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モーニングスター精鋭記者が予測する「2011年はこうなる!」―マクロ経済から新興国経済、そして投資テーマまで―

米国株投資なら攻守兼備の高配当株

米国では足元で市場予想を上回る良好な経済指標もみられているが、失業率は依然として高水準にあり、景気が長期低迷するとの懸念がくすぶっている。ただ、景気がさらに落ち込んで株価の大幅な上昇が期待できない環境になったとしても、インカムゲイン(配当収入)を増やしてリターンを高めることはできる。先行き不透明な状況においてはインカムゲイン重視の株式投資戦略が有効と考えられる。

10年以上連続で増配の銘柄に照準

米モーニングスターのETF(上場投資信託)アナリストであるマイケル・ローソン氏は、高配当株への投資において、「継続的に増配を続けている銘柄を選ぶ必要がある」とアドバイスする。増配を長く続けているほど今後も安定的に配当を増やすと期待できるためだ。逆に、配当利回りの高さだけに着目して投資すると「落とし穴」に陥る可能性がある。同氏は例として、英石油大手BPの配当利回りが今夏に9%もの高水準に達したことを挙げた。配当利回りが上昇したのは、メキシコ湾で原油流出事故を引き起こして同社の株価が大幅に下落したからだ。事故対応の資金確保のため、結果的に配当の支払いは中止となった。

長年にわたり増配を継続している企業を効率的に探すには、米国の高配当株ETFの構成銘柄が参考になる。一部の高配当株ETFは、「数年以上増配を続けている」といった条件を設けて組み入れ銘柄を選別している。

ローソン氏によると、インカムゲイン狙いの投資家にとっては「バンガード・ディビデンド・アプリシエーション・ETF(VIG)」が最も有力な選択肢になる。VIGは10年以上連続で増配していることが銘柄の組み入れ条件の1つ。同ETFは過去3年の年平均トータルリターン(12月27日時点)がS&P500を2.89ポイント上回るなどパフォーマンスが良好なうえに、同氏が代表的な高配当株ETFとして紹介する9つのETFのなかで最もボラティリティ(変動性)が低い。

残念ながらVIGを日本国内の証券会社で購入することはできないが、リスクとリターンの観点で優れた同ETFの構成銘柄をいくつか組み合わせてポートフォリオを構築することは可能だ。

競争優位性が「高い」優良株、相場変動の影響受けにくい

VIGの組み入れ比率上位10銘柄には、世界規模で事業展開する優良株が多く含まれている。高い配当を支払い続けられるのは財務基盤が強固なことの証拠であり、こうした優良株は相場変動の影響を受けにくい。投資対象の企業が長期間にわたり競合他社を寄せ付けない強みを持っているかどうかを表すモーニングスターの評価基準「競争優位性」(3段階評価)では、10銘柄のうち9銘柄が最高評価の「高い」となっている。VIGの資産残高で競争優位性が「高い」企業の株式が占める割合は62%であり、S&P500の41%を大きく上回る。

「バンガード・ディビデンド・アプリシエーション・ETF」の組み入れ比率上位10銘柄
銘柄名(ティッカー) 配当利回り(%) 競争優位性 モーニングスター
レーティング
組み入れ比率(%)
ペプシコ(PEP) 2.90 高い ★★★★ 4.37
マクドナルド(MCD) 2.96 高い ★★★ 4.24
シェブロン(CVX) 3.11 中立 ★★★ 4.16
コカ・コーラ(KO) 2.69 高い ★★★ 4.11
IBM(IBM) 1.72 高い ★★ 4.06
エクソン・モービル(XOM) 2.37 高い ★★★★ 3.84
ウォルマート・ストアーズ(WMT) 2.25 高い ★★★★ 3.80
プロクター・アンド・ギャンブル(PG) 2.91 高い ★★★★ 3.76
ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ) 3.40 高い ★★★★ 3.75
アボット・ラボラトリーズ(ABT) 3.63 高い ★★★★★ 3.65
*配当利回り、競争優位性、モーニングスターレーティングは28日時点、組み入れ比率は27日時点

VIGの組み入れ比率1位のペプシコ、2位のマクドナルド、4位のコカ・コーラはいずれも競争優位性が「高い」で、VIG以外の2つの代表的な高配当株ETFである「SPDR・S&P・ディビデンド(SDY)」「パワーシェアーズ・ハイイールド・ディビデンド・アチーバーズ(PEY)」の構成銘柄にもなっている点で注目される。「高いブランド力を誇り、安定的に利益を上げられるビジネスを展開する企業は長期間にわたり配当を増やすと期待される」(ローソン氏)という。

高配当株には「めったにないバーゲンセール」の割安株も

競争優位性が「高い」銘柄がVIGに多く含まれていることは、割安株を見つけ出すうえでも重要と言える。競争優位性が「高い」銘柄の多くは足元で株価が割安な水準にあるからだ。モーニングスターが調査対象とする米国株式全体のなかで、競争優位性が「低い」企業の株価は適正水準より10%割高となっている一方、競争優位性が「高い」企業の株価は4%割安だ。(12月27日時点)

米モーニングスターが発行する高配当株への投資をテーマにした『モーニングスター・ディビデンドインベスター』の編集者であるジョッシュ・ピータース氏はヘルスケア製品メーカーのアボット・ラボラトリーズ(VIGの組み入れ比率で10位)に投資価値があるとみる。アボットは対象銘柄が割安か割高かを示すモーニングスターレーティング(注)が最高評価の「5つ星(割安)」。年配当成長率が約10%で、配当利回りが3.5%を上回る同社の株式は現在、「めったにないバーゲンセールの状況にある」と分析する。関節リウマチの治療薬「ヒュミラ」のほか、医療機器のステントなどいくつも成長の柱があるとしている。

高配当株は相場の下落局面に備えるための「守り」の投資対象として魅力があるだけでなく、割安感が強い銘柄に関しては株価上昇によるリターンを狙う「攻め」の投資をするうえでも妙味がある。

(注)「モーニングスターレーティング」は対象銘柄の株価がどの程度割高か割安かをみるための基準で次の5段階で評価する。5つ星が「割安」、4つ星が「やや割安」、3つ星が「中立」、2つ星が「やや割高」、1つ星が「割高」となる。

(坂本 浩明)

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