年末特別企画モーニングスターセミナー J-REIT市場の投資魅力年末特別企画モーニングスターセミナー J-REIT市場の投資魅力

第一部 基調講演

J-REIT市場の最新動向と投資のポイント

  • モーニングスター株式会社
    プロダクト開発本部 ファンド分析部 マネージャー 
    坂本 浩明

価格下落から転換点を迎えたJ−REIT市場

 今年の相場を振り返ると、11月末までに日経平均株価は19%値上がりしたが、東証REIT指数は10%値下がりだった。J−REITに投資している方には、厳しい1年になってしまった。

 しかし、11月の単月で見ると2.6%の値上がりだった。この上昇率は2016年12月以来の高い伸び率だった。J−REITにとって、注目できる転換点を迎えていると感じる。

 REITの仕組みは、一般の公募投信と比較して、バランスシートに負債の部分があることだ。銀行から借り入れを行って物件の取得に充てている。REITはレバレッジ(テコの原理)を使っているというのは、このことだ。銀行からの借入金利の影響を受けることがポイントになる。

市場が拡大し、用途の多様化も進んで魅力的な市場に

 J−REIT市場は、開設以来、右肩上がりで成長してきた。現在は57銘柄で時価総額11兆円程度の市場になってきている。

図表1:J-REITの時価総額と銘柄数の推移

図表1:J-REITの時価総額と銘柄数の推移
  • 期間:2001年9月~2017年10月(月次)
  • 出所:不動産証券化協会データより、モーニングスター作成

 J−REITを主要な投資対象として公募投信があるが、数年前までは銘柄数も少なく、時価総額も小さかったためファンドマネジャーが銘柄を選択する余地がなく、魅力に乏しい市場だった。市場が拡大したことによって、銘柄を選ぶ余地が出てきた。

 また、J−REITが投資する物件の用途も広がっている。オフィス、商業施設、住宅が主要な投資対象だが、現在では、ヘルスケア、ホテル、物流施設などを主に投資対象としたREITも出ている。ホテルは、インバウンドで需要が拡大している。物流施設はEコマースの成長で施設が足りないといわれている。また、病院施設などのヘルスケアは、株式市場と同様にディフェンシブな銘柄といわれる。いろんな特徴を持ったREITが増えていることも特徴だ。この結果、公募投信を経由してJ−REITに入る資金も拡大している。

 J−REITは、公募などで投資口を募集・売り出しをして物件を取得する資金を得ている。公募増資は、株式と同様に1株利益の希薄化につながり、株価が下落する要因のひとつだが、2017年は以前と比べると、公募増資が減っている。また、J−REITの新規上場も減って、市場の需給が改善している。

投資信託と外国人の保有比率が高い

 投資部門別のREIT保有金額では、個人は9%程度になっている。もっとも大きいのが投資信託による保有で36%、次いで外国人の24%だ。もう一つ、注目されるのが日銀によるJ−REITの買い入れ。毎年900億円規模でJ−REITを買い入れるとしていて2017年も862億円(11月24日時点)を買っている。J−REITを通じて、国内の不動産価格の安定化を目指しているが、国内不動産価格には一部で過熱感があるといわれていることから、これ以上の規模で買ってくることは期待しにくい。ただ、日銀がJ−REITの購入をやめるということもないだろう。

 長期金利の推移をみることも重要だ。10年国債利回りは、2017年10月末時点で日本が0.07%、米国2.38%、英国1.33%、ドイツ0.36%など、各国で低い水準になっている。日本では、日銀によるイールドカーブコントロールが実施され、長期金利をゼロ%程度で維持する政策が続いている。J−REITにとっては、資金調達が低い金利で行えることはメリットになる。

対談用写真

モーニングスター株式会社
プロダクト開発本部 ファンド分析部 マネージャー

坂本 浩明

図表2:主要先進国の長期金利推移

図表2:主要先進国の長期金利推移
  • ※各国の10年債利回りに基づく
  • 期間:2007年10月末〜2017年10月末(月次)
  • 出所:モーニングスター作成

 米国の金利は、トランプ大統領の就任が決まった時に、急激に上がったが、その後は横ばいになっている。今後も急激な金利上昇はないとみられているため、これは米国REITによっては、良い環境といえるだろう。

世界のREIT市場

 世界のREIT市場は、時価総額に占める米国の比率が64.6%で非常に大きく、日本は7.5%で第2位だ。公募投信でグローバルREITに投資するものもあるが、その場合も日本には一定の資金が入ってくることになる。

 REITと国債の利回りを比較すると、REITの利回りは各国で、国債より高い利回りになっている。J−REITは、国債利回りがゼロ%近辺なのに対し2017年10月末時点で3.9%あり、他の国と比べて利回り格差が大きいように見えるが、これは、J−REIT価格が下がった影響による。

一方、日米欧のREIT価格の推移をみると、J−REITはアベノミクスの5年間で価格がほぼ2倍になり、米国や欧州と比較してパフォーマンスが良いことがわかる。日本の金利が依然として低いこと、また、日銀がJ−REITを買っていることなどが影響しているのだろう。

 米国籍のREITファンドの純資金流出入の状況をみると、過去10年間で2015年のみが純資金流出で、それ以外は、純資金流入が続いている。リーマンショックの年も資金流入は途絶えなかった。

 これは、リーマンショック後の世界的な金融緩和によって国債の利回りが低下したことで、世界中で「イールドハンティング」といわれる利回りを求める動きが広がったためだ。REITの利回りが相対的に高いことから、国債の利回りに満足できない資金がREITに向かっている。これは、世界的な傾向といえる。

J−REITの下落に投信からの資金流出がインパクト

 東証が発表している投資部門別の売買動向では、今年4月からJ−REITについて投資信託の資金流出が続いている。これが、J−REITの価格下落にインパクトがあったと考えられる。2017年10月末時点で、J−REITファンドは120本以上あり、純資産残高は約3兆円だ。全体で11兆円のJ−REIT市場へのインパクトは小さくない。

 J−REITファンドを調べると、毎月分配型が63%を占める。この毎月分配型のファンドを調べると、J−REITの配当利回りが3.9%であることに対し、J−REIT投信の分配金利回りが10%以上のものもある。これらは、REITの配当だけでなく、投資元本を取り崩して分配金を増やしているようなところがある。このような元本を取り崩してまで高い分配を行う毎月分配型投信に対して、金融庁は今年に入ってフィデューシャリーデューティの点から望ましくないと牽制を強めている。この結果、毎月分配型の比率が高いJ−REIT投信から、資金が流出するような状況が続いていると考えられる。

 ただ、この傾向にも変化が表れている。純資金流出額は、2017年9月に304億円、10月は197億円だったが、11月(29日まで推計値)は57億円になった。また、投信全体では資金流出になっていても、インデックスファンドは資金が流入している。

 J−REIT価格が下落したことによって、割安感が出てきている。これが、インデックスファンドへの資金流入というカタチで現れてきたと考えられる。NAV倍率というREITのPBR(株価純資産倍率)が、ほぼ1倍になっている。これは5年ぶりのことだ。価格が下落したことによって、5年ぶりの割安水準になっている。

 このように割安になったことで、外国人投資家は既に買い出動しているようだが、今後、この動きが広がるかどうか、注目していきたい。

図表3:東証REIT指数とNAV倍率の推移

図表3:東証REIT指数とNAV倍率の推移
  • 期間:2003年3月~2017年10月(月次)
  • 出所:不動産証券化協会データより、モーニングスター作成

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