モーニングスターアワード受賞記念セミナー採録モーニングスターアワード受賞記念セミナー採録

第一部 講演

2018年不動産市況、不動産運用に役立てるための知識

  • 株式会社α-Financial Planners
    代表取締役・ファイナンシャルアドバイザー 
    田中 佑輝氏

変化する不動産価格の決定要因

 そもそも不動産価格が、どう決まるのか? 金融情報等のマクロの要因と、その不動産の立地するエリアや物件の種類などのミクロの要因の両面から考える必要がある。

 マクロの要因としては、「利用の需要」と「投資の需要」の2つの要因がある。「利用の需要」は、賃貸市場としてのニーズはどうかなど、マーケット分析が必要になる。また、「投資の需要」とは、不動産の購入は一般に自己資金に借入を足して実施されるので、金利を含めた資金量の分析が必要になる。一番大事なポイントは「需要」だ。

 不動産は遅行指標といわれ、景気より半年遅れて動く。これまで、ゆったりとはいえ経済が成長してきたので不動産の価格もゆっくりと値上がりしている。そもそもGDPは、国の豊かさを表す指標で、物価が上がることによって、企業の利益が伸び、それによって給与が上がり、給与が上がることで物価が一段と上がるという循環によって、大きくなっていくものだ。

 たとえば、大卒初任給は、1980年頃は11万4,500円だったが、現在は20万5,900円になっている。物価上昇を加味すると、1980年頃の初任給は14万2,000円程度になるが、そこから、徐々に上がってきている。現在、東京・港区のワンルームマンションの平均賃料は13万4,800円、東京都の平均は8万5,578円だが、これらの家賃が収入に見合っているかどうかがポイントといえる。

 グローバルな不動産価格の計算には、収益還元法が使われている。直接還元法とDCF法という2つの方法がある。たとえば、直接還元法を使うと、年間収益が100万円(収益から、経費を差し引いた金額)の物件を、期待利回り8%で計算すると、物件価格は1250万円になる。この考え方でいくと、経済成長をして物価が上がるところでは、不動産の価格は上がるということだ。

 金融緩和によって、市場に資金がバラまかれ、マネタリーベースが増加している。この増大した資金は、銀行に滞留している。不動産は、銀行から借り入れて投資するため、マネタリーベースが拡大する時に、資金が流入しやすい。マイナス金利時代になって、不動産融資が26年ぶりに最高の実行額になっている。銀行は担保になる不動産への融資を拡大している。このため、不動産融資の基準が緩和される傾向にある。ある銀行では、年収の8−10倍までしか融資ができないという基準があったが、これが15倍まで拡大されている。

対談用写真

株式会社α-Financial Planners
代表取締役・ファイナンシャルアドバイザー

田中 佑輝氏

 金利と不動産価格の関係は、逆相関になっている。金利が下がるほどに、不動産価格が上がっていくという関係だ。原則は、景気が良くなると、金利も上がり、不動産価格も上がるという関係だが、その原則が通用しない市場になっている。

 現在は、金利が低すぎて、利回りに魅力がない。1年定期預金金利は、1991年には5.78%だったが、現在は0.01%と578分の1になっている。この低金利が、資金を不動産購入へと向かわせている。

金利と不動産価格の関係性 現在の不動産価格は割高か?

 不動産の利回りを示す「キャップレート」と国債の利回りの差である、イールドギャップはずっと高水準が続いている。リーマンショック時のイールドギャップは3.13%だったが、現在は4.25%に拡大している。

 たとえば、2007年のサブプライムショック前のワンルームマンションの価格は2,306万円だった。当時の金利3.35%でローンを組むと、毎月の支払額は9万3,311円になる。現在は、マンションの価格は2,626万円へと値上がりしているが、金利は2%弱の水準なので、毎月の支払額は8万6,317円になる。家賃の水準が変わらないとすれば、どちらが、より多くのキャッシュフローを生み出すだろうか?

 このように、金利の低下が不動産価格の上昇を相殺している。住宅ローン金利が3.85%の時代に2,500万円を借りた場合、総支払利息額は2,055万円で、月額10万8,455円の支払いが必要になる。ところが、ローン金利が2%で2,500万円を借りれば、毎月8万2,815円の支払いになる。もし、10万8,455円の支払いが可能だとすると、現在は774万円多く借り入れることができる。住宅価格が1.3倍に値上がりしてもトントンという計算だ。実際には、それほどには住宅価格は値上がりしていないので、投資需要が活発になっている。

足元の市況と2018年の展望は?

 株式市場は値上がりしているが、企業業績が良いので、PER(株価収益率)の水準では割高とはいえない。物価は、少し上昇しているものの、まだ弱い。日銀は2%の物価上昇をめざしているので、金融緩和を外すようなことは考えにくい。金融緩和が外れると、不動産価格にはマイナスの影響が出てくる。緩和の継続が続いていることは、不動産にとっては追い風だ。今後、物価の動きが重要なポイントになる。

 賃上げについて、今春は賃上率2%〜3%といわれているが、物価上昇率を差し引いた実質賃金の動向がポイントだ。まだ、実質賃金の伸びは弱いが、これが上昇するようになると、不動産にも好影響になる。

 受給ギャップで2017年4−6月は需要超過になり、7−9月は消費税率引き上げの前の水準まで需要が拡大していることが確認されている。足元の物価上昇率はまだ低いが、2018年中旬以降は、物価が上昇し、日本経済に明るい兆しが出てくると期待される。

 これからの政府の政策は、これまでの「雇用」を促進する税制から、「所得拡大」を促す税制に変わってくるだろう。日銀は、緩和を継続する政策を続けると考えられ、金融が緩和された中で所得が上がってくれば、物価が上昇し、不動産価格にはプラスと考えられる。

 金融商品に投資してこられた方が、不動産に投資を考える時に、一番のネックになるのは、購入するにあたって借入することだと思う。借金することに、抵抗感があると、なかなか不動産への投資に踏み切ることができない。ただ、実際に不動産に投資してみると、投信ほど不動産は期待を裏切らないということがわかってくると思う。

 不動産と金融商品には、それぞれ良いところがあるので、その違いを理解して、分散投資の考えで、金融商品に不動産を合わせて持つということを検討していただきたい。

この資料は投資判断の参考としてモーニングスターが情報提供しております。モーニングスターのレーティング情報は過去のパフォーマンスに基づくものであり、将来のパフォーマンスを保証するものではありません。また、モーニングスター株式会社が信頼できると判断したデータにより作成しましたが、その正確性、安全性等について保証するものではありません。著作権、知的所有権等一切の権利はモーニングスター株式会社並びにMorningstar.Incに帰属し、許可なく複製、転載、引用することを禁じます。

広告企画・制作=モーニングスター株式会社

Copyright© Morningstar Japan K.K.All rights reserved.