ゲームソフト販売は新興国とオンラインがカギ スクエニHDvsアクティビジョンvsEA

今回は世界でゲームソフト販売を展開する3社を取り上げる。「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」などロールプレイングゲームに強みを持つスクウェア・エニックス・ホールディングス<9684.T>、世界最大のゲームソフト会社である米国のアクティビジョン・ブリザード<ATVI>、そしてスポーツソフトに強いエレクトロニック・アーツ<ERTS>だ。
 現在、ゲーム業界ではオンラインゲームの好調が続く。ソフトウエア会社の主力製品はこれまでパッケージソフト販売だったが、近年はソーシャルゲームの拡大や課金システムの発達により、オンラインゲーム市場が急拡大してきた。ゲームソフト市場を制するにはこの点がカギになる。

好調なオンラインゲーム市場
【図1 世界のソフトウェア販売動向】

08年以降パッケージソフトの販売は世界的に伸び悩んでいる。 一方、オンライン・ゲームは堅調に伸びており、ゲーム市場全体では成長が続く見通し

資料:EA estimatesからモーニングスター作成

ゲーム市場の調査などを手掛けるエンターブレインによれば、09年の世界ゲームコンテンツ市場規模は前年比6.7%減の3兆6,686億円。これまで急速な成長を続けてきた産業だったが、対前年比でのマイナスは04年の集計以来。EAの会社資料によればパッケージソフト販売がふるわなかったことが分かる。地域別では景気が低迷した欧州や米国での市場が縮小するなど、先進国での不振が目立った。

ただ、業界にとって暗い話題ばかりではない。新興国を中心としたソフト販売が好調に推移し、アジアを中心としたオンラインゲームの台頭してきた。特に中国のオンラインゲーム市場は初めて日本の家庭用ゲームソフト市場を上回っている。

オンラインゲームの急速な拡大の要因には主に2つの要因がある。ソーシャルネットワーキングシステムの拡大と新たな課金システムの拡充だ。従来、課金システムについてはパッケージの販売+定額課金、もしくは無料ダウンロード+定額課金の2パターンが主流だった。

しかし、その後市場が拡大するにつれユーザーの取り込み合戦が激しくなると基本プレイ無料+アイテム課金(用語解説)など新しい課金構造が加わり、市場が一気に拡大。現在ではこれらを組み合わせた課金システムも広く浸透している。ダウンロード版の場合、ソフト会社にとっては各ハードメーカーへのライセンス料の支払いや製造販売コストの削減にもつながることもプラスだろう。

3社の業績動向
【図2 スクエニHD、アクティビジョン、EAの株価推移】

解説:07年12月28日を基準として、3社のリターンを比較。

スクウェア・エニックス・ホールディングスの11年3月期第2四半期(10年7−9月)売上高は前年同期比24.8%減、純利益は同35.8%減と大幅な減収減益となった。主要因は前年同期に発売された「ドラゴンクエスト9」の反動減だが、円高とゲームソフト販売の不振も響いた。上期のゲームソフト販売数は前年同期比32.5%減の817万本にとどまっている。

下期の業績見通しについては、9月にサービスがスタートしたオンラインゲーム「ファイナルファンタジー14」(FF14)の動向が注目。「FF14」はパッケージを購入し、ネットに接続して遊ぶゲームソフトで、月額課金、アイテム課金を備えており、今後も継続したロイヤルティー収入が期待できる。ユーザーの間では大ヒットしたオンラインゲーム「FF11」(オンラインゲーム)に次ぐ作品として期待が高く、パッケージ販売は63万本と好調だった。

もっとも、現時点ではプレーヤーからの評価は低く、シティグループ証券は「無料期間を延長しシステム改善を実施。課金開始の遅延はネガティブ」と指摘。UBS証券も「『FF14』の信頼性回復や、ドラクエ・FFシリーズに次ぐ大型タイトル投入が必要」とコメントしている。

EAの11年3月期第2四半期(10年7−9月)の売上高は前年同期比19.9%減、最終損益は赤字に転落した。ただ、例年第2四半期の収益が少ない傾向にあるうえ、過年度の第2四半期に比べると赤字幅は縮小している。第1四半期に「FIFA10」「2010FIFAWorldCupSouth Africa」「FIFA Online2Korea」など、サッカーを題材としたゲームが好調だったことで、売上が一巡したことも大きい。

下期にかけては10月に発売した同社の人気タイトル「メダル オブ オナー」が発売2週間で200万本を販売するなど好調なスタート。EAは新興国やオンラインゲーム、モバイルに継続して投資を行っており、モーニングスターでは「今後こうした成長性の高い分野でリーダーシップをとる可能性が高い」と見ている。

アクティビジョン・ブリザードの10年12月期第2四半期の売上高は前年同期比5.9%増、純利益は同3倍と堅調だった。モーニングスターでは、「売上高はわれわれの予想を若干下回ったが、第2四半期の後半に発売された『スタークラフト2』が下期にかけて収益に寄与するだろう」と想定。「スタークラフト2」は発売2日間で150万本を販売、韓国や台湾での積極的な販売促進が行われており、モーニングスターでは「少なくとも数百万本の売上になるだろう」と予想している。加えて、主力タイトル「コールオブデューティー」の最新作も世界累計販売500万本を突破するなど、主力の続編ものが好調だ。

スクエニHDの巻き返しに期待

投資面では相対的に割安感の強いスクエニHDの巻き返しに期待したい。同社のPERは19倍台と他の2社に比べて割り負け感が強い。PBRで比較してもスクエニHDの数値が最も低水準にある。

「FF14」の現時点での低い評価は懸念材料だが、「FF11」に続き今後成長が見込まれるオンラインゲーム市場で人気タイトルの続編を出したこと自体はポジティブな材料。バンクオブアメリカ・メリルリンチ証券は、「『FF14』の有料課金が始まる12月以降のアカウント数は低迷のリスクが高い。ただ、実態としてはロイヤルティーの高い現『FF11』ユーザーは『FF11』にとどまると考えられるため業績へのネガティブインパクトは限定的」としている。株価の過度な下落はチャンスとなるだろう。

今後は3社ともに、新興国で、かつオンラインゲーム市場の拡大が見込まれるアジア地域に経営資源を投入してくる公算が大きく、同地域でのユーザー囲い込みにも目が離せない。(宮本裕之)

※用語解説「アイテム課金」=ゲーム内のアイテムを実際にユーザーが購入する仕組み。

【比較表】
スクエニHD アクティビジョン・ブリザード エレクトロニック・アーツ
市場 東京証券取引所 ナスダック証券取引所 ナスダック証券取引所
コード 9684 ATVI ERTS
終値 1,588円 11.77米ドル(965円) 16.34米ドル(1,339円)
MSレーティング ★★★★ ★★★
トータルリターン(%) 1年 3年 1年 3年 1年 3年
-26.0 -4.6 -11.8 -22.8 -43.4
時価総額 1,832億円 1兆1,639億円 4,446億円
前期実績売上高 1,922億5,700万円 3,508億円 2,996億円
前期実績純利益 95億900万円 92億6,600億円 -555億1,400万円
PER 11月9日時点 同左 同左
19.2 40.5
PBR 11月9日時点 同左 同左
1.2 1.3 2.1
ROE(%) 6.2 1.0
データは11月9日時点
1ドル=82円で試算
データは各社決算資料、Morningstar Directから取得

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