原発時代を制するのは 東芝vsゼネラル・エレクトリックvsアレヴァ

拡大する原子力発電による電力供給。OECD(経済協力開発機構)は、世界の原子力発電量が2030年には現在の約2倍になると予想している。地球温暖化防止に向けて、今後は原子力発電所の建設ラッシュが続く見通しで、原子力は再生可能エネルギーに次ぐクリーンエネルギーとして注目されている。ただ、原子力発電には「負」の側面も強い。安全面や核燃料リサイクル問題などがその一例として挙げられる。安全問題が再び持ち上がれば、今後の発電量の予測自体に大きな影響を及ぼしかねない。
 ただ、成長に対する見方が割れている産業だからこそ、投資価値を探る魅力は大きい。日本の東芝<6502.T>、世界最大のゼネラル・エレクトリック(GE)、原発大国フランスのアレヴァ(CEI)を比較してみた。

現状の原子力産業の動向

そもそも原子力発電とはなにか? その構造は簡単にいうと、核分裂によって発生した熱でタービンを回し電力を発生させる。基本的な原理は火力発電と同じだ(火力発電は石油や石炭を燃やして水蒸気を発生させ、タービンを回転させる)。現在、原発メーカーに一般的に使われている原子炉は2つに大別することができる。BWR(沸騰水型軽水炉)とPWR(加圧水型軽水炉)だ。大きな相違点は蒸気発生器があるかないかで、BWRの構造は単純だが管理が難しいとされ、世界の原子力発電の約7割近くはPWRを採用している。BWRを採用する代表的な企業はGE。一方、PWRを採用しているのはアレヴァ。東芝は世界最大の原発メーカーの米ウエスチングハウスを買収したことにより、BWR、PWR両方の方式を手中に収めている。

原子炉のメンテナンスや改修も今後の大きな事業
【図1 原子炉の稼働年数推移】

資料:IAEAのデータを基にモーニングスター作成

現在、話題に上るのは新興国を中心とした新たな原発開発プロジェクト。ただ、新興国の原子力発電事業は採算性が悪いとの指摘もある。そこで、今後さらに重要度が増すのが既存の原子力発電のメンテナンスや改修事業。IAEA(国際原子力機関)の資料によれば、今後30年以上運転している原子炉が増加する傾向にある(図1)。アレヴァによれば、2030年までに世界で150基の原発需要があるとされるが、メンテナンスや改修が必要な数ではそれに匹敵する可能性もある

3社の業績動向
【図2 東芝、ゼネラル・エレクトリック、アレヴァの株価推移】

解説:10年4月6日を基準として、3社のリターンを比較。

東芝の11年3月期第1四半期(4−6月)の連結売上高は前年同期比9.7%増、営業損益は前年同期の375億円の赤字から294億円黒字に転換した。けん引したのはテレビやパソコンなどのデジタルプロダクツ部門と半導体を含む電子デバイス部門。原子力部門は好調だったものの、電力・産業システム部門が前年の需要減少に影響を受け減収となり、社会インフラ部門全体では減収となった。もっとも、社会インフラは期末に収益が集中する特徴があることから、第1四半期の数値を見て判断することは難しい。

東芝にとって、社会インフラ事業は全売上高の3割を超える重要な事業。中・長期的にはウエスチングハウスと共同で2015年までに39基の受注を計画、BWR、PWR2方式を扱える同社は他社に比べ優位性を持っており、成長ドライバーとなる可能性を秘めている。原子炉の建設に燃料・サービス事業を加え、2015年までに売上高1兆円を目指す。

米GE(ゼネラル・エレクトリック)が発表した10年12月期第3四半期(7−9月期)の売上高は前年同期比3%減。産業機器事業の売上高が前年同四半期比6%減の197億ドル(1兆5,957億円)と低迷したが、受注高は同7%増となり、数四半期先の明るい見通しを示唆した。足元の原子力を含むエネルギー部門は不調が目立つが、主要因は風力タービン事業の低迷。モーニングスターでは原子力事業は「11年から12年に回復をみせる」と想定している。今後は新興国、特にインドでの事業展開が期待される。インドでは2020年をメドに24基から30基の原発が新たに建設される見通しとなっており、GEはインドで6基程度の受注を見込んでいると報じられている。

アレヴァの10年12月期第2四半期(1−6月期)の売上高は前年同期比6.4%増。同社の原子力事業は好調に推移し、原子炉&サービス事業の売上高は前年同期比11.6%増と2ケタ増となった。アレヴァの原子力部門の売上は全体の4割を占める主力事業となっている。アレヴァは今後も原子力事業に注力。2030年までに原子力発電の需要が世界で150基程度になり、そのうち3分の1の受注を目指すと発表済みだ。もっとも、フィンランドでの工事遅延が新規受注に響くとの見方もある。同社はフィンランドでの新型炉受注を世界展開の足掛かりと考えていたが、度重なるトラブルで完成予定が従来の2009年から2012年に延期している。

アレヴァに投資価値

原子力事業の観点からはアレヴァが優位に立つ。同社は競合のなかで唯一原料のウラン採掘から燃料製造までを一貫して行える企業。足元の原子力発電事業については3社とも比較的良好に推移しているが、アレヴァは一歩抜けているという印象がある。また、今後原発需要が見込まれる新興国にも幅広く進出している点もポジティブだ。改修やメンテナンス需要の拡大で、同事業に注力するアレヴァ業績への好影響にも思惑が広がる。

アレヴァの株価指標はPERが20倍台、PBRが1倍台と他社に比べて優位性は見当たらないが、好業績を維持し、今後成長が期待できる企業としては株価が相対的に低い水準にあるとみる。

東芝は原子力事業ではBWRとPWR方式を併せ持つ点が強み。主力のデジタルプロダクツ部門が好調なうえ、社会インフラ事業も今下期以降回復するとの見方をする向きも多い。今後の株価の下値は限定されると予想する。(宮本裕之)

【比較表】
  東芝 GE アレヴァ
市場 東京証券取引所 ニューヨーク証券取引所 ユーロネクスト・パリ
コード 6502 GE CEI
終値 405円 16.16米ドル(1,325円) 328.70ユーロ(3万7,143円)
MSレーティング ★★★★★
トータルリターン(%) 1年 3年 1年 3年 1年 3年
-14.2 -27.5 1.5 -23.2 -20.1 -22.6
時価総額 1兆3,114億円 14兆1,671億円 1兆3,164億円
前期実績売上高 6兆3,816億円 12兆8,562億円 9,637億円
PER 現在 5年平均 現在 5年平均 現在 5年平均
19.2 15.1 16.8 21.1 25.1
PBR 現在 5年平均 現在 5年平均 現在 5年平均
1.8 2.3 1.5 1.5 2.5
ROE(%) 9.7 7.4
データは10月26日時点
1ドル=82円、1ユーロ=113円
データは各社決算資料、Morningstar Directから取得

[過去特集一覧]

閉じる