オリックス銀行・投資信託発売1周年記念ESG投資セミナー採録オリックス銀行・投資信託発売1周年記念ESG投資セミナー採録

パネルディスカッション

中長期投資の標準装備?
~加速する日本のESG投資~

  • パネリスト
  • 株式会社QUICK
    ESG研究所 リサーチヘッド 
    中塚 一徳氏
  • 有限責任監査法人トーマツ
    リスクアドバイザリー事業本部 シニアマネジャー 
    鶴渕 広美氏
  • S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス
    日本オフィス統括責任者 
    牧野 義之氏
  • 朝日ライフアセットマネジメント株式会社
    リサーチ運用部ESG運用グループ チーフ 兼 チーフファンドマネジャー 
    速水 禎氏
  • ファシリテーター
  • オリックス銀行株式会社
    アセットマネジメント部長 
    森 敦仁氏

日本のESG投資が急増中

森氏:
ESGは、E=環境、S=社会、G=ガバナンスの頭文字をとった言葉です。ESG投資とは、収益性や配当、財務状況などの従来の財務情報に、非財務情報であるESGを加えることにより、企業の持続的成長を評価する投資手法です。今や、中長期投資に不可欠の要素となりつつあります。
ESG投資はヨーロッパが突出して大きいのですが、日本は2016年の4,740億ドルから、18年には2兆1,800億ドル(約232兆円)と約5倍に増加しています。日本でESG投資が急激に増えたきっかけは?
図表1
中塚氏:
230兆円という規模は、東証の時価総額の半分くらいがESG投資になっています。ESG投資の額は世界全体トータルで、2016年には2,500兆円から、18年には3,400兆円という規模になっています。
世界で運用されている資金は100兆ドル(1京1,000兆円)といわれていますので、3分の1くらいのお金がESG投資に向かっています。
投資の原則にESGの要素を組み込むという責任投資原則(PRI)に署名した運用会社と運用資産の額は、2015年に50兆ドルを超えました。この2015年に、日本ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRIに署名しました。GPIFが署名したことで一気にESG投資が盛り上がりました。ひいては、企業の経営にも波及することになったと捉えています。
対談用写真

株式会社QUICK
ESG研究所 リサーチヘッド

中塚 一徳氏

森氏:
企業や投資家からESGに関する問い合わせは増えていますか?
鶴渕氏:
企業にとっては、ESGに取り組むことによって企業価値が高まるのですから、ないがしろにはできません。「自分たちの努力をESGのスコアなどに反映してもらえるか?」「どう伝えればいいのか?」「どのように取り組めばよいのか?」という相談が増えています。

投資家の視点でESGへの取り組みの評価は?

森氏:
ESGに取り組むことは良いことなのだが、これはコストになるのではないかという見方があります。投資家として、利益につながるのかという点ではいかがですか?
牧野氏:
ESGに配慮することが、企業の収益に必ずしもマイナスにはなりません。指数ベースの投資では、代表的な株価指数と同等のリターンが出ています。もう少し、進歩したものとしては、財務上と非財務情報を含めて企業を見つめ直すというアプローチがスマートベータです。たとえば、ESGとROEを掛け合わせて「ROESG」という提案もあります。このようなところにも、ESGに関心を持っていただけるようなポイントは多数あると思います。
森氏:
ファンドマネージャーとしてESGの位置づけは?
対談用写真

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス
日本オフィス統括責任者

牧野 義之氏

速水氏:
アクティブ運用のパフォーマンスは、どの企業を選ぶかということに依存すると思います。少なくとも3年~5年の目線で、ものによっては20年近く保有することがあります。投資をしてしまってからは、その多くを企業の経営にゆだねる形になります。
たとえば、EGSの観点が入っていると、新たなビジネスチャンスを早く見つけることができると思いますし、逆に、リスクや脅威について早めに準備ができると思います。つまり、企業の収益があまりブレずに持続的成長していく、企業の価値が持続的に成長していくという会社をしっかり選んで投資をしていれば、市場全体を大きく上回るリターンが得られるのではないかと考えています。
対談用写真

