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特別講演1

ストラテジスト 糸島孝俊が語る今注目の株式投資とは?

  • ピクテ投信投資顧問株式会社
    投資戦略部 ストラテジスト 
    糸島 孝俊氏

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当面の日本株式市場の見通し、上値は重い

 日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)の動きを2012年1月から2019年8月末まで振り返ると、両者の高値が違うことに気か付きます。日経平均は2018年10月2日にピークをつけていますが、TOPIXは2018年の1月23日に高値を付けています。残念ながら、日経平均は2018年1月をピークに右肩下がりのトレンドに入っています。

図表1:日経平均株価とTOPIX(2012年〜2019年8月30日)

図表1:日経平均株価とTOPIX(2012年〜2019年8月30日)
  • 出所:QUICKのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
  • 日次、期間:2012年1月4日〜2019年8月30日

 TOPIXが先に下落トレンドに入り、それに続いて日経平均も下落トレンドに入っています。現在は下落する中でのリバウンド相場です。では、日経平均が18年10月高値の2万4,448円をいつ超えるかということは、まず、米中の貿易摩擦が沈静化し、これまで引き上げてきた関税をすべて撤廃し、元に戻すことが前提になります。かつ、アメリカとヨーロッパで金利を下げ始めていますが、これが続けられるかどうかです。ただ、世界の先進国の6割はマイナス金利です。金利引き下げには限界が近づいていると思います。

 日経平均株価は2万2,000円に値上がりしてきましたが、ここからの上値は重くなります。そう簡単には値上がりしません。今後、10月に米中がもう一度話し合いをするので、これで本当に貿易摩擦が収まるかどうかがポイントです。米中の景気動向や米国の大統領選挙の行方などが、貿易交渉には大きくかかわってきます。目先は2万2,000円台でピークをつけると思いますが、米中が暫定合意できれば、年末から来春にかけて日経平均は値上がりすることが考えられます。米中が合意した後で、関係がそれ以上悪くならなければ、来春にかけて18年10月高値の2万4448円の更新を目指すと思います。

 ただし、10月に合意ができず、12月15日に第4弾のBというスマートフォン、ノートパソコン、ゲームなどへの関税引き上げが実施されたら、貿易戦争は次の次元に進みます。それは、貿易赤字、知的財産、為替、技術移転、産業補助金、ファーウェイなどをどうするのかが問われます。中国は、この辺のことで折れることはないと思います。そのため、とりあえず、10月の交渉で合意したいと、お互いに思っていると思います。

 日経平均と海外投資家の売買動向を振り返ります。日経平均株価は外国人投資家が先物取引の売買シェア6割〜7割を占めています。外国人投資家が売ると日経平均は下がる、買うと上がるという関係にあります。今回、9月に日経平均株価が2万2,000円台に乗せた場面でも、外国人投資家は現物と先物を合わせて3,000億円程度買っています。

対談用写真

ピクテ投信投資顧問株式会社
投資戦略部 ストラテジスト

糸島 孝俊氏

 7月に米国はFOMC(連邦公開市場委員会)で利下げを決定しました。マーケットは9月−12月に利下げを行い、来年も金利を下げるだろうと見通しています。先まで織り込んでいるので、ヘッジファンドなどは利食いをしたいのです。9月にECB(欧州中央銀行)は反対意見がある中で大きな金融緩和を実行しました。このサプライズに合わせて、債券の利食いがあり、欧米の金利が上がりました。株式でもグロース株への買いが引っ込んで、バリュー株への買いが目立ちました。

長期の市場サイクルは債券がピーク、株式もスローダウン

 日経平均の下値のメドを考えると、日経平均のPBR(株価純資産倍率)が1倍まで下がると止まってきました。何とかショックが起きると1割〜2割大きく下げることもありますが、通常の下落であればPBR1倍がメドになります。日経平均株価のPBRは8月末に1.03ですが、TOPIXは1.12なので、TOPIXのPBR1倍を考えると、日経平均のPBRは0.9倍くらいになってもおかしくはありません。つまり、米中合意ができずに、米中関係がおかしくなってしまうような時には日経平均株価は2万円を割れて1万9,000円になってもおかしくないということです。

 PBRは、企業が持っている現金や設備などをお金に換算した価値なのですが、企業は内部留保を積み上げていますので、1株当たり資産がどんどん積みあがっています。

 よく日経平均はPER(株価収益率)が安いから買いだという話がありますが、確かに、アメリカ株と比較すると安いのですが、世界の株価と比べるとそれほどでもありません。TOPIXのPERは12.5倍で、米S&P500の18倍と比べると安いのですが、MSCI AC Worldは15.9倍、同EUROPEは13.6倍です。世界の株価は12〜13倍なので、世界で見ると割安とはいえません。

