グローバル企業比較「業績好調、不況知らずの家電量販店 ヤマダ電機vsベスト・バイvsラジオシャック
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景気後退による消費の減退が懸念されるなか、大手家電量販店はどの国でも比較的堅調な業績推移が続く。日本のトップを走るヤマダ電機<9831>、世界最大手の米ベスト・バイ(BBY)、携帯やパソコンのパーツやケーブル類を得意とする米ラジオシャック(RSH)を比較した。

厳しい環境下でも大手家電は業績堅調

世界的な景気後退懸念が強まるなか、各国の大手家電量販店とも業績は比較的堅調に推移している。

ヤマダ電機が発表した11年3月期第1四半期(10年4−6月)売上高は前年同期比7.8%増の4642億9800万円、純利益は同2.5倍の86億600万円と増収大幅増益。主力のテレビが3月末のエコポイント対象商品見直しに伴う駆け込み需要で数量、金額ベースで順調に伸びた。冷蔵庫、洗濯機、スマートフォンを中心とした携帯電話、パソコン本体の売上も好調だった。販売管理も人件費を中心に圧縮を図ったことで、収益率も高い水準となった。第1四半期以降も夏商戦でエアコンを中心に好調を維持しているとみられ、多くのアナリストは今期会社計画が保守的としている。

ベスト・バイの11年2月期第1四半期(10年3−5月)の売上高は前年同期比6.8%増、純利益は同1.3%増。既存店でのエンターテインメント・ソフトウエアの販売が振るわず、好調な10年と比べるとやや勢いは衰えた印象があるものの、利益率の高いiPhone(アイフォーン)やドイツテレコムの子会社が取り扱うT-モバイルなど携帯電話を含むワイヤレス製品群への売上シフトや販促費の抑制が奏功し、粗利益率はモーニングスターの予想を若干上回った。

ラジオシャックの10年12月期第2四半期(4−6月)売上高は前年同期比4.6%増、純利益は同8.1%増とこちらも増収増益。ワイヤレス製品群の売上が前年比61%増と大幅に増えたことが、既存店売上高の増加に大きく貢献した。ただ、他の製品カテゴリー売上高は総じて前年同期と比べ減少しており、モーニングスターでは同社の製品構成がワイヤレス製品群に偏っていることを懸念材料として挙げている。今期は1ケタ台半ばの増収を確保できる見通しとなっているものの、ワイヤレス製品に傾倒する現時点の業態を継続した場合、中・長期的には成長率は低下する公算が大きい。

3社の収益性の比較
【図1】3社のROEの比較

会社資料よりモーニングスター作成

3社のROE(株主資本利益率)を時系列で比較した図表をみると、ヤマダ電機の収益性は他の2社と比べ相対的に低いことが分かる。収益性の違いは商品構成や人件費などコストの違いによるもののようだ。特にiPhoneなどスマートフォンの登場により、利益率が高いワイヤレス製品群に傾倒するラジオシャックの収益性は高い水準を維持。
ヤマダ電機は業務の合理化や人件費、広告宣伝費の徹底した管理を進めており、収益性は今後改善が見込まれている。

厳しい業績見通し
【図2 ヤマダ電機、ベスト・バイ、ラジオシャックの株価推移】

ただ、中・長期的なヤマダ電機の業績には厳しい見方がある。収益のけん引役であるテレビ売上(連結売上高の約2割)の大幅な減少が今後見込まれているからだ。エコポイント需要や11年7月のアナログ放送終了以降に薄型テレビや地デジ対応レコーダーなど買い替え需要減退が見込まれており、減収リスクがある。

ベスト・バイの業績見通しもそれほど明るくはない。今後もノート型パソコンと携帯電話の売上は好調を維持する一方、エンターテインメント・ソフトウエアの売上は振るわないと想定される。モーニングスターでは今後5年間の平均売上高成長率を1ケタ台半ばになると予想。地域別では、米国の売上高は伸び悩むと想定される一方、海外(カナダ、中国、欧州)での売上高増加が期待できる。今後数年は競合他社との激しい争いが増すとみられ、海外展開の拡充が収益低下に歯止めをかける鍵となりそうだ。

ラジオシャックは北米に6000店舗以上展開し、モーニングスターの推計によれば、約90%の米国人は5分以内の運転でラジオシャックの店舗に到着できるという。この便利さとパソコン周辺機器など商品の豊富さは強みとなりうるが、競争激化を背景に利益率の低い商品や価格の引き下げを強いられており、同社の利益率は今後低下傾向をたどることとなりそうだ。

ヤマダ電機に投資価値

3社を比較した場合、モーニングスターではヤマダ電機に投資価値が高いとみている。業績面では日本独自の要因でテレビ売上高が今後減少する公算が大きいものの、収益面は徹底したコストカットなどによる改善が進展。積極的な出店で都市型店舗の効率的な運営のノウハウも蓄えてきており、テレビ需要の減退の影響は一時的との見方も出ている。加えて、同社は成長著しい中国などへの海外を含めた初の海外出展を計画しており、新興国を中心とした地域への進出余地は他の2社に比べて大きい。

 株価指標面ではヤマダ電機のPERが8倍台、PBRも1倍台と他の2社に比べて割安感がある。(宮本裕之)

【比較表】
  ヤマダ電機 ベスト・バイ ラジオシャック
市場 東京証券取引所 ニューヨーク証券取引所 ニューヨーク証券取引所
コード 9831 BBY RSH
終値 5,260円 33.69米ドル(2,829円) 19.04米ドル(1,599円)
MSレーティング ★★★★ ★★★
トータル
リターン(%)※
年初来 1年 3年 年初来 1年 3年 年初来 1年 3年
-16.4 -9.9 -19.7 -11.9 -9.1 -5.2 23.8 -6.8
時価総額 5,083億円 1兆1,798億円 2,005億円
前期実績売上高 2兆161億円 4兆1,742億円 3,591億円
前期実績純利益 559億円 1,106億円 172億円
PER 8.8 11.0 11.2
PBR 1.2 2.2 2.1
ROE 14.8 24.0 21.5
データは9月7日時点
1ドル=84円
データは各社決算資料、Morningstar Directから取得
※トータルリターン=配当金を再投資した累積リターン

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