アナリストの視点(ファンド)

日米の純流入額比較

2009-07-16

 今回は国内公募追加型株式投信の過去1年間の純流入額上位20ファンドと米国ミューチュアルファンドの純流入額上位20本を比較します。

「日米ともに債券型の流入が大きい」

 図表1は米国籍と日本籍のファンドのうち過去1年間の純流入額上位20ファンドを並べた順位です。同期間、米国、日本ともに債券型ファンドの流入額が多く、米国が20本中12本、日本では20本中17本がランクインする結果となりました。リーマン・ブラザーズの破たんやAIGの救済などで金融危機懸念が高まり、金利の低下が見込まれたことで、債券価格の上昇を狙った債券買いがファンドへの資金流入にも影響したと考えられます。ただ、地域別の投資先を見ると、米国ではすべてが国内であるのに対して、日本ではすべてが海外債券となっています。米国では為替リスクをとらずに、債券のキャピタルゲインのみを狙っていたのに対して、日本では先進国の金利が低下する中、より金利の高い国の債券を購入するという投資家が多かったようです。もっとも、政策金利の低い日本においては国内債券のキャピタルゲインを狙うという考えは現実的でないこともたしかです。
 債券型ファンド以外で見ると、米国では7本の米国株式ファンド、1本の国際株式ファンドがランクインしています。そのうち3本がインデックスファンドとなっており、特に「Vanguard Total Stock Mkt Idx」は株式型でトップの純流入額となりました。同期間、株式市場が下落する中で、株式を安い価格での購入を狙う投資家が増えたことで、株式市場においてもETFの出来高が膨らみました。ミューチュアルファンドの売買に際しても、コストが安く、ファンドマネジャーの裁量による下落リスクのないインデックスファンドが選考されたと考えられます。日本においては、利回りの上昇したグローバル・REITのファンドが1本、大きな反発を狙った新興国株式のファンドが2本ランクインしました。

▼図表1:日米の純流入額上位20ファンドの純流入額(モーニングスター調べ)
  順位 ファンド名 運用会社名 モーニングスター
カテゴリー
純流入額
(億円)
米国 1 PIMCO Total Return Instl PIMCO 米国債券・中期 9,898
2 Fidelity Series Investment Grade Bond Fidelity 米国債券・中期 8,523
3 Vanguard Total Stock Mkt Idx Vanguard 米国株式・大型ブレンド 8,420
4 Fidelity Series Large Cap Value Fidelity 米国株式・大型バリュー 5,315
5 Vanguard GNMA Adm Vanguard 米国・地方債・長期 4,507
6 Fidelity Contrafund K Fidelity 米国株式・大型グロース 4,426
7 PIMCO Total Return A PIMCO 米国債券・中期 4,418
8 Vanguard Total Bond Market II Idx Instl Vanguard 米国債券・中期 4,092
9 PIMCO Investment Grade Corp Bd Instl PIMCO 米国債券・中期 4,042
10 Vanguard Institutional Index Vanguard 米国株式・大型ブレンド 3,787
11 Eaton Vance Large-Cap Value A Eaton Vance 米国株式・大型バリュー 3,456
12 Fidelity Diversified International K Fidelity 国際株式・グローバル・大型グロース 3,008
13 PIMCO Total Return D PIMCO 米国債券・中期 2,975
14 Vanguard Interm-Term Investment-Grade Ad Vanguard 米国債券・中期 2,930
15 JHT 500 Index Trust NAV John Hancock 米国株式・大型ブレンド 2,777
16 American Funds US Government Sec A American Funds 米国国債・中期 2,718
17 Russell Strategic Bond Y Russell 米国債券・中期 2,710
18 Vanguard Long-Term Tax-Exempt Adm Vanguard 米国・地方債・長期 2,590
19 TCW Total Return Bond I TCW 米国債券・中期 2,550
20 Fidelity Series All-Sector Equity Fidelity 米国株式・大型ブレンド 2,523
 
  順位 ファンド名 運用会社名 モーニングスター
カテゴリー
純流入額
(億円)
日本 1 UBS ブラジル・レアル債券投信(毎月分配型) UBS   2,739
2 野村 米国ハイ・イールド債券(レアル)毎月 野村   2,618
3 ニッセイ 高金利国債券ファンド ニッセイ 国際債券型(F) 1,899
4 ハイグレード・オセアニア・ボンド(毎月分配) 大和 国際債券型(F) 1,499
5 短期豪ドル債オープン(毎月分配型) 大和住銀 国際債券型(F) 1,260
6 MS 世界高金利通貨投信(毎月分配型) モルガン・S   1,251
7 野村 新中国株投資 野村   1,149
8 ラサール・グローバルREIT(毎月分配型) 日興 国際株式・グローバル(F) 1,012
9 新興国国債オープン(毎月決算型) 岡三 国際債券型(F) 954
10 欧州ハイ・イールド・ボンド(豪ドルコース) 野村   874
11 日興 高金利通貨ファンド(毎月分配型) 日興 国際債券型(F) 843
12 新光 ブラジル債券ファンド 新光   793
13 世界のサイフ 日興 国際債券型(F) 762
14 高金利通貨オープン 大和住銀 国際債券型(F) 676
15 UBS ブラジル・レアル債券投信(年2回決算型) UBS   655
16 りそなハイグレード・ソブリンF(毎月決算) 大和 国際債券型(F) 649
17 SG 中東株式ファンド ソシエテ   640
18 日興 五大陸債券ファンド(毎月分配) 日興 国際債券型(F) 632
19 ダイワ・ブラジル・レアル債オープン(毎月) 大和   607
20 ブラジル・ボンド・オープン(毎月決算型) 大和   593
1ドル:96.48円で円換算
純流入額は2008年5月末〜2009年5月末の期間
米国の純流出入額は概算
モーニングスターカテゴリーは日米で基準が異なる

