ネット通販市場拡大で宅配業界の好調続く ヤマトHDvsUPSvsフェデックス

 世界の大手宅配会社は取扱量の増加で業績が好調に推移している。好業績を背景に世界のトップを走る米国2社のUPS<UPS>、フェデックス<FDX>の株価はともに堅調に推移。一方、厳しい環境のなかでも好調な業績を維持している日本最大手のヤマトホールディングス<9064.T>の株価は低迷しており、相対的に株価の評価不足感が強まっている。3社を比較し、投資対象としての価値を探った。

オンライン市場関連取引拡大

ネット通販拡大に伴う運送荷物の増加が大手運送業の好調な業績をけん引する。ネットを活用した通信販売の活発化などでBtoC EC(消費者向け電子商取引)の市場は拡大が続く。

野村総合研究所の09年末時点の見通しによれば、国内のネットビジネス市場は2014年度に14兆円(09年度から約1.8倍)に増加する見込みで、特にモバイルによる大幅な取引増加が期待できると指摘。ネット商取引の拡大は荷物取扱量の増加につながり運送業界にプラスとなりうる。だが、同時に大きな課題もある。輸送料金の低価格化だ。

米小売最大手のウォルマートは11月12日、オンライン商品の一部について送料無料サービスを行うと発表した。対象はギフト商品約6万点。米国ではすでに他の競合小売が送料無料サービスを打ち出しており、米最大手もこの流れに加わった格好だ。米調査会社のコムスコアによれば半分以上の消費者は送料が無料でないと商品を購入しないかもしれないと回答。

オンライン取引において送料が重要なファクターになっており、今後送料無料化の流れが広がれば宅配業界にマイナスに作用する懸念がある。事実、宅配業界では商品の取扱量が順調に増加してきた半面、単価の減少などが収益に結び付いていないケースが増えてきた。もっとも、ニューヨークタイムズは、ウォルマートは送料の無料化に伴う商品の値上げやUPS、フェデックスなどの配送会社にシワ寄せをしない方針と報じている。

3社の業績動向
【図2 ヤマトHD、UPS、フェデックスの株価推移】

解説:07年11月24日を基準として、3社のリターンを比較。

直近3社の業績は好調に推移している。ヤマトホールディングスの10年9月中間期(4−9月)売上高は前年同期比3.0%増、純利益は同9.6%減。通販市場拡大などの恩恵を受け、宅急便、クロネコメール便ともに前年同期比の数量を上回った。荷物取扱単価も明るい兆しが見え始めている。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券によれば、「宅急便単価の悪化幅は縮小傾向にある。直営店における荷受時の適正サイズ計上徹底や、一部顧客に対する運賃値上げも奏功している」と指摘した。一方で、ドイツ証券は「労働時間短縮による外注費抑制が課題」と分析。労働時間の短縮により、外注費が増加傾向にあるため、今後は売上高の増加をいかに利益に結びつけるかが課題となりそうだ。

UPSの10年12月期第3四半期(7−9月)売上高は前年同期比9.3%増、純利益は同80.5%と急増した。1日の平均取扱荷物数量が5%増加したうえ、報酬・福利厚生費用の増加は1%にとどまり、すべての事業部門において堅固な収益を達成。なかでも、中国とベトナムでは前年同期比50%以上、インドと香港が同30%以上の荷物取扱量の増加となり、成長のけん引役となった。米国国内事業では1日の取扱量が前年同期比3.6%増、1日当たりの売上は基本料金の改定とサーチャージの上昇で同4%増加した。

フェデックスの11年5月期第1四半期(10年6−8月)は取扱数量が持ち直し、荷物当たりの収益が増加したことから、売上高は前年同期比18%増、連結営業利益率は3.9%から6.6%に上昇。純利益は前年同期比2倍以上となった。もっとも、モーニングスターでは「売上高の増加は目覚ましいが、フレイト(トラック1台分未満の荷物を対象)およびエクスプレス部門の利益率が改善したとはいえ依然6%と低く、先行き不透明感がある」と分析している。

フェデックスは翌日配送サービスを筆頭に取り扱い可能な配送形態を増やすことで競争優位性を高めてきた。現在では速達や小口配送などほとんどの配送形態を取り扱えるようになっている。利益率の高い地上配送およびフレイト部門の取扱数量が増加すれば、利益の拡大につながる公算が大きい。フェデックスは重要視するフレイト輸送事業の開拓に注力しており、モーニングスターでは「これにより顧客の物流ニーズをより多く確保できると同時に航空燃料費やディーゼル価格の高騰による影響を多少緩和できる」と分析している。

ヤマトHDに投資価値

投資対象としてはヤマトHDに魅力がある。海外展開ではアジア地域の収益を拡大しているUPSや売上高の4分の1を占める国際配送を得意とするフェデックスと比べると、ヤマトHDのグローバル展開は2社に遅れをとっている。ヤマトHDの海外売上高は全売上高のわずか1%程度。ただ、中国やシンガポールでの「クール宅急便」や「時間帯お届け」など付加価値のついたサービスの提供を開始しており、今後のシェア拡大に期待ができる点はプラスだろう。

株価指標面でもヤマトHDに投資価値が見いだせる。ヤマトHDのPERは15倍前後と、UPSの21倍台、フェデックスの19倍台に比べ出遅れ感が強い。PBRでもヤマトHDが唯一1倍台を割り込んでいる。1年間のトータルリターンを比較した場合、UPS、フェデックスともに20%を超えるリターンを挙げている半面、ヤマトHDは大幅なマイナスリターンとなっており、反騰の余地がある。(宮本裕之)

【比較表】
ヤマトHD UPS フェデックス
市場 東京証券取引所 ニューヨーク証券取引所 ニューヨーク証券取引所
コード 9064 UPS FDX
終値 1,118円 68.16米ドル(5,657円) 86.14米ドル(7,149円)
MSレーティング ★★★ ★★★★
トータルリターン(%) 1年 3年 1年 3年 1年 3年
-23.9 -14.5 28.9 -1.1 21.3 -4.8
時価総額 5,073億円 3兆7,596億円 2兆8,829億円
前期実績売上高 1兆2,008億円 3兆7,596億円 2兆8,829億円
前期実績純利益 322億円 1,786億円 982億円
PER 11月22日時点 同左 同左
15.7 21.7 19.6
PBR 11月22日時点 同左 同左
0.9 7.9 1.9
ROE(%) 6.5 29.8 8.6
データは11月23日時点
1ドル=83円で試算
データは各社決算資料、Morningstar Directから取得

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