同6.5倍。建機・車輌部門では、中国、アジア、中南米で需要が大幅に伸びた上、欧米など先進国でも底打ちの兆しがみえた。地域別で前年同期比最大の伸び率(同77.5%増)となった中国では、インフラ向け建機の需要が引き続き旺盛。中国市場の建機・車輌需要は同2倍以上に拡大したとみられ、同社はその恩恵を享受した格好だ。

キャタピラーの10年12月期第2四半期(4〜6月)売上高も同30.5%増、営業利益が同2.8倍と大幅増収増益。南米とアジアでの好調が引き続き業績をけん引、南米での建機売上は前年同期比2倍超、アジアでは同62%増となった。

米ディアは米国を中心に大型農機の売上が好調だった。10年11月期第3四半期の売上高は同16%増、営業利益は88%増益。新興国ではブラジルとアルゼンチンでの売上が大きく伸びた。

新興国での売上比率高いコマツ
【図1 地域別売上高】
地域別売上高

各社決算資料からモーニングスター作成

コマツは主力の建機・車輌部門売上において、半分以上をアジア中心とした新興国であげている。日米欧の市場を「伝統市場」、中国、アジア、中南米など新興国を「戦略市場」と位置付け、建機の需要が強い新興国での事業に注力している。(図1)は各社の地域別売上高を示したグラフだが、コマツは他の2社と比べても、新興国での売上比率が高くなっていることが分かる。コマツは11年3月期会社計画で戦略市場の売上高比率をさらに上昇させ、7割近くまで持っていく方針だ。

市場は建機株に強気
【図2 コマツ、キャタピラー、ディアの株価推移】

市場関係者は建機株に対して強気だ。
 コマツの11年3月期の好調な第1四半期決算に対し、各社アナリストは高評価を与えている。(1)各市場の需要増加を確実に収益に結び付けている点、(2)主要な建機・車輌部門での利益率改善が進んでいる点が材料視されている。

今後の見通しについて大和証券キャピタル・マーケッツでは「先進国市場における需要回復ペースには不透明感が少なからず残るのは事実だが、新興諸国向けの拡大、利益率改善ポテンシャルを勘案すれば、株価には上昇余地がある」としている。また、三菱UFJモルガン・スタンレー証券では収益性の改善について、「需要拡大局面にはあるが、設備投資を手控え、固定費の増加を抑制しているため収益性の改善は顕著に進む」とし、同業他社を上回る成長力を見い出している。

キャタピラーも同じく世界的な建機需要の回復を受け、10年12月期第2四半期決算は好調に推移した。今後も新興国を成長の柱とする方針だが、モーニングスターでは、キャタピラーが成長著しい中国・アジアでシェアトップのコマツとの競争が激化するだろうと予測。キャタピラーは市場シェア獲得のため、引き続き多額の投資が必要になると予想している。

ディアの農機部門は今後も穀物の生産動向や価格に左右される傾向が続く公算が大きい。04年〜08年は米国における穀物価格の急激な上昇を背景に同社の農業機械部門売上高は年率19%増を記録した。09年は景気鈍化などを背景に建機部門が軟調に推移したものの、足元の商品市況の安定や建機需要の回復は好材料といえる。
 過去5年間平均の海外売上高成長率は国内(米国)の2倍となっており、海外が成長をけん引する構図が続きそうだ。もっとも、同社は海外市場への「適用」には苦戦。例えば、インドのトラクター市場では同社がシェアの50%握っているが、今後は市場に合わせた小さくて、安い製品の提供が必要になるとみられる。

コマツに投資妙味

モーニングスターでは、3社を比較した結果、コマツに投資妙味があると考える。
 大手建機企業は海外売上高、特に新興国の売上増を成長の要とする方針。その中で、もっとも規模、成長率が高いのが中国市場となっており、その市場でトップを走るのがコマツだ。

過去1年間のトータルリターンをみてみると、キャタピラー、ディアともに高い数値となっている。日本の株式市場の低迷という外部要因はあるものの、コマツの足元の業績・成長性は他の2社に引けをとらず、コマツには見直し余地がありそうだ。PERでは大差がないものの、PBRではコマツに相対的な割安感がある。(宮本裕之)

【比較表】
  コマツ キャタピラー ディア
市場 東京証券取引所 ニューヨーク証券取引所 ニューヨーク証券取引所
コード 6301 CAT DE
終値 1,703円 65.04米ドル(5,528円) 62.86米ドル(5,343円)
MSレーティング ★★★ ★★★
※トータル
リターン(%)
1年 3年 5年 1年 3年 5年 1年 3年 5年
18.2 -21.3 11.8 62.1 -1.8 7.4 55.1 5.1 14.3
時価総額 1兆6,482億円 3兆4,672億円 2兆2,699億円
前期実績売上高 1兆4,315億円 2兆7,536億円 1兆9,645億円
前期実績純利益 335億円 760億円 742億円
前期営業利益率(%) 4.7 1.8 5.8
PER 27.7 26.3 27.2
PBR 2.0 4.4 4.4
データは8月25日時点
1ドル=85円
データは各社決算資料、Morningstar Directから取得
※トータルリターン=配当金を再投資した累積リターン

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