fund_beginer fund_search fund_look



アナリストの視点(ファンド)

コストとレーティングの関係性を探る

2016-09-29

 コストは、唯一投資家がコントロールできるリターンのマイナス要因です。年率0.4%の信託報酬の増加は、30年では12%のリターン低下要因となり、長期投資を前提とする投資家にとっては1割強の資産を自ら選択して失うこととなります。近年では、販売時に手数料を払わないノーロードファンドの増加や、確定拠出年金向け低コスト投信の一般開放など、低コストファンドの選択肢が広がっています。また、低コストであることを前提としたファンド選びも徐々に広まってきていると感じます。こうした兆候は投資家にとって歓迎すべき状況です。では、実際のコストと運用状況の関係はどうなっているのでしょうか。

低コストファンド優位も、最上位の5割は高コストファンド

 コストと運用状況の関係を比較するために、2016年8月末時点における各ファンド(※1)のコスト(以下、信託報酬等(税込)を指す)が、属するカテゴリーのコスト平均を上回るファンドを「高コストファンド」、下回るファンドを「低コストファンド」と定義し、コストとレーティング(※2)の関係を確認しました(図表1参照)。

 まず、レーティングが低くなるほど高コストファンドの割合が増えており、最もレーティングの低い1ツ星では約7割が高コストファンドとなっています。このデータから、高いコストはレーティングの低下要因の一つと考えられるでしょう。ただし、最上位の5ツ星でも、高コストファンドは約5割残っており、一概に低コストファンドの運用状況が高コストファンドに対し優れている傾向にあるとは言い切れない様子です。

(※1)以下、国内籍公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等は除く)が対象
(※2)モーニングスターレーティングは3年以上の運用実績を有するファンドに対し、各カテゴリー内のリスク調整後のパフォーマンスを基準として5段階で付与されています(具体的な計算方法などは各項目の定義の「スターレーティング」の欄を参照)。

図表1:レーティングとコストの関係

図表1:レーティングとコストの関係

※ 2016年8月末時点
※ 本数ベース
※ 高コスト=「ファンドの信託報酬等(税込)がそれぞれのカテゴリー平均を上回る」、低コスト=「ファンドの信託報酬等(税込)がそれぞれのカテゴリー平均を下回る」(以下図表、文章内で同様)
出所:モーニングスター作成

バランス型では低コストファンドに軍配、国内REITは高コストファンドも検討を

 実際、資産ごとにコストと運用状況の関係は異なります。2016年8月末時点において、モーニングスター大分類に基づき、レーティングの高い(4ツ星、5ツ星)ファンドに占める低コストファンドの割合を確認したところ、3割〜8割とその割合は資産ごとにばらつきが見られました(図表2参照)。

図表2:資産別高レーティングに占める低コストファンドの割合

図表3:資産別高レーティングに占める低コストファンドの割合

※ 2016年8月末時点
※ モーニングスター大分類に基づく、4ツ星、5ツ星の合計ファンド数が10ファンド以上の分類が対象
※ 高コスト=「ファンドの信託報酬等(税込)がそれぞれのカテゴリー平均を上回る」、低コスト=「ファンドの信託報酬等(税込)がそれぞれのカテゴリー平均を下回る」
※ 各分類の4ツ星、5ツ星の低コストファンド数を4ツ星、5ツ星の合計本数で除した数値
※ 本数ベース
出所:モーニングスター作成

 最も割合の高いバランス型ファンドでは、82%が低コストファンドとなりました。バランス型ファンドの中で5ツ星となったファンドは、グローバルで様々な資産に分散投資をするシンプルなものが多く、また、中身にインデックスファンドを用いることでコストを抑えているファンドも散見されました。一方、1ツ星には新興国に限定し分散投資するファンドや通貨選択型ファンドなどが多く、高コストファンドが多く見られました。バランス型ファンドの選択の際には、コストが低いファンドを優先して考えることは一つの手法として悪くなさそうです。

 一方、最も割合の低い「国内REIT」では、28%が低コストファンドとなりました。中でも5ツ星ファンドは、低コストファンドが一本も無く、高コストのアクティブファンドのみがランクインしました。近年、国内REITは日銀により買入れが行われており、(1)AA格相当以上、(2)売買の成立した日数が年間200日以上かつ累計額が200億以上などといった基準を満たしたREITのみ購入されています。そのため、日銀の動向に合わせ、上手く銘柄を絞り込んだ一部のアクティブファンドが成果を発揮している可能性が考えられます。

 このように、実際のコストと運用状況の関係は、相対的には低コストファンドが優位となるものの、高レーティングで低コストファンドの割合が低い資産では、ファンドを選ぶ際に、一概に「コスト=カテゴリー平均以下」と設定してしまうと運用効率の良いファンドを選ぶ選択肢を狭めてしまう可能性があります。実際のファンド選びでは、投資家によって重視する項目は異なると思いますので、ご自身の基準でファンドを絞り込んだ後、最後に確認として同じ資産カテゴリーの5ツ星ファンドと比較して運用状況が大きく劣後していないか、調べていただくことでより納得のいくファンド選びが出来ると考えます。なお、モーニングスターでは、ファンドの「詳しく条件を指定して検索」画面から、「カテゴリー」の欄で資産を選び、「レーティング、評価」の欄で「★★★★★」を選ぶことで簡単に同じ資産カテゴリーの5ツ星ファンドを一覧で抽出することが出来ます。

(吉川 裕子)

「アナリストの視点」よく読まれている記事(過去1週間)

アナリストの視点はRSSでも配信しています

バックナンバー