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特集6

長期投資で社会を変える! 企業と投資家が集って対話する場を提供するコモンズ投信

 「30年目線」「30社厳選投資」「対話」という3つのキーワードで本格的な長期投資をめざした「コモンズ30ファンド」が誕生して10年が経過した。コモンズ投信は、投資している人の97.7%が利益を上げているという成績を残し、その旗艦ファンドである同ファンドはつみたてNISAにも採用されたことから、残高の拡大に弾みがつきつつある。同ファンドを運用するコモンズ投信の代表取締役社長兼最高運用責任者の伊井哲朗氏に、今後の展望を聞いた。

新しい運用会社を立ち上げるにあたってめざしたことは?

 私自身は、山一証券の廃業から、メリルリンチ日本証券への合流。そして、メリルリンチのリテール部門撤退を経験しました。メリルリンチ日本証券は、初回の面談に2時間くらいかけてお客様の投資意向やライフプランを聞き、世界一のリサーチを使ってポートフォリオで運用商品を提案するという、本当にお客様目線の良い証券サービスをしていたのですが、ITバブル崩壊もあって外資系の収支には合わなかったのです。

 もはや自分の力で理想的な証券会社を作るしかないと思っていたところへ、渋澤健(取締役会長)が直販の投信会社を一緒にやらないかと誘ってくれました。私は当時、投資信託が大嫌いでした(笑)。証券会社では株式でも債券でも、自分で組み合わせて提案できるのですが、それが投資信託としてファンドマネジャーに任せて運用してもらうと、手数料は取られた上に成績は悪く、いったい何をやっているんだと思っていたのです。

 本来の投資信託は良いツールであるはずです。私と渋澤と、野村證券のアナリスト時代にアナリストランキング1位の常連だった佐藤明さん、キャピタルインターナショナル日本でCIOや東京代表も経験された吉野永之助さんとが集まって、長期投資のファンドをやりたいということで一致しました。

対談用写真

コモンズ投信株式会社
代表取締役社長兼最高運用責任者

伊井 哲朗氏

 長期投資について、世代を超える「30年」という目線を設けました。そして、30社くらいに厳選投資し、ウォーレン・バフェット氏のような日本には無かった本格的な長期投資家をめざすことを決めました。アナリスト出身の佐藤さんは、企業の長期のエクイティストーリー(成長のシナリオ)をしっかり書いた「30年レポート」を作って、経営者と議論したいと言っていました。日本のファンドマネジャーの第一人者といっていい吉野さんは、キャピタル流の長期投資を日本の個人投資家に提供したいと言っていました。当時は大量に販売して、すぐに大量に解約になるので、日本では長期投資ができなかったのです。

 そして、尊敬する上場企業の経営者の方々に、私たちのめざす投信会社像を話しにいくと、全員がぜひやってほしいと言ってくださいました。経営者の考える時間軸は長いのです。ところが、中長期の経営課題に突っ込んだ話ができるのは、アメリカやイギリスの投資家くらいだというのです。国内に長期の良い投資家がいて、経営者にとっては良い壁打ちの相手になってくれることが必要だといわれ、私たちは意を強くしました。

 「コモンズ30ファンド」のもうひとつのキーワードは、「対話」です。受益者を集めて、投資先企業と一緒に長期の目線をテーマにしたワークショップを創業時からやっています。2009年1月から運用を始め、2カ月後の3月には第1回目のワークショップを実施しました。当初設定時の投資金額は1億1,800万円で11銘柄への投資からスタートしたので、1企業への投資金額は1,000万円くらいです。それでも、趣旨に賛同いただき第1回のワークショップに投資先であるエーザイのIR部署の担当役員から全スタッフが参加していただき、長期ビジョンを話していただきました。

 コモンズは、英語のコモングラウンド=共有地というところから名前をつけています。投資家の方々、投資先企業、寄付先などが共有地に集まって、そこで対話することで、お互いの気づきがあり、明日への希望につながるという考え方です。長期で銘柄を厳選するからこそ、このような取り組みが意味のあるものになっています。

