ハーベストアジアフロンティア株式ファンド
ベトナムスリランカカザフスタンバングラデシュモンゴル
運用はSBI Asset Management
 BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)の次の成長国を見出そうと、経済規模が比較的小さいものの、今後急速な成長が見込まれる「フロンティア」市場への関心が高まっている。香港に拠点を置くハーベスト・グローバル・インベストメンツの次席CIO(最高投資責任者)でアジア株ポートフォリオ構築チームを統括するアンドリュー・タン氏がこのほど来日。同社は中国大手の運用会社であるハーベスト ファンド マネジメントのグループ会社で、SBIアセットマネジメントが28日に設定する「ハーベスト アジア フロンティア株式ファンド」を実質的に運用する。同ファンドは、アジアのフロンティア市場に投資するのが特徴。同ファンドのポートフォリオ・マネジャーを務めるタン氏がモーニングスターのインタビューに応じ、投資戦略や有望銘柄などについて語った。
成長をけん引する投資テーマ、「消費」「インフラ」「コモディティ」
 ――「ハーベスト アジア フロンティア株式ファンド」の投資対象について聞きたい。また、なぜいまフロンティア市場なのか。
 「このファンドは、カザフスタン、モンゴル、バングラデシュ、スリランカ、ベトナムという5つの主要なアジアのフロンティア市場に投資する。さらに、中国では内モンゴル、チベット、新疆(しんきょう)、雲南の株式も組み入れる」
当ファンドの投資対象国のロケーション
当ファンドの投資対象国のロケーション
 「これらの投資先は高い経済成長が見込めるほか、先進国市場との相関性が低く、優れた分散投資の対象となる。過去10年間でみると、モンゴルやバングラデシュに至っては先進国の一部指数に対して負の相関関係となっており、反対の値動きをする傾向があることが分かる。フロンティア市場のリスクとリターンの関係は大幅に向上し、シャープレシオ(リスクに見合ったリターンが得られているかを示す指標)は非常に印象的な数値となっている」
フロンティア諸国:高いシャープ・レシオ
フロンティア諸国:高いシャープ・レシオ

出所: ブルームバーグの2001年以降の日次リターン・データ
(米ドルベース、2011年8月末現在)

 「フロンティア市場への投資リスクは低下傾向にあるが、これはマーケットのボラティリティ(変動性)の面だけではなく、実体経済の面においても言える。経済成長は持続可能なものとなってきている。さらに近年では、先進国の格付けが引き下げられる傾向にある一方、アジアのフロンティア諸国の格付けは引き上げられている。また、豊富な労働人口も魅力だ。アジアのフロンティア市場は3億人の消費人口を抱えている」

 「ポートフォリオの構築においては、消費とコモディティ、インフラという3つの長期的なテーマに基づいて銘柄をピックアップする。組み入れ比率はそれぞれ53%、38%、8%となる。投資対象国としては特に3つのマーケットに重きを置いている。スリランカとバングラデシュ、モンゴルだ。スリランカとバングラデシュは消費、モンゴルはコモディディの銘柄を探すうえで最も有望だ」

フロンティア市場でのリスク軽減に有効な3つの基準
 ――銘柄選定のうえで重視している点は何か。モデルポートフォリオの組み入れ銘柄については、35銘柄を上回らないよう厳選していると聞いた。
 「銘柄を選ぶ際のポイントが3つある。シンプルで理解しやすいビジネスモデル、健全なバランスシート、良好なコーポレートガバナンスだ。情報が少ないフロンティア市場では、投資リスクを軽減するために特にこれらのポイントが重要と考える」
 ――組み入れ銘柄が割安かどうかは考慮するのか。
 「フロンティア市場への投資においては割安かどうかよりも成長性が重要だ。そのうえで株価が合理的な水準にあり、消費やコモディティ、インフラといったテーマに沿っているかどうかを判断する。モデルポートフォリオの過去3カ月のPER(株価収益率)は平均で約11倍。配当利回りは平均で2−3%だ。ポートフォリオの50%超は消費関連株が占めており、配当利回りの高いバングラデシュとスリランカの銘柄が中心となっている。一方、銀行株の比率は最低限に抑える。銀行は国家の政策に左右されるリスクが高いからだ。また、フロンティア市場において銀行株は割高であることが多い。いくつかのフロンティア市場の株式が割高なのは銀行株の影響が大きい」
先進国企業が大株主の銘柄に投資妙味、コーポレートガバナンスの面で安心感
 ――ポートフォリオのなかで特に有望とみている銘柄はあるか。

