投信エキスポ2016投信エキスポ2016

講演2

金融経済環境の変化と資産運用
〜潮流変化を読み解く〜

  • 東京海上アセットマネジメント株式会社
    運用戦略部長 
    浅野 孝氏

世界的な低金利をもたらしたリーマンショックの本質とは?

 日米の個人金融資産の内訳を比較すると、日本では約2,000兆円の個人金融資産のうち50%を現金・預金が占めている。一方、米国は現金・預金の比率が13%程度となっている。歴史的な低金利環境にある日本においては、現金・預金の投資リターンは0%なので、それに50%を費やしているのは、あまりにも守り過ぎの状態にあるといえる。もっと、攻めと守りのバランスの良い配分を考えたい。

 日本の預金金利はなぜ0%なのだろう? 過去を振り返ると、戦後から1990年までは、日本の金利は5%〜6%の水準にあった。それが、1990年代の前半に一気に下がって、ついには0%になってしまっている。この1990年の前半に何があったのか? それは、「バブル崩壊」であり、金融機関が企業に貸した融資が戻ってこないという「不良債権問題」だった。

図表1:日本定期預金金利の推移

図表1:日本定期預金金利の推移
  • 出所:日本銀行
  • ※ 預入金額1000万円以上、預入期間1年。歴年度末データ。2018年のみ5月末のデータ

 私は、当時、調査の仕事をしていたが、1992年夏にある雑誌に「日本の不良債権問題」というテーマで記事が出て、初めて「不良債権」という言葉が話題になった。雑誌には、30兆円という不良債権の規模が示されていたのだが、上司の指示を受けて、独自に不良債権の算出に取り組んだ。1週間かけて、一つひとつの銀行の不良債権を調べて積み上げてみると300兆円程度になった。当時の日本のGDPは約500兆円だったので、この結果には上司ともども驚いたのを覚えている。未曾有の金融危機がやってくると身構えた。日経平均株価は3万円、長期金利は6%の時代だったが、この水準がとても維持できるとは思えなかった。

 不良債権の問題が大きくなるにつれて日本の経済成長が下方屈折し、日銀は超低金利政策を実施することによって、ショックを抑えることに腐心した。

 一方、世界では、2008年に起こったリーマンショックをきっかけにして世界の主要金利が0%に向かって低下していった。このリーマンショックに、次に備えるヒントがある。

 そもそもリーマンショックの本質とは何なのだろう? たとえば、ここにイチゴタルトがあるとしよう。生地の上にイチゴがたくさん載っている。このイチゴの一部が傷んでいて食べられないものだったらどうだろう? 買って帰って、家で気が付いたとしたら、返品しようと思わないだろうか? 一般的にいって、部分的に痛んでいたら、全体を拒否するというのが人間の行動だと思う。これが、リーマンショックで起こったことだ。

対談用写真

東京海上アセットマネジメント株式会社
運用戦略部長

浅野 孝氏

 イチゴタルトのイチゴの一つひとつが、細分化された住宅ローンの債権だと思ってほしい。当時は米景気が拡大していて、アメリカの低所得層向けの住宅ローン(サブプライムローン)も多くの契約があった。中には、年収が300万円くらいの人に、8,000万円の住宅を購入する資金を融資したりしていたという。これが、2005年、06年と景気が減速していく中で、だんだんとローンの返済ができない人が増えてきた。

 商品を作った側の考え方としては、住宅ローンの中で一部が不良債権化したとしても、全体としての影響は軽微であるという考え方だったのだと思う。しかし、先ほどのイチゴタルトの例と同じように、一部が不良化したものは、全部を拒否するという動きがでてきた。既に持っているものを売却するという動きにもつながった。

 2007年当時に痛んだサブプライムローンの残高は15兆円程度だといわれた。それに対し、サブプライムローン全体の残高は約500兆円だった。この500兆円に対して、一切買い手がつかなくなった。さらに、2008年夏になると、痛んだ証券化商品だけではなく、証券化商品全体に買いが入らなくなってしまった。この残高は1,500兆円〜2,000兆円の規模だった。これによって世界の金融市場がパニックになってリーマンショックといわれる暴落につながった。

 ここで分かることは、最も留意すべきことは「流動性」ということだ。これさえわかっていれば怖くない。

 では、流動性リスクの高まりを何で判断すれば良いのだろうか?

 リーマンショックのような、大きなショックは、10年に1度くらいの頻度で起こっている。この時に、事前に動いているのは、米国のFFレートだ。これは米国のFRB(連邦準備制度理事会)がコントロールしている米国の短期金利だ。景気が良い時にはFFレートを引き上げて景気の熱を冷まし、景気が悪い時には金利を引き下げて停滞感を払拭しようとする。このFFレートの変化が世界のマネーフローの潮流を変化させている。だから、このFFレートが今現在、どういうサイクルにあるのかを知っておくことが大事だ。過去25年程の期間で見ると、大きな経済ショックは、米国の利上げが終わった局面で起こっている。

 今は、どのような状況にあるかというと、FFレートが引き上げられる過程にある。0%だった金利が2%まで徐々に上がってきた。今後、2年くらいをかけて3%まで上がっていくだろうと予測されている。FFレートが引き上がっていく局面では、大きな下落をそれほど心配しなくてもよく、しっかりと運用を考えたい局面といえる。

運用するにあたって重要なポイントは潮流の変化の見極めと攻めと守りのバランス

 運用するにあたって、重要なポイントは3つ。ひとつは、大きな潮流の変化を意識すること。これは、米国の金融政策の変化がポイントになる。

図表2:日米政策金利と日米株価の推移

図表2:日米政策金利と日米株価の推移
  • 出所:Thomson Datastream、Bloomberg
  • ※ 予測は、2018年7月時点における東京海上アセットマネジメントの予測

 もう一つは、危機の時に致命傷を負わないことだ。これは、ショックにあたって慌てないこと。そして、資産を分散させること。換金性の重要性を理解することが大事だ。このことをしっかり実行できれば大丈夫だ。のびやかに投資を進めていただきたい。皆さんは、たとえば、地震対策をしたからといって、ずっと家にこもって外に出ないということはないと思う。地震には警戒しながらも、日々の生活は送っていることと同じように、資産運用についてショックを和らげる対策をしながら、のびやかに投資をしてほしい。

 そして、攻めと守りのバランスを考えた分散投資に留意していただきたい。分散は質的な分散が大事。日本株式、先進国株式、新興国株式を持っていたとすると、それらは、一緒に同じ方向に動く傾向があるので、分散の効果は薄い。株式にも債券にも投資するようなことを考えたい。

 大きなショックが起こっても、長く続くものではない。史上最大といわれるリーマンショックでも2−3カ月の期間で落ち着きを取り戻した。この間をじっと耐えることができるのは、個人投資家の強みだ。

 攻めの投資先としては、債券のなかにもエマージング債券、超長期債、ハイイールド債などがある。これらへの投資は、守りながら攻めるという時に活用ができる。あるいは、日本の企業が海外市場で発行している社債なども候補になる。これらに投資信託を活用して投資することを考えてみてはどうだろう。

 これから、米国の利上げ完了によって再びショックが訪れるかもしれないが、事前に予測ができれば、慌てることはないと思う。潮目の変化に注意しながら、攻めと守りのバランスを考えた投資を検討していただきたい。

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