 次に設定日で比較(図表2参照)してみると、米国では比較的、運用期間の長いファンドが多く、3年未満のファンドは6本にとどまっているのに対して、日本では17本が3年未満と新規設定ファンドへの流入が多いことが分かります。米国においては市場動向によって、投資資産は変わるものの、投資ファンドはその資産の中で実績のあるファンドが選ばれる傾向があるのに対して、日本では新規設定のファンドの販売額が大きいようです。ただ、日本においても5年以上の運用実績のある豪ドル債券のファンド2本がランクインしており、一部には長期のトラックレコードを有するファンドが買われました。

▼図表2:日米の純資産額上位20ファンドの設定日(モーニングスター調べ)
  順位 ファンド名 運用会社名 設定日
米国 1 PIMCO Total Return Instl PIMCO 1987/5/11
2 Fidelity Series Investment Grade Bond Fidelity 2008/10/8
3 Vanguard Total Stock Mkt Idx Vanguard 1992/4/27
4 Fidelity Series Large Cap Value Fidelity 2008/10/24
5 Vanguard GNMA Adm Vanguard 2001/2/12
6 Fidelity Contrafund K Fidelity 2008/5/9
7 PIMCO Total Return A PIMCO 1997/1/13
8 Vanguard Total Bond Market II Idx Instl Vanguard 2009/2/17
9 PIMCO Investment Grade Corp Bd Instl PIMCO 2000/4/28
10 Vanguard Institutional Index Vanguard 1990/7/31
11 Eaton Vance Large-Cap Value A Eaton Vance 1931/9/23
12 Fidelity Diversified International K Fidelity 2008/5/9
13 PIMCO Total Return D PIMCO 1998/4/8
14 Vanguard Interm-Term Investment-Grade Ad Vanguard 2001/2/12
15 JHT 500 Index Trust NAV John Hancock 2005/10/28
16 American Funds US Government Sec A American Funds 1985/10/17
17 Russell Strategic Bond Y Russell 2005/6/22
18 Vanguard Long-Term Tax-Exempt Adm Vanguard 2001/2/12
19 TCW Total Return Bond I TCW 1993/6/17
20 Fidelity Series All-Sector Equity Fidelity 2008/10/17
 
  順位 ファンド名 運用会社名 設定日
日本 1 UBS ブラジル・レアル債券投信(毎月分配型) UBS 2008/7/17
2 野村 米国ハイ・イールド債券(レアル)毎月 野村 2009/1/28
3 ニッセイ 高金利国債券ファンド ニッセイ 2006/7/21
4 ハイグレード・オセアニア・ボンド(毎月分配) 大和 2003/6/13
5 短期豪ドル債オープン(毎月分配型) 大和住銀 2003/4/18
6 MS 世界高金利通貨投信(毎月分配型) モルガン・S 2008/8/28
7 野村 新中国株投資 野村 2009/3/27
8 ラサール・グローバルREIT(毎月分配型) 日興 2004/3/26
9 新興国国債オープン(毎月決算型) 岡三 2007/8/30
10 欧州ハイ・イールド・ボンド(豪ドルコース) 野村 2008/8/11
11 日興 高金利通貨ファンド(毎月分配型) 日興 2008/4/28
12 新光 ブラジル債券ファンド 新光 2008/12/22
13 世界のサイフ 日興 2006/12/15
14 高金利通貨オープン 大和住銀 2008/2/18
15 UBS ブラジル・レアル債券投信(年2回決算型) UBS 2008/7/17
16 りそなハイグレード・ソブリンF(毎月決算) 大和 2006/6/12
17 SG 中東株式ファンド ソシエテ 2008/6/19
18 日興 五大陸債券ファンド(毎月分配) 日興 2006/6/12
19 ダイワ・ブラジル・レアル債オープン(毎月) 大和 2008/11/12
20 ブラジル・ボンド・オープン(毎月決算型) 大和 2008/11/26
純流入額は2008年5月末〜2009年5月末の期間
米国の純流出入額は概算
モーニングスターカテゴリーは日米で基準が異なる。

 さらに同期間の流出入のうち、両国の国内株式のアクティブファンドとインデックスファンドの動向を見ると、両国ともにインデックスファンドへの資金流入が目立つ一方で、アクティブファンドからの資金流出が大きくなりました。特に米国では「American Funds Growth Fund of Amer A」、「Fidelity Magellan」といったこれまで米国人投資家の支持を受けてきた大型ファンドからの流出が大きなものとなりました。一方でインデックスファンドを見ると日本の方が国内株式型のインデックスファンドの流入が大きいことが分かります。背景としては、国内株式が安いという値ごろ感のほかに、米国においてはETFに資金が流入したためと考えられます。


▼図表3:日米の国内大型株式アクティブ/インデックス別の流入割合(モーニングスター調べ)
図表3:日米の国内大型株式アクティブ/インデックス別の流入割合(モーニングスター調べ)
米国のアクティブファンドは米国モーニングスターカテゴリーでインデックスファンド以外のファンド
米国のインデックスファンドはS&P連動型ファンド
日本のアクティブファンドは旧投信協会分類における国内株式型一般型
日本のインデックスファンドは旧投信協会分類におけるインデックス型日経225連動型、TOPIX連動型の合計
米国の純流出入額は概算、1ドル=96.48円で円換算

アクセスランキング(過去1週間)

 米国と日本における流出入動向を見ると、両国の違いが浮き彫りになるとともに、債券ファンドへの投資やアクティブファンドからの資金流出など共通する部分も見受けられました。もっとも日本における直近の資金流入ファンドが新規設定ファンドであるという流れは続いているようです。

(加藤 信之)

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