巨大石油メジャーに立ち向かう日本 JXvsエクソンモービルvsペトロチャイナ

石油業界において、日本企業と世界の大企業を比較した場合、日本企業は事業規模で世界と大差をつけられている。石油メジャーという言葉はあるが、きょうまで日本で石油メジャーと呼ぶにふさわしい企業は存在していない。日本企業と石油メジャーの違いは何か? 日本の石油業界をけん引するJXホールディングス<5020.T>(新日本石油と新日鉱ホールディングスが10年4月に経営統合し誕生)、世界最大級のエクソンモービル(XOM)、ペトロチャイナ(PTR)を比較した。

石油メジャー
【図1 原油・天然ガス開発生産量の比較】

JXは原油と天然ガス生産量の合算
国際石油開発帝石、JXのIR資料を基にモーニングスターが作成

石油は大きく分けて3つの過程を経て、はじめて一般消費者の元に製品として届けられる。油田を獲得し、原油を発掘する開発と生産。次に精製を経たあと、元売りを通じて石油製品として販売される。石油メジャーはこの開発・生産、精製、販売を一貫して行っている石油系の巨大企業。エクソンモービル、ペトロチャイナがこの石油メジャーの一角を担う。一方、日本に石油メジャーは存在していない。JXは精製元売りでは日本トップだが、開発・生産では日本で1位の国際石油開発帝石に及ばない。(図1)

石油会社の収益を見るうえで重要なのが原油価格の上昇の恩恵を受けやすい、原油開発・生産会社ということ。いわゆる上流部門だ。一方、石油元売りや精製会社は、利幅が小さく下流部門と呼ばれる。JXや日本大手企業は精製・元売り事業で苦しんだ経験を持っているうえ、エコカーなどの進歩による石油離れも進んでおり、利益率の高い上流部門を拡大する方針を打ち出している。

原油価格の回復で3社ともに足元業績は堅調
【図2 JX、エクソンモービル<、ペトロチャイナの株価推移】

解説:10年4月6日を基準として、3社のリターンを比較。

JXの11年3月期第1四半期(4−6月)の売上高は前年同期比15.2%増(前期実績は合併した2社の合計)、純利益は同6.1倍。純利益は負ののれん発生益で一時的に大きく膨らんだ。

主力の石油精製販売事業の経常損益が5四半期ぶりに黒字化。同社が今後重点投資を打ち出している石油開発事業においても、原油価格や天然ガス価格が底堅く推移したことにより、堅調に推移した。シティグループでは「7−9月期もさらなる増益が期待でき、統合シナジーで下期収益の改善が見込まれることなどから、7−9月期決算を経て本格的に評価されていく」と想定している。

エクソンモービルの10年12月期第2四半期(4−6月)売上高は前年同期比24%増、純利益は同91%増を達成。原油価格の上昇(実現ベース)による精製事業の利益率改善や、化学事業が好調だった。カタールの液化天然ガス施設が増産を続けていることなどが業績に寄与。原油価格上昇の恩恵も享受し、第2四半期の上流部門(開発・生産部門)の利益は前年同期比40%増加した。モーニングスターではカタールでの液化天然ガスの増産が続いていることから、同社の生産量は期末に向けて力強い伸びを示すと予想している。

ペトロチャイナの10年12月期第2四半期(4−6月)は、原油生産量が前期の反動で前年同期比1.7%増、天然ガスが同13%増と増加、原油価格の上昇も相まって、売上高が前年同期比64.9%増、純利益は同29.4%増と大幅な増収増益となった。ただ、バンクオブアメリカ・メリルリンチでは「今後2−3年はコストが高い輸入燃料と低水準な中国国内販売価格のギャップの影響を受ける可能性がある」と厳しい見方をしている。

JX、エクソンモービルに投資妙味

モーニングスターでは、JXホールディングスとエクソンモービルに投資価値があるとみる。JXは石油精製販売が主力事業だが、今後は成長が期待できる石油開発事業に注力することを明言。今後3年で戦略投資合計の約5割を石油開発に振り向ける方針を打ち出しており、上流部門の拡大で利益率の改善にも期待できそうだ。また、11年3月期予想PERは4倍台と株価水準も3社に比べ割安圏にあることから、合併効果などによる下期業績改善期待の高まりに伴い、株価水準が見直される公算が大きい。

エクソンモービルに対してアナリストはポジティブを示す。圧倒的な規模と知名度の高さという優位性を持っており、モーニングスターは、「例えば、NOC(リビア国営石油会社)は自国での石油やガス開発のための潤沢な資金や専門的な知識を有していない。NOCには経験豊富な民間のパートナーが必要だが、エクソンモービルはもっとも最適な相手」と評している。また、天然ガス生産大手の米XTOを買収したことで、今後成長が期待できる天然ガス部門の恩恵を受けることもできる。

株価が特殊な要因で停滞しているとみられることも、今後の株価上昇に期待できる要因だ。バンクオブアメリカ・メリルリンチでは「ラッセルがエクソンモービルをグロースインデックスに異動したことで、システム売買やバリューファンドなどによる売りを浴びたとみられる。ただ、影響は一時的とみられ、次のリバランス時点(2011年)で再評価される可能性がある」と指摘している。(宮本裕之)

【比較表】
  JX ※2 エクソンモービル ペトロチャイナ(ADR)
市場 東京証券取引所 ニューヨーク証券取引所 ニューヨーク証券取引所
コード 5020 XOM PTR
終値 474円 64.5米ドル(5,289円) 126.5米ドル(1万373円)
MSレーティング ★★★★ ★★★
トータル
リターン(%)※1
年初来 年初来 年初来
4.1 -8.6 -2.3
時価総額 1兆1,828億円 26兆9,514億円 18兆9,937億円
前期実績売上高 9兆80億円 25兆4,680億円 12兆2,313億円
前期実績純利益 731億円 1兆5,809億円 8兆4,777億円
PER 4.4 12.4 13.1
PBR 2.3 1.7
ROE 4.7 17.3 12.6
データは10月11日時点
1ドル=82円
データは各社決算資料、Morningstar Directから取得
※1 4月から9月までのリターン
※2 売上高、純利益は新日本石油と新日鉱ホールディングスの単純合計。ROEも株主資本と純利益の単純合計で試算。PERは今期会社計画の予想EPSを用い試算。

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