朝日ライフアセットマネジメント株式会社
リサーチ運用部ESG運用グループ チーフ 兼
チーフファンドマネジャー

速水 禎氏

森氏:
ESGは「環境」と「社会」と「ガバナンス」という、バラバラで一見すると関連のないことのように見えます。EとSとGの優先順位は?
鶴渕氏:
いろいろな意見はあると思いますが、実際にESGを評価してみると、E(環境)やS(社会)を支えるものとしてG(ガバナンス)があるというように考えている企業が多いです。ESGはトータルで見ていくことも重要だと思うのですが、かといって、トータルスコアだけでみては企業によっては評価を誤ることもあります。ケースバイケースで判断しなくてはならないと思っています。

欧州が先行するESG

森氏:
国際的なレポートによると、欧州がESGのスコアが高くなっています。業態によっても評価の基準が異なるでしょうから、単純なランキングは意味がないようにも思えますが、その点はいかがでしょう?
対談用写真

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部 シニアマネジャー

鶴渕 広美氏

図表2
  • 出所:ロべコSAM
中塚氏:
ESG情報は絶対的なものではありません。確かに、将来の財務情報として企業価値に影響を与えるというコンセンサスは得られていると思います。ただ、ESG情報だけをみて企業を選んでリターンを得られるというものではありません。
財務分析があり、それに、ESG情報を加えることによって、より精緻な企業の内在価値を算出できると思っています。
牧野氏:
指数を作る際に、評価をそのまま採用すると欧州に偏ったポートフォリオになります。現実的には世界の株式市場の時価総額は半分が米国株式です。運用上のリスクを考えると、単純にESGスコアに基づくポートフォリオは作れません。
対談用写真

オリックス銀行株式会社
アセットマネジメント部長

森 敦仁氏

牧野氏:
また、ESG総合スコアは、数字で判断できるものと数字化することがむずかしいガバナンスの情報をスコアに入れていくことに苦心しています。ESG投資が活発になっていく中にあっては、指数会社の果たす役割も多くなると感じています。
たとえば、いくら高いESGの評価があっても、市場で売買が難しい時価総額の小さな企業はインデックスに採用しにくくなります。指数会社も配慮をした上で、指数をつくっています。
森氏:
ESGとアクティブ運用の関係は?
速水氏:
昨今、ESGの残高が世界的に拡大している見逃せない背景には、「ショートターミズム」といわれる短期主義の是正という側面があります。ESGの拡大という大きな流れと並行して、中長期投資への回帰という動きが続いています。
アクティブ運用はインデックスより高いリターンを挙げなければならないという使命がありますが、短期的な業績・利益だけを見ていると、どうしても市場に置いて行かれます。これは、結果を見てから反応しているので、遅れるのは当たり前です。そうではなくて、もう少し先回りをして、世の中が、5年、10年先にどう変わっていくのか。同じ目線で経営をしている会社が割安な時に判断して、厳選した投資をしていくことが、インデックスに勝つため、ESGの視点を取り入れることは、アクティブ運用に残された道になってきています。
森氏:
企業の経営者の方たちとの対話とか、相互理解を重視しているということですか?
速水氏:
極力投資先の企業の経営トップの方と会って、いろんな話をします。まず、トップの方のバックグラウンド。どういった経歴を経て、現在のポジションにあるのか。また、経営哲学なども重要です。ビジネスモデル、環境への配慮がどうかというようなことも聞きますが、最終的に判断するのは、経営者の人柄に現れてきます。具体的には、率直でオープンな人が、良い経営をしている傾向があります。

