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資産管理のキホン

「医療費控除は所得が多い人が受けた方が得になる」は必ずしもそうとは限らない

2017-03-24

医療費控除の仕組み

 会社員などが税金の還付を受けられる制度としてよく知られているものに医療費控除があります。医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができるというものです。医療費控除の対象となる金額は、次の式で計算した金額(最高200万円)です。

実際に支払った医療費の合計額 - 保険金などで補填される金額 - 10万円(注)
(注)その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等×5%の金額

 上の式で計算された医療費控除の金額が所得金額から差し引かれて税率を掛ける元になる金額(「課税される所得金額」)が計算されます。したがって、医療費控除による税額の軽減額は次の式で計算されます。

医療費控除の金額 × 税率

 所得税は超過累進税率という、「課税される所得金額」が高くなるほどその高い部分に適用される税率が高くなる仕組みになっています。「課税される所得金額」に適用される所得税率は図表1のようなイメージです。

図表1:課税される所得金額に適用される所得税率

出所:モーニングスター作成

 「課税される所得金額」は会社員の方なら源泉徴収票の

「給与所得控除後の金額」-「所得控除の額の合計額」

で計算できます。

 たとえば、医療費控除を適用する前の「課税される所得金額」が400万円だったとします。上の式で計算した医療費控除の金額が15万円の場合医療費控除を適用すると「課税される所得金額」は385万円になります。つまり「課税される所得金額」に適用される所得税率20%の部分が15万円少なくなるということです。したがって、この場合医療費控除による税額の軽減額は、

15万円×20%=3万円

となります。(復興特別所得税は考慮していません。)

所得が多い人が受けた方が得になる場合

 医療費控除は自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の医療費を支払えば夫婦のどちらでも受けることができます。共稼ぎの夫婦の場合どちらが医療費控除を受けた方が得になるのでしょうか。

 たとえば、医療費控除を適用する前の「課税される所得金額」が夫が400万円、妻が300万円で医療費控除の金額が15万円と仮定します。医療費控除を夫が受けると20%の税率が適用される部分の「課税される所得金額」が減ることになりますので 15万円×20%=3万円 の税額が軽減されます。一方、医療費控除を妻が受けると10%の税率が適用される部分の「課税される所得金額」が減ることになりますので 15万円×10%=1.5万円 の税額が軽減されます。

 このように「課税される所得金額」に適用される所得税率が高い方の人が受けた方が税額の軽減額が多くなり得になりますので、一般的に所得が多い人が受けた方が得になると言われています。

 ここで、所得控除の額を引く前の所得又は給与収入などで比較をしてしまうと所得控除の額によっては「課税される所得金額」が逆転する場合もありますので少し注意が必要です。特に高校生や大学生の子供がいて扶養控除の適用がある場合には気をつけてください。

所得が少ない人が受けた方が得になる場合

 医療費控除の対象となる金額を計算する式に「-(マイナス)10万円」とあるように医療費控除の足切り額は10万円と思っている方は多いと思います。しかし、(注)にあるように総所得金額等が200万円未満の場合には足切り額は10万円より下がります。その場合には医療費控除の金額が増えることになります。

 たとえば、所得が給与所得だけの人で「給与所得控除後の金額」が100万円の場合医療費控除の足切り額は、

100万円×5%=5万円

となります。

 支払った医療費の合計額が11万円(保険金などで補填される金額がないものとする)とすると医療費控除の金額は、

11万円-5万円=6万円

となり、この場合税額の軽減額は、

6万円×5%=3,000円

となります。ここで配偶者の「課税される所得金額」が300万円だとします。総所得金額等は当然200万円以上ですので医療費控除の足切り額は10万円になります。医療費控除の金額は、

11万円-10万円=1万円

となり、この場合の税額の軽減額は、

1万円×10%=1,000円

となります。

 このように所得が少ない人が医療費控除を受けた方が足切り額が下がることで多くの医療費控除を受けられて税額の軽減額が多くなる場合があります。夫婦のどちらかが総所得金額等(給与所得だけの場合には「給与所得控除後の金額」)が200万円未満の場合にはどちらが医療費控除を受けた方が得か計算してみることをお勧めします。

犬山 忠宏【いぬやま ただひろ】

経歴:
1959年生まれ。神奈川県藤沢市出身。犬山忠宏税理士事務所/FPオフィスp.1代表。機械メーカーを早期退職後税理士・FPとして独立。税務だけでなく企業の経理から個人の家計管理、資産運用まで幅広くトータルなアドバイスを行っている。

保有資格:
税理士東京地方税理士会会員 横浜南支部所属 登録番号 121498
CFP®認定者日本FP協会会員 License No. J-90081466
CFP®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
宅地建物 取引主任者登録番号(神奈川)第079479号
マンション管理士登録番号第0002032987号

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