 「スリランカのセイロン・タバコだ。成長を続けるスリランカのタバコ市場において同社は唯一、法的にタバコの製造が認められている会社であり、市場を独占している。また、英国のブリティッシュ・アメリカン・タバコが同社株式の84%を保有。先進国の企業が親会社であることからコーポレートガバナンスの面でも問題がないと思われる。時価総額の15%に相当する現金を保有し、負債はゼロ。12年の予想配当利回りが8.7%と非常に高い点にも着目している」

 「バタ・シューズ・バングラデシュも注目度が高い。バングラデシュの靴メーカーでは最大手の企業だ。世界で6番目の労働人口を誇る同国において、消費関連株として投資価値があるとみている。過去5年間の利益成長率は年平均25%と高い伸びを示している。評価されていない広大な土地を保有していることも重要で、将来的に大幅な値上がり益が期待できる。また、筆頭株主は世界的な靴メーカーであるバタ・シューズ・スイスであり、セイロン・タバコと同様にコーポレートガバナンスに関しては安心できる」

フロンティア市場の株式は「非効率さ」が強み
 ――資産クラスとして新興国の株式をすでに保有している投資家にとっても、フロンティア市場の株式に投資することはメリットが大きいか。

 「その通りだ。代表的な新興国である中国を例に考えてみると、投資家の多くは中国の市場にアクセスするために香港上場の企業に投資している。しかし、世界各国の金融市場の関係性が強まるなかで、香港ハンセン指数と先進国の株価指数の相関性も高まり、優に0.5を超えている(1が完全相関)。一方、フロンティア市場と先進国市場の相関性はまだ低い水準にとどまっているため、分散投資先として有効だ」

 「先進国市場は非常に効率的であり、エマージング市場も投資の参加者が増えるに従って効率的になっているが、フロンティア市場はまだ十分に調査が行われていないため、効率性は低くなる。こうした非効率性があるからこそ、セイロン・タバコやバタ・シューズ・バングラデシュのように市場で適正な評価をされていない銘柄に投資することが可能になる」

 「例えば、自分がビジネスをすると仮定して、中国の賃金が上がってきたことにより、新しい工場を建設する場所を探したり、商品を売り込むための新しい消費市場を調査しているとする。そのときに浮上するのが、多くの人がまだ発見していないフロンティア市場ということになる。大手の投資会社がまだ手をつけていない市場に先回りするのがわれわれのファンドだ。そうでなければ、配当利回りが8%で毎年25%の利益成長を続ける会社を見つけることはできない」

 「エマージング市場の多くはETF(上場投資信託)でも投資できるが、ETFでフロンティア市場に幅広く投資することはできない。フロンティア市場においてボトムアップの手法で魅力的な銘柄を選別するわれわれのファンドを、ETFで真似することは不可能だ」

欧州債務危機でもフロンティア市場への打撃は最小限、大幅上昇の消費関連株も
 ――欧州の債務問題が深刻化した7−9月は各国株式が大幅に下落した。新興国市場は投資家がリスク回避姿勢を強めると売り圧力が高まる傾向があるが、フロンティア市場の株式も値を大きく下げたか。

 「確かに過去3カ月のマーケットのボラティリティは08年の金融危機を思い起こさせるものだった。この3カ月にエマージング市場の株式(ドルベース)は13%以上も下落した。一方、アジアのフロンティア市場の株式の下落率をみると、ベトナムが1.39%、スリランカが2.20%、モンゴルが2.91%、バングラデシュが1.35%と小幅にとどまっている。これらは、フロンティア市場では依然として海外の投資マネーの出入りが少ないことの表れと考えられる」

 「さらに注目されるのは、このようなボラティリティが高い時期においても、ハーベスト アジア フロンティア株式ファンドのモデルポートフォリオに組み入れているバングラデシュやベトナムの株式は過去3カ月でプラスのリターンを達成していることだ。株価上昇率はバングラデシュが8.69%、ベトナムが2.07%となっている。また、下落相場においても消費関連株を選ぶことでプラスのリターンを上げることができた。特にベトナムの日用品大手であるベトナム・デイリーの株価は大幅に上昇した」

株式市場をアウトパフォームする消費関連株
株式市場をアウトパフォームする消費関連株

出所: Vina Securities、ブルームバーグ

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