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「マイナス金利」の今こそ知りたい!資産を守るための不動産戦略セミナー採録「マイナス金利」の今こそ知りたい!資産を守るための不動産戦略セミナー採録

基調講演

アベノミクス3年半を経過して迎えた転換点が、資産運用の転換点に
「マイナス金利と日本経済」

  • 学習院大学 国際社会科学部 教授 
    伊藤 元重氏

 モーニングスターは6月10日、名古屋で「『マイナス金利』の今こそ知りたい!資産を守るための不動産投資戦略」をテーマにしたセミナーを開催した。第1部基調講演を務めた学習院大学 国際社会科学部教授の伊藤元重氏は、「マイナス金利と日本経済」をテーマに講演し、「アベノミクスがスタートして3年半を経過したが、先日の安倍首相による消費増税先送り決定など、重要なポイントを迎えている」と、現在の日本の状況を解説した。講演要旨は、以下のとおり。

2016年に表れた3つの変化

 2016年になってから現れた3つの変化は、今後の日本経済を考えていく上で、重要な意味がある。

 ひとつは、「日銀のマイナス金利政策」の導入だ。この効果については、様々な見方があるものの、今後、どのような手を打つのかも含めて、日銀のかじ取りに注目したい。

 そして、「消費増税の2年半先送り」。消費増税によって消費を冷やす効果が先送りされたことで、当面の景気にとってプラス効果が期待されるが、半面で、日本の財政健全化への影響についてみていかなければならない。

 3つ目は、参議院選挙後に打ち出される「大型補正予算」だ。日銀の金融政策に加え、財政刺激策を実施しようとしているが、これによってデフレ脱却の道筋が見えてくるかを検証する必要がある。

対談用写真

学習院大学 国際社会科学部 教授
伊藤 元重氏

3つの変化で、アベノミクスの評価が変わる?

 アベノミクスはスタートから3年半が経過したが、その真価が問われている。2013年に黒田日銀総裁が誕生した時に、「2年間でベースマネーを2倍にし、インフレ率を2%にする」という“黒田バズーカ”を打ち出した。この結果、1ドル=80円台だった円相場は100円台に是正され、輸出企業の多くが助かった。また、株価は日経平均で8,800円台だったが、1万6,000円を超えた。企業業績も上場企業ベースで30%近く伸び、税収は15兆円以上増えた。さらに、雇用は有効求人倍率が過去23年ぶりの高さというバブル期並みの求人がある。成果は出ている。

 しかし、消費や投資が伸びないため、アベノミクスの効果が疑問視されている。

 消費が伸びないのは、日米欧は「セキュラー・スタグネーション(構造的な不況)」という同じ病気にかかっていて、日本が重症だということ。この病気の原因は「少子高齢化」にある。先進国では第2次世界大戦後のベビーブーマー世代が退職している。このため、国民は老後が心配で消費ができない。企業も人口が減少していく社会に、新たな投資機会はないと考えている。少子高齢化は深刻な問題だ。

黒田日銀総裁は秀吉、「鳴かせてみせようホトトギス」

 黒田総裁の任期は2018年3月末。今回の「マイナス金利」は、任期を意識した対応という感じがしている。黒田総裁の発言を聞いていると「後退」という考えがない。まるで豊臣秀吉が「鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス」と詠んだように、あらゆる手段を使って、不可能を可能にしてみせるという意思がみえる。

 「マイナス金利導入」で長期金利がジリジリと低下し、これまでにない低金利になった。このような超低金利になると、どのような資産が有利になるかということは、はっきりしている。

 「フィックスドインカム(固定金利収入)」といわれる一定の収益があがる資産の魅力が増す。不動産投資も、家賃収入が安定的に入ってくるために、有利な運用先といえる。たとえば、家賃8万円ちょっとのマンションで、年間に約100万円の収入がある場合、1,000万円で購入すれば年間利回りは10%だ。この利回りが1%になると、マンションの価格は1億円という価値になる。このように、固定の収益というのは、金利の影響を受けるものだ。

補正予算で始まるデフレ脱却の大きな波

 安倍首相は、「デフレ脱却」を1丁目1番地にしている。消費増税の先送りは、デフレ脱却を意図したもので、参院選挙後の補正予算も景気にインパクトがあるだろう。

 金融政策だけでは景気回復に無理がある。国債を日銀が買い上げることで、銀行に資金を供給しているが、銀行はその資金を日銀に預けることで、0.1%の金利を得ているというのが実態だ。お金が使われていない。そこで、政府が公共投資などでお金を使う。それが動き出せば、今年後半から来年にかけて、大きな波がやってくるのではないか?

財政健全化のためにもデフレ脱却は効果的

 最後に日本の抱える財政健全化の問題を考えたい。ここには3つの視点が必要だ。まず、財政赤字のたれ流しをどうするか? 1,000兆円を超える借金をどうするか? そして、団塊の世代が75歳以上となり、医療費が増大する高齢化問題をどうするか?

 財政赤字を減らす方法は、3つある。(1)税収を増やすこと、(2)経済成長で物価を上げること、(3)歳出を削減することだ。安倍政権は2020年にプライマリーバランスを黒字化させるという目標は変えていない。次の消費増税の時期を2019年10月に設定したのも、この目標を考えた決定だ。そして、財務省は赤字国債を出さないとしている。したがって、今回の消費増税で拡充する予定だった医療、年金、介護、子育てなどへの予算は先送りされることになるだろう。

 そして、GDPの2倍に近い1,000兆円超の借金を減らすため、現在の財政収支が30兆円の赤字のところを黒字に転換して借金返済することを考えると、相当無理な緊縮財政になる。ところが、4%のインフレがあれば、GDPが3%押し上げられる。GDPが拡大すれば、借金に対するGDPの比率が相対的に大きくなり、負担が小さくなる。このためにも、デフレ脱却、穏やかなインフレはやり切らなければならない。

アベノミクスの転換点は資産運用の転換点

 資産運用をどうしていけばよいのかということは、今後の日本経済がどのように進むかを見極めて考える必要がある。今、日本経済は大きな転換点を迎えている。参議院選挙、補正予算の内容、そして、日銀の政策など、これから出てくる変化を確認したい。その上で投資戦略を考えてほしい。

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