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アナリストの視点(ファンド)

新興国にマネー殺到―“勝ち組”投信、賢い指数にヒント

2016-08-18

 「アベノミクスは売り、エマージングは買い」――。そんな米投資家のスタンスを表すような動きが、7月の米ETF(上場投資信託)市場の資金フローで見られた。純資金流出入額ランキングで、日本株に投資する「iShares MSCI Japan」が全ETFのうち最下位となる約15億ドル(約1,600億円)の純資金流出を記録する一方、新興国株ETFの「iShares MSCI Emerging Markets」が全体で第2位の約40億ドルの純資金流入となったのだ。“新興国ブーム”の兆しが見られるのはETFだけではなく、米投信市場全体でも新興国ファンドへの資金回帰が目立っている。米モーニングスターカテゴリー「新興国株式」に属するファンドの純資金流入額は7月に約65億ドルと、2カ月連続の流入超過となり、2013年9月以来2年10カ月ぶりの高水準となった(図表1)。ちなみに、「新興国債券」ファンドについても約46億ドルの純資金流入と前月から8倍以上に急増しており、新興国への強気姿勢が見られる。

図表1:米投信市場の新興国株式、新興国債券の資金フロー(推計値)

図表1:米投信市場の新興国株式、新興国債券の資金フロー(推計値)

※ 米国籍オープンエンドファンド(ETF含む、ファンド・オブ・ファンズなどによる重複除く)が対象
※ 期間:2015年8月〜2016年7月
出所:モーニングスター作成

 新興国への関心が急速に高まっている背景には、景気好転への期待が挙げられる。実体経済に6〜9カ月先行すると言われるOECD(経済協力開発機構)の景気先行指数を見ると、いち早く改善基調にあったインドが、景気の拡大・縮小局面の分かれ目である100を上回ってきたほか、資源価格の低迷に苦しんでいたロシアやブラジルが急ピッチで上昇。低下傾向が長らく続いていた中国も下げ止まりの兆候が出てきた(図表2)。インドや中国では段階的な利下げの実施、ロシアやブラジルではそれぞれ主要輸出品である原油、鉄鉱石の価格底入れがポジティブに働いている。また、米国の追加利上げのペースが鈍化するとの見通しが強まり、新興国からの資金流出懸念が後退したことも追い風だ。株価も新興国経済の復調を先取りするように上昇しており、新興国の代表的な株価指数であるMSCIエマージング・マーケット指数は年初から7月末までに12.02%上昇し、最高値を更新した米国のS&P500指数の7.66%を大きく上回っている(いずれも配当込み、ドルベース)。

図表2:OECD景気先行指数の推移

図表2:OECD景気先行指数の推移

※期間:2013年4月〜2016年4月
出所:OECDのデータを基にモーニングスター作成

“高リスク”の新興国でこそ重要な“低リスク”のファンド選び

 実際に新興国株式に投資する場合、注意したいのはやはり値動きの大きさだ。まず、政治、地政学リスクが大きい新興国だからこそ、複数国に分散投資することが重要となる。近年は一歩進んで、複数国に分散した上でさらにリスクを抑制する手法が登場。例えば、従来型の指数を上回るパフォーマンスを目指す、いわゆる「スマートベータ(賢い指数)」であるMSCIエマージング・マーケット・ミニマム・ボラティリティ指数は、ポートフォリオのリスクが最小になるように銘柄を構成する。同指数は7月末までの過去10年で2倍以上に上昇し、約1.5倍の上昇にとどまったMSCIエマージング・マーケット指数を大きく上回った(図表3)。勝因の一つは同指数の特徴である下げ幅の抑制。リーマン・ショックがあった2008年、欧州危機があった2011年といったリスク回避局面で下げ幅を抑えたことが奏功した。

図表3:新興国株式指数の推移

図表3:新興国株式指数の推移

※ いずれも配当込み、ドルベース
※ 期間:2006年7月末〜2016年7月末
出所:モーニングスター作成

 新興国株式に投資する国内投信を選ぶ場合でも、相対的にリスクが低いファンドを選ぶことは良好なパフォーマンスにつながりやすい。モーニングスターカテゴリー「国際株式・エマージング・複数国(為替ヘッジなし)」に属するファンドを対象に、カテゴリー内でのリスク高位25%とリスク低位25%のファンドのトータルリターンの平均を期間ごとに見たところ、全期間でリスク高位がマイナスリターンに沈む中、リスク低位はプラスリターンを確保し、カテゴリー平均も上回った(図表4)。リスク高位に入ったファンドの顔ぶれとしてはロシア・東欧やラテンアメリカ、逆にリスク低位ではアジアを主要投資対象とするファンドが目立った。前者は資源関連株が多く変動が大きくなりがちになるのに対して、後者は内需関連株中心で比較的安定した値動きとなっている。

図表4:新興国株式ファンドのリスク別トータルリターン

図表4:新興国株式ファンドのリスク別トータルリターン

※ 国内公募追加型株式投信(ETF、確定拠出年金専用、ファンドラップ専用ファンド除く)のうちモーニングスターカテゴリー「国際株式・エマージング・複数国(為替ヘッジなし)」に属するファンドが対象
※ リスク低位は、カテゴリー内でファンドをリスク(標準偏差)の低さで並べたときに、リスクの低さで上位25%に属するファンド、リスク高位はその逆でリスクの高さで上位25%に属するファンドのリターンを単純平均。カテゴリー平均は同カテゴリーに属する全ファンドの平均(モーニングスターインデックスを使用)
※ 2016年7月末時点
出所:モーニングスター作成

 モーニングスターのファンド検索のページ(詳細条件からファンドを選ぶ)で低リスクの新興国株ファンドを選ぶ場合は、「カテゴリー」で「国際株式・エマージング・複数国(為替ヘッジ無)」を選んだ上で、「標準偏差(カテゴリー内で比較して)」の項目を参照。例えば、10年で分類平均より小さいと指定すると、モーニングスターレーティングが5ツ星、4ツ星のファンドとして「フィデリティ・アジア株・ファンド」、「アジア製造業ファンド」などが該当した。

(坂本 浩明)

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