 TOPIXのPERは、11倍〜16倍で動いています。現在はPERが平均より低い水準にありますが、TOPIXのEPS(1株当たり利益)は現在下がってきています。3四半期(9カ月間)連続で減益の見通しです。おそらく7−9月決算も減益となるでしょうから、1年間通して利益はマイナスだと思うのですが、ここで止まるかどうかです。おそらく、このあたりでマイナスも緩やかになってきて、来年は米中関係によって左右されるということだと思います。

 昨年夏は、アメリカが中国を叩くという覇権争いが表面化しました。そこから、日本企業のEPSは下がり始めています。投資マインドが冷え込んできたのです。

 これからの日程では、日本で10月1日に消費増税が実施されますが、各種軽減税率が適応されますので、大きな影響は出てこないと思います。気になるのは、安倍総理が2021年の秋まで自民党総裁の任期があるのですが、どこで総選挙が実施されるのかというのが気になります。安倍さんは長期政権です。長期政権が変わった場合、株価はいったん下がる可能性が高いです。

 市場サイクルは、債券はピークにありますが、株価は2時くらいだとみています。ここから債券は買いにくく、株式もスローダウンしていくところなので買いにくいということになります。弱気の人は10年国債と短期国債の利回りを引き算した長短金利差がゼロになると1年後に株価が下がるといってきましたが、アメリカ株は史上最高値を更新してきています。アメリカの景気は良いのです。これから、アメリカの個人消費や失業率などの動きを見ていく必要があると思っています。

図表2:市場のサイクル

図表2:市場のサイクル

世界株式の主役が交代、「公益株(資産株)」の活躍期待

 米中の貿易問題は、米国の第4弾Bを実施することを止める、お互いの25%関税を30%に引き上げるということをやらないということになれば、落ち着いてくると思います。中国は2025年に「中国製造2025」で製造業ナンバーワンになるということから貿易戦争がはじまりましたので、米中の覇権争いは貿易戦争が落ち着いても10年、20年という期間にわたって続くと思います。そのような環境ですので、グロース株の復調は難しいと思っています。

 昨年の夏に米中関係が一度おかしくなってから、世界の株価は12月末にかけて下がって、そこから株価は戻ってきました。しかし、この下げの期間でも世界の公益株式は、ずっと上がり続けています。ここにぜひとも注目していただきたいと思います。

 成長株と資産株は順番に買われています。IT相場やFAANG相場など成長株が買われる時代は約9年周期で来ています。現在、世界の国債の利回りは、ほとんどマイナス利回りです。世界の国債利回りの平均は7%台だったのですが、現在は0.7%台になっています。世界の公益株には4%近い利回りがあります。利回りがない中では、この公益株の利回りは注目されます。特に、5年程度の中長期の投資を考えた場合、この投資が注目されます。

図表3:成長株の時代と資産株の時代

  • ●米国公益株式の米国株式に対する相対パフォーマンスをみると、成長株と資産株のトレンドの変化がよくわかります。
  • ●過去60年以上の米国市場の例でみると、各成長株の時代のブームをけん引した製品やサービスの普及が一段落すると資産株の時代が到来して きたことがわかります。
図表3:成長株の時代と資産株の時代
  • ※米国公益株式の対米国株式相対パフォーマンス:米国公益株式/米国株式
  • ※ニフティ・フィフティ:1960年代の成長企業を代表する当時のハイテクや新手のサービスの企業群、直訳は「素敵な50銘柄」
  • ※FAANG:フェイスブック(IT)、アマゾン(一般消費財サービス)、アップル(IT)、ネットフリックス(IT)、アルファベット(グーグル)(IT)、セクター表示は2018年11月末現在のGICS分類に基づく、12月から分類変更
  • ※米国株式:S&P500 Total Return Index、米国公益株式:S&P500 Utilities Total Return Index 55
  • 出所:グローバル・ファイナンシャル・データのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
  • ※データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。米国公益株式が米国株式をアウトパフォームしても両方が下落した場合には、米国公益株式のリターンはマイナスとなります。

 世界の高配当公益株式の利回りは、現在は平均4.6%ありますが、日本、フランス、ドイツ、スイスの10年国債利回りはマイナスです。そういった環境化では債券や株式の代替になるような資産が有力だと思います。利回りは増配によって上がる可能性もあります。たとえば、配当が変わらずに配当利回りが4%から3%になると、株価は33%値上がります。配当が5%増配し、利回りが4%から3%まで低下すると株価は40%値上がります。マイナス金利の中で、高い金利のものが注目されるときの変化です。

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