 また、直販から得られる収益の1%程度を社会課題の解決をめざす起業家に寄付をしています。環境問題や格差拡大などといった社会課題は、企業の安定的な成長を阻害します。もともと金融の生業は社会にお金を循環させることにあります。社会的課題に対し、取り組む人たちのもとにお金が回っていないのです。その課題について知っていただき、寄付が集まるということをしています。近年、こうしたソーシャルな意識は高まってきていて、運用成果となるパフォーマンスよりも、NPOなどの社会起業家への応援を重視する方々も増えてきています。

「ザ・2020ビジョン」を設定した狙いは?

 「コモンズ30ファンド」は、結果的に大企業中心に投資していますが、「ザ・2020ビジョン」は、IPO直後の小型企業も含めて投資するファンドです。小型株には大型株にはない成長期待があります。小型株から大型株まで投資するという点では、2本のファンドを両方持っていただきたいなーと思っています。

 コモンズ投信は、長期的な視点で企業調査し、非財務的な価値をしっかり見るという投資の基本姿勢は変わりません。持続的な企業価値を高めていけるような強い会社を選ぶのが、「コモンズ30ファンド」で、5年先くらいの期間で変化が大きい、変化にチャレンジしている企業に投資するのが「ザ・2020ビジョン」です。

 もともと、会社を立ち上げた2007年当時から、人口動態からみて中心世代が変わる2020年には大きな変化がやってくるという思いがありました。その後、2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されることが決まりましたが、世界で最も高齢化が進んでいる都市での開催になります。パラリンピック期間中に、7万5,000人の車椅子の人が来日するといわれ、その対応が進んでいます。障がい者に優しい都市は、高齢者にも優しい都市の誕生を意味します。屋根が高く、車いす対応をするジャパンタクシーも2020年までに1万台になる予定です。成田から羽田までのバリアフリー化も進んでいます。ヒートアイランド対策も進行中です。これから、NYもロンドンもパリも北京も、みな高齢化に向かいます。一足早く高齢化に適応した都市ができると、そこで生まれたイノベーションから世界に向けた様々な展開が始まると思います。

販社に商品を流すと、直販とは資金性格が違ってきませんか?

 もともと創業の時から直販に限らないという方針でした。私たちは、長期投資を通じて社会を変えていきたいと思っています。社会は一人では変えられません。

 独立系運用会社が直販だけで頑張っても残高5兆円くらいが限界ではないかと思うのです。日本の投信市場が100兆円になったとして、そのうちの5兆円では業界も社会も何も変わりません。良いパートナーを見つけて、より多くの方々にファンドを届けられれば、100兆円の中の20兆円くらいが長期投資に理解のある投資家になるかもしれません。そうなると、世の中にインパクトがあると思います。

 私たちは、お客様の意向を企業にフィードバックしています。つまり社会の声です。今後、積極的に環境問題に取り組んで欲しい、ガバナンス=企業統治を強化してほしいなどの声をコモンズ投信の考えに加えて、最終的なアセットオーナーとしてのお客さまの声も伝えていきたいと考えています。上場企業に株主の対立などの問題が起こった時も、投資家の意見をまとめて、「こうあるべきじゃないか」という意見を出すことで、社会的なインパクトも作りたいのです。いわゆるアクティビストではなく、運用会社としての責任ある投資に加えて、多くの声を集めて企業にしっかりぶつけるという活動をしていきたいのです。その点でも、もっともっとお客様を増やしたいと思っています。

これからのコモンズに期待してほしいことは?