ESG投資は一過性のブームに終わらない

森氏:
10年くらい前に「エコファンド」がブームになった時代がありました。ESGもかつてのブームのように一過性のものになるのではないかという懸念もあると思います。今回の違いは?
中塚氏:
2000年以降に環境をテーマにしたファンドが多く設定されました。それは、ファンド単位でESGを考慮するということでした。
今、起こっているのは、各運用会社が投資原則にESGを組み入れましょうということです。株式、債券、インフラ投資、不動産、プライベートエクイティなど、全ての運用資産に何等かのカタチでESGを組み入れていることですので、次元が全く違います。
財務分析を否定するものではなく、その分析の中に、ESGの要素を体系的に入れてくださいということです。ESGの要素を入れないと、中長期の企業価値をしっかり評価することはできませんという考え方が「ESGインテグレーション」です。
もうひとつ重要な考え方は、リターンを毀損するような手法は「ESGインテグレーション」とは言いません。リターンはしっかり守って、その上でESGを考慮しています。したがって、リターンは従来通り、もしくは、それを上回るものになります。
森氏:
なかなか難しい課題ですね。速水さんから、具体的な事例を教えていただきたい。
速水氏:
日本の人口動態の問題は避けられません。また、ビジネスを社会的な課題を解決する道具と考え、企業は社会変革の手段だという考え方もあります。
たとえば、労働人口は減っていく見通しですが、今、団塊ジュニアの方が45歳~47歳で、少なくとも65歳までは働く必要があり、その後、65歳以降も働く可能性があるので、労働人口は減らない可能性があります。働き方改革では、転職率や企業も良い人材を求めたいというニーズもあるので、プロの紹介を通して良い人材を得たいという部分がありますので、成熟した市場ではありますが、人材の流動化や適材適所に貢献していく企業は、社会的なニーズに適った企業といえます。
森氏:
アクティブ・オーナーシップといわれるような、企業との対話、株主権行使という点でもESGは注目されてきています。
鶴渕氏:
議決権行使、エンゲージメント(投資家と企業が対話することで、より企業価値を上げていく取組み)の中でESGが注目されるのは、企業と対話することによって、企業に新たな成長の機会が開けていくことがあった場合、企業の価値が上がる、ひいては、株価も上がるような手段が残されているのであれば、投資家として改善点を対話によって企業に気づいていただく、そのことによって、自らのメリットも得るという考え方です。
ESG投資というのは、単純に売り買いだけではなく、買ったまま、保有したまま、中長期で投資先を応援していくという投資でもあります。

広がるESGの可能性

森氏:
最後にESG投資の可能性についてお話しをいただきたいと思います。個人投資家にESG投資が浸透していくには?
牧野氏:
5年以上、ファンドを持っている人が多数を占めるようになってきているので、今後、ESGへの理解は広がると思います。今後の浸透のポイントは、どういう評価に基づいてESG投資がなされているのかという点が注目されるかどうかだと思います。財務情報のみであれば、格付け会社で国や企業で大幅に異なることはないのですが、ESG評価はバラツキが大きく出ます。どういうアプローチをして各企業に投資しているのかに注目して投資判断をされると良いと思います。まだ、ポテンシャルは高いと思います。
速水氏:
ESGの中のG(ガバナンス)は、最終的には投資家と経営者の利害が一致することだと思います。一致してもらうように動かすことをガバナンスといいます。エンゲージメント、議決権行使を活用し、良い経営をしてもらうように、会社に働きかけることが重要だと考えています。
鶴渕氏:
最近の動きは、自らが環境や社会に対して、どのような取り組みをしているのか、キチンと説明をするということが大事だといわれています。相手に伝わる必要があります。相手に伝わるようにキチンと分かりやすく説明していくことが大事です。
一方、データがあるのに出していないというケースもあります。判断する側が材料に困るので、自ら説明する、データをオープンに開示することが大事になります。
森氏:
企業も自分のことを洗いざらいオープンにするということは難しいところもありそうです。日本の企業は、どちらかというと、株主のものというより、経営者のもの、従業員のものという意識が強いように思います。これからは、それを変える必要があるということですね。
中塚氏:
ESGが企業株価に長期的に影響を与える。すでに世界の投資資産の8割が投資原則に署名しているということを考えれば、これからもっと広がっていくと思います。
日本では外国人労働者の話などの話が出ていますが、もし、投資先の企業が賃金を払っていない、過酷な労働条件で働かせているということであれば、それは企業の大きなリスクです。中長期的に見ると、ちゃんと賃金を払って、かれらが母国に帰って、ちゃんとお金を使える。そして、その子供に教育を与えることができる。そうすると、各国の経済が成長し、世界全体の成長につながるという考え方です。それが、長期的に日本企業のリターンにつながります。ぜひ、ESGに本気の運用会社の商品に投資していただきたいと思います。

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