アナリストの視点(ファンド)

波乱の一年で純資産を増やしたファンド

2009-05-12

2008年3月末〜2009年3月末の1年間は、世界的な信用収縮が起こり、金融商品を巡る環境も大きく変化しました。このような状況のもと、投信業界でもほとんどのファンドが資産を減らす結果となりましたが、なかには純資産額を増加したファンドが存在します。

 2008年3月末までの1年間では、ほとんどの金融商品において、価格が暴落しました。投信でも、モーニングスター類似ファンド分類で見ると、すべての分類で1年リターンがマイナスになり、それもほとんどが2ケタの下落となっています。
 その結果、投信から資金を引き上げる動きも加速。投信協会の発表によれば、3月末の国内公募投信の純資産総額は、1年前と比べて26.2%も減少しました。
 このように、ほとんどのファンドで資産の流出に見舞われた形ですが、この状況下でも純資産額を増加させたファンドがあります。
 表1は、2008年3月末と2009年3月末の比較で、純資産額が大きく増加したファンド。表で紹介したファンドも含めて、同期間で純資産額が増加した投信は全部で42本あります。

▼表1:1年間で純資産額が大きく増加したファンド
ファンド名 委託
会社名
純資産額 総合レーティング ファンド分類
2008年
3月末
2009年
3月末
増減率
(倍)
シュローダー・アジア公社債ファンド(愛称:アジアン円舞曲<ワルツ>) シュローダー証券投信 4,197 15,506 3.69   国際債券・エマージング(為替ヘッジなし)
インベスコ オーストラリア債券(毎月決算) インベスコ投信 1,483 5,262 3.55 ★★★ 国際債券・オセアニア(為替ヘッジなし)
りそなハイグレード・ソブリンF(毎月決算) 大和投信 28,685 93,636 3.26   国際債券・グローバル(為替ヘッジなし)
中央三井 日本債券インデックスファンド 中央三井アセット 1,619 5,245 3.24 ★★★ 国内債券
ラサール・グローバルREIT(毎月分配型) 日興アセット 25,553 44,693 1.75 国際株式・REIT(為替ヘッジなし)
短期豪ドル債オープン(毎月分配型) 大和住銀投信 88,980 155,334 1.75 ★★★ 国際債券・短期(為替ヘッジなし)
ニッセイ 高金利国債券ファンド(愛称:スリーポイント) ニッセイアセット 242,883 356,658 1.47   国際債券・グローバル(為替ヘッジなし)
エマージング債券ファンド(毎月分配型) 大和住銀投信 18,358 26,863 1.46 ★★ 国際債券・エマージング(為替ヘッジなし)
セゾン バンガード・グローバルバランスF セゾン投信 12,652 18,110 1.43   国際ハイブリッド・バランス(為替ヘッジなし)
野村 豪州債券ファンドDコース(毎月分配型) 野村アセット 28,045 38,790 1.38 ★★★ 国際債券・オセアニア(為替ヘッジなし)
住信 ヨーロッパ国債ファンド(毎月決算型)(愛称:ユーロ十二星) 住信アセット 7,446 9,767 1.31 ★★★ 国際債券・欧州(為替ヘッジなし)
JPM 新興国現地通貨ソブリン・F(毎月) JPモルガン・アセット 41,545 53,552 1.29   国際債券・エマージング(為替ヘッジなし)
ダイワ 外債ソブリン・ファンド(毎月分配型) 大和投信 8,595 10,939 1.27   国際債券・グローバル(為替ヘッジなし)
ジャパン・ソブリン・オープン 国際投信 4,219 5,364 1.27 ★★★★ 国内債券
日本 SRIオープン(愛称:絆) 岡三アセット 1,451 1,745 1.20 ★★★ 国内大型グロース・純資産額100億円未満
出所:モーニングスター
2008年3月の時点で設定から1年以上が経過しており、2009年3月末時点で総資産額10億円以上のファンドが対象。

 純資産増加率の上位を見ると、ほとんどが「毎月決算」タイプのファンドということがわかります。話題の「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」は同期間で純資産額を減少させましたが、この表を見ると、毎月決算型自体の人気はまだ衰えていないことがわかります。
 分類別では、「国際債券・グローバル(為替ヘッジなし)」の13本をはじめ、国際債券型が26ファンドと過半数を占めました(表2参照)。

▼表2:総資産額が増加したファンド・分類別
分類名 ファンド数
国際債券・グローバル(為替ヘッジなし) 13
国内債券 7
国際債券・エマージング(為替ヘッジなし) 3
国際債券・グローバル(為替ヘッジあり) 3
国際債券・短期(為替ヘッジなし) 3
国際債券・オセアニア(為替ヘッジなし) 2
国内大型グロース・純資産額100億円未満 2
国内中型バリュー 1
国内ハイブリッド・インカム 1
JーREIT 1
国際株式・アジア・オセアニア(為替ヘッジなし) 1
国際株式・REIT(為替ヘッジなし) 1
国際債券・欧州(為替ヘッジなし) 1
国際債券・低格付(為替ヘッジなし) 1
国際ハイブリッド・バランス(為替ヘッジなし) 1
国際ハイブリッド・安定((為替ヘッジなし) 1
合計 42
出所:モーニングスター
モーニングスターによる類似ファンド分類の基準で分類。

 国内外の株式市場では、1年間でTOPIXが36.22%、NYダウが37.95%下落したのですから、株式投信が不調なのも当然ですが、やはり下落相場では債券に注目が集まる傾向があります。
 国際債券型だけでなく、国内債券型のファンドでも7本が純資産を増やしました。
 とはいえ、株式投信でも健闘しているファンドがあります。たとえば、岡三アセットマネジメントの「日本 SRIオープン(愛称:絆)」は、日本株から社会的責任投資(SRI)の視点に加え、財務面の評価も含めて銘柄を選定するファンド。住信アセットマネジメントの「住信 キャッシュフロー経営評価オープン(愛称:選球眼)」は、企業本来の投資価値(フェアバリュー)と株価から割安度を分析したファンドで、両ファンドとも純資産額を増やしてます。
 また、海外債券に投資するファンドでも、ハイ・イールド債や新興国の債券など、高金利の債券に投資するファンドが人気を集めています。波乱相場の中、「株式投信を購入するするほどリスクは取りたくないけれど、利回りには期待したい」という投資家の願いの表れといえるでしょう。
 なお、純資産額を増やしたファンドの運用成績についても調べてみました。今回の42ファンドをそれぞれの属する「類似ファンド分類平均」の1年リターンと比べてみたところ、、平均で2.08%上回る結果となりました。

(片岡 利文)

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