 よりよい社会を作っていこうと思うと、投資は必要だと思います。よりよい社会を作っていくために、皆さまと一緒に楽しく資産形成をやりたいと思っています。イベントにきてくださる方は実際に楽しそうで、地方都市から交通費をかけて東京に来られる方もいます。そこには、遠方からコンサートに集まるファンの方を見ているような光景が広がります。価格だけが動く無機質な世界ではなく、企業の成長や寄付先の取り組みがライブで感じられる、生きる喜びがあるのだと思っています。これは、インデックスファンドにはない、アクティブファンドの楽しさです。ぜひ、私たちの取組みにご参加いただきたいと思います。

投資家と企業の対話が社会のウェルビーイングを高める!
コモンズ投信会長の渋澤健氏に聞く

 コモンズ投信の取締役会長兼ESG最高責任者の渋澤健氏は、「消費者と企業の対話の場があれば、お互いに気づきが生まれ、ウェルビーイングの実現に近づく」と語っている。渋澤氏に、「そもそも独立系運用会社を立ち上げようと考えた理由」について聞いた。インタビューの要旨は以下の通り。

 ヘッジファンドの東京代表を辞してシブサワ・アンド・カンパニーを立ち上げた2001年頃、金融サービスの将来に思いを巡らした時に、ちょうど小売業界でデパートや百貨店に代わってブティックが流行ったことと同じような変化が金融にも起こると考え、運用者が簡単に自らの運用を形にできるプラットフォームが作れないかと考えました。そこで、レオス・キャピタルワークスの藤野英人さんと一緒に、すでに独立系運用会社「さわかみ投信」を立ち上げていた澤上篤人さんを訪ねて、投信の運用や販売に関するシステムなどについて相談に行きました。そこで、澤上さんからあなたたちが投信を立ち上げなさいと背中を押されました。

 また、当時は、私に子供が生まれ、子供が成長した時に応援するための資金を作りたいと、投資信託の積み立てを始めていました。ただ、毎月の積立金から必ず手数料がとられることに疑問を感じて、ノーロードで商品提供をしていた「さわかみファンド」に積立商品を切り替えたりしました。実際に、積み立てを続けていると、市場が下がると量を多く買える積み立て投資の効果を実感しました。

 一方、経済同友会に所属して経営者の方々と会話すると、当時の投信について「短期で投資資金を引き揚げるハゲタカのようだ」と厳しい評価を受けました。そんな人ばかりではないと反発を感じたのですが、運用会社には、より短くより高いパフォーマンスを良しとする考えがあることは否定できません。さらに、当時は村上ファンドが話題で、企業に対して一方的に要求を突き付けて対立していました。企業とファンドと社会の関係が良くない方向に向かっていると感じていました。

対談用写真

コモンズ投信株式会社
取締役会長兼ESG最高責任者

渋澤 健氏

 ファンドの受益者である個人消費者と、企業が商品・サービスを提供する消費者は同じ存在です。ファンドが消費者と企業の対話の場を作る役割を担えると考えていました。これは、プライベート・エクイティ(PE:未公開株式)の出資者総会に参加した時に、PEファンドの運用者と企業経営者がトークセッションを聞き、投資した資金が企業によって生かされるリアルな経済の営みを感じたことに発想の原点があります。金融商品は数字に置き換えられるので、リアルな経済に投資資金が生かされている実感がないのですが、投資先企業の事業活動を知ることで、投資家には様々な気づきが生まれます。

 このような様々な思いを、社長の伊井哲朗らと議論して「コモンズ30ファンド」という形あるものにしていったのです。ファンド設立当初から対話の場を提供することを重視し、投資先企業を選ぶ際には、今でいうESG(環境・社会・ガバナンス)など目に見えない価値をしっかり評価しています。

 今、日本企業のPBR(株価純資産倍率)は1倍です。企業が目に見える資産と同じだけにしか評価されていないのです。経営者や社員の評価はゼロ、または、PBR1倍以下では会社の存在にとってマイナスでしかないということになります。このような評価は、本当に正しいのでしょか? コモンズの活動に賛同していただける方がもっと増えて、もっと多くの方々に「お金のリアル感」や「企業の見えない価値」について知っていただきたいと思っています。

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