グローバル企業比較

09年6月の改正薬事法により、異業種参入による収益の悪化が懸念された日本のドラッグストア業界。厳しい環境のなかでも、09年の業界全体では店舗数、売上高ともに増加した。ただ、業界トップのマツモトキヨシホールディングス(3088.T)の11年3月期第1四半期最終損益が赤字に転落するなど、足元では業界の成長に対する不透明感も漂っている。
 一方、世界のドラッグストア業界でも、激化する競争やコスト増など日本同様苦戦を強いられているようだ。グローバル企業比較第8弾は、日本の最大手であるマツモトキヨシ、世界最大のCVSケアマーク(CVS)、そして中国ナンバー1の中国ネップスター(NPD)を比較、3社の投資価値を見いだしてみた。

マツモトキヨシの11年3月期第1四半期最終損益は赤字転落

マツモトキヨシは8月10日、11年3月期第1四半期(4−6月)の連結最終損益が5億2500万円の赤字(前年同期実績は22億2100万円の黒字)になったと発表した。赤字転落の主要因は会計基準の変更による特別損失23億円を計上したことによるものだが、花粉飛散の減少による関連商品の売上不振や前年流行したインフルエンザ関連グッズ特需の反動、そして改正薬事法による影響も響いたようだ。新規出店で増収は確保したものの、既存店、特にFC(フランチャイズ)店は低迷が続いている。

海外2社も振るわず

海外のCVSケアマークと中国ネップスターの足元の業績も振るわない。

 CVSの10年12月期第2四半期(4−6月)売上高は240億700万ドル(約2兆646億円)と前年同期比3.4%減、純利益は同7.3%減の8億2100万ドル(約706億円)で減収減益。医薬サービス関連事業において、10年1月に大型顧客との契約が切れたことが痛かった。

中国ネップスターは8月11日、10年12月期第2四半期(4−6月)を発表したが、最終損益は1339万人民元(約1億7407万円)の赤字に転落した。特別損失の計上が響いたほか、新規出店した店舗の利益率が低かったことや、人件費の増加、中国都市部の不動産価格高騰を背景とした賃料の上昇などが引き続き収益面を圧迫した。

3社の業績見通し
【図1 マツキヨ、CVSケアマーク、中国ネップスターの株価推移】

このように3社は足元、苦戦を強いられているが今後の業績はどうだろうか。マツモトキヨシホールディングス<3088.T>の11年3月期会社計画の売上高は前期比10.4%増の4340億円、純利益は同6.6%減の68億円。新規出店効果やM&A(企業の合併・買収)などにより増収となる。
 一方、コスト増や会計基準の変更に伴う特別損失の計上で2ケタ減益を想定している。既存店は苦しむが、地域に密着したドラッグストアのM&Aなどにより、中長期的な目標として2016年3月期までに店舗数2000店(10年3月末現在で1131店)、売上高1兆円を目指すという。


 CVSについてモーニングスターでは今後5年間で売上高が年2.3%ずつ成長すると予想。その間の営業利益率は平均で7.2%程度になるとしている。規模の優位性を持っているうえ、オリジナルブランドの拡充が収益にプラスに働くとみられる。


 成長著しい中国での業績拡大に大きな期待がかかる中国ネップスターだが、その見通しは厳しい。営業利益率は今後3年間で平均5.5%になるとモーニングスターでは想定しているが、過去3年平均と比べた場合より低く、成長は鈍化すると想定。新規展開が積極的すぎるうえ、マネジメントがうまく行われていないことがその要因。
 会社側は近年2倍程度の勢いで店舗を増加させているが、特に大都市圏では店舗数が飽和状態となっている状況で、現在の利益率を維持するのは困難だろう。中国政府は既存ドラッグストア店舗の近くに新店を開店する場合に制限を設けており、会社側が戦略的に重要視している上海や北京での成長を阻害しそうだ。

3社の違い
【図2 3社の商品項目比較】

各社決算資料からモーニングスター作成
3社とも前期実績

マツモトキヨシが海外2社と大きく異なる点は、収益性の低い取り扱い商品の構成が多いこと(図2)。3社の前期末時点の商品項目を比較すると、利益率の高い医薬品の取り扱いには大きな差が見られる。マツモトキヨシの医薬品の構成は22.2%となっているが、中国ネップスター、CVSともに60%を超えている。マツモトキヨシなど日本のドラッグストアはディスカウントストアの側面が強く、医薬品よりも日用雑貨や食品など低利益率の製品が中心。一方、海外2社は利益率が高い医薬品中心の商品構成だ。


 利益率の高い医薬品の商品構成をあげることは収益性の向上につながるものの、日本では単純にそれが難しくなっているようだ。もともとドラッグストアが低価格のディスカウントストアという側面を持っているうえ、薬事法の改正により医薬品を単純に利益商材にするわけにもいかない。

CVSに妙味

モーニングスターでは3社のなかでCVSに投資価値があるとみている。ドラッグストアとした小売業の形態だけでなく、店舗型のクリニックとしての業態を持ち合わせている点に競争優位性を持つ。店舗型のクリニックを持つことで、地域と密着し医薬品のリピート需要が期待できるほか、処方などにより一定程度価格を維持できることが、CVSの高い利益率を維持できている要因となっている。


 株価指標面では3社に大きな大差はない。CVS、中国ネップスターは1年のトータルリターンでみた場合、大きなマイナスとなっているものの、PERは10倍台、PBRも1倍前後と売られすぎの水準ともいえない。(宮本裕之)

【比較表】
マツモトキヨ CVSケアマーク 中国ネップスター(ADR)
市場 東京証券取引所 ニューヨーク証券取引所 ニューヨーク証券取引所
コード 3088 CVS NPD
終値 1,889円 29.68米ドル(2,552円) 3.04米ドル(261円)
MSレーティング ★★★★ ★★★★
1年トータルリターン※ 11.1 -7.3 -19.6
時価総額 1,012億円 3兆4,601億円 274億円
前期実績売上高 3,930億円 8兆4,906億円 288億円
前期実績純利益 72億8,100万円 3,178億円5,600万円 18億1,900万円
前期営業利益率(%) 3.8 6.5 4.9
総資産 2,095億円 5兆3,011億円 366億円
PER 12.3 11.3 19.1
PBR 0.8 1.1 1.4
データは8月10日時点
1ドル=86円、1人民元=13円で試算
データは各社決算資料、Morningstar Directから取得
※トータルリターン=配当金を再投資した累積リターン

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