MORNINGSTAR ブラックロック・ジャパン株式会社

「失敗の法則」から学ぶ資産運用法 「失敗の法則」から学ぶ資産運用法

【失敗の法則 その2】
自分だけで健康状態を判断する

ブラックロックとは

グループ全体で総額6.44兆米ドル(約732兆円※)の運用資産残高を擁する世界最大級の運用会社。個人向けには投資信託とともに「iシェアーズ」ブランドで、ETFを含むインデックス運用戦略を提供している。資産運用に関わるポートフォリオ管理、リスク管理の高度なシステムを外部にも提供するテクノロジー会社の側面を持っていることも特徴。
※2018年9月末時点

 「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉がある。投資で必ず成功する秘訣を探っても、局面によって異なり、結局は「柔軟に対応する」以外に普遍的な法則を見出すことは難しい。ただ、失敗には必ず理由があり、こうすれば必ず失敗するという秘訣?は何となく示せるような気がする。この「失敗の法則」を反面教師とし、運用に活かせるのでは――ブラックロック・ジャパンの取締役リテール営業部門長の浜田直之氏が、人生100年時代といわれるこれからの資産運用を考えるポイントを語る。

貯蓄から投資は世界の課題

 前回、運用を車の運転に例え、目的地と到達する時間を決めてからハンドルを握るように、「何のために運用をするのか」という目的を決めて、具体的に運用をスタートすることの重要性をお話した。では、実際にゴールに向かって運用を開始しようとしたときに、どのような資産にどのように投資すれば良いのか分からないという悩みに直面する人も多いのではないだろうか。特に経験や知識がない人や、自信がない人は、ドライブ方法が分からないまま現在地にとどまる(何もしない。言い換えると預貯金口座にお金を眠らせる)ことになっているのではないだろうか。

 悩んでいるのは日本の投資家だけではない。ブラックロックは2014年から「ブラックロック・グローバル・インベスター・パルス・サーベイ」(投資家動向調査)を実施している。インターネットを通じて日本の個人約1000名に聞いている。この調査は、アメリカ、カナダ、英国、ドイツ、中国など18カ国のグローバル調査との比較も可能だ。

 2017年の調査結果(以下「本調査」という)によれば、個人金融資産の構成比をみると、日本は現預金が75%を占める。前回調査の2015年は69%だったが、ゼロ金利の中で現預金比率が一段と高まっている。この背景には、「自分の財産を管理できていない」と感じている人の比率が高いことがあるとみている。自身の財産管理ができないため、将来が展望できない。したがって、将来が不安で、とりあえず現金に置いておこうという悪循環に陥っているのではないか。

 一方、アメリカの現預金比率は58%だ。日本と比較すると低いが、長期にわたる好調な株式市場や経済成長を考慮すると高水準にとどまっているといえるだろう。アメリカの個人金融資産に占める現預金比率は10〜20%程度と示される各種統計資料をよく目にするが、米国の預金の約80%は金融資産の保有上位10%の富裕層に占められていて、この富裕層は株式を多く保有しており、現金比率は10%程度に過ぎないとも言われている。結果として全体でみると、統計的な個人金融資産の現預金比率が低く見えているようだ。

 このように「貯蓄から投資へ」という話は、実は日本だけの課題ではない。ブラックロックは、多くの人々にとって退職後の備え不足がグローバル共通の課題であると意識している。

日本にも変化の兆しが

 2017年の調査で私たちが最も驚いたのは、約6割の日本人が「貯蓄から投資へ」を検討したことがある、と答えたことだ。アメリカで45%、イギリスで40%だから、先進国ではダントツに高い比率だ。現預金比率は高いものの、何かしなければという気持ちも芽生えている。

 また、同じ調査でもう一つ目を引いたのは、退職後の準備を開始すべきと考える時期が早まっていることだ。「39歳までに」という回答が2015年には47%だったが、今回は64%になった。そのうち、「10代から」との回答も10%となった。NISAやiDeCoなど制度面での後押しもあり、日本でも「やっぱり若いうちから運用しなければならない」という気分も高まっているとみている。しかし、具体的にどうしたら良いのかわからないので、結果的に何もしないまま今に至っている人も少なくないのではないだろうか?

 このように、わかっていながら、行動に結びついていないのは、日本において、証券会社や銀行、保険会社など金融機関の担当者であるファイナンシャル・アドバイザー(FA)の役割が十分に理解されていないためではないかと思う。本調査によると、日本でFAを利用している人は12%程度でアメリカの利用率の半数にも届かない。ちなみに「自分の将来の経済状況を管理できているか?」と聞くと、「できている」と答えたのは日本全体で22%だが、FAに相談している人では53%と高水準だ。また、「投資決定に自信がありますか?」と聞くと、FAに相談している人の約4割が「自信がある」と答えている。

信頼できる「マネードクター」を持とう

 2015年の調査によれば、アメリカ人は、結婚を決めたとき、子供ができたとき、家を買うとき、退職したときなど、ライフイベントがあるたびに、自分自身のライフプランについて第三者に意見を求めている人が多いが、日本では、退職時であってもその比率はきわめて低い。その結果、ライフイベントにより何もお金の対策をしていない人の割合が高くなっているとみている。

 私たちは、身体の調子が悪くなると、医師に相談して専門的な見地からアドバイスをもらう。身体の不調については、自分で判断するよりも、医師の方が的確な診断ができると考えているからだ。お金も同じことだ。信頼できるホームドクターのような人がいて、客観的な立場から現状を評価し、将来への備えについてアドバイスを受ける方が良いだろう。

 米国ではお金の悩みを相談する独立系のファイナンシャル・アドバイザー(FA)が地域ごとにいて、親から子へとアドバイザーも引き継がれているほどに普及している。日本では現状を鑑みると、必ずしも独立系でなくとも良く、信頼できる人にアドバイスを受けることが大事だ。「まずは身近な金融機関のドアをノックし、信頼できるマネードクターに相談しましょう」と多くの皆さまに申し上げたい。

浜田 直之氏

浜田 直之(はまだ・なおゆき)氏

1987年に山一證券に入社。1998年、山一證券が自主廃業により100年の歴史に幕を閉じた時には、従業員組合の委員長として約7,000名の組合員の処遇に奔走。その後、国内外の運用会社で重職を歴任し、2010年からブラックロック・ジャパンでリテール営業部門を統括。

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