fund_beginer fund_search fund_look



アナリストの視点(ファンド)

日本株、もう一歩でトレンド好転

2016-10-13

 「不吉な10月」。株式マーケットでは、こう言われることが多い。しばしば引き合いに出されるのは、NYダウがたった一日で下落率22.6%と腰が抜けるような大暴落を記録した87年10月19日のいわゆるブラックマンデーだ。日経平均株価の下落率も14.9%と戦後最大の亀裂が入ったが、これに続くのがリーマンショック後の08年10月11日の11.41%。株式相場が少しでもフレると、市場関係者の間に、こうした10月相場のアノマリーが脳裏をよぎる。

 しかし、今年はちょっと様子が違う。10月11日には原油高に刺激され、約1カ月ぶりに1万7,000円台を回復。戻りの関門と見られている4月22日に付けた1万7,572円が視界に入ってきた。この水準をクリアすると、昨年6月以降の長期低迷相場にピリオドが打たれる――。こうした見方が、次第に広がり始めている。今年は「幸運を呼び込む10月」になるのだろうか。

もちあいゾーン、上抜けへ

 まず、図表1の日経平均・週間足チャートを見て欲しい。2月と6月に1万4,952円でダブル底を形成。7月以降は1万6,000〜1万6,900円台での値固め的な動きを繰り返していたが、前述したようにこのもちあいゾーンをここへきて上抜けはじめた。1万7,100円どころに位置している52週移動平均線を今後、超えると、買い方にとっては過去1年間の平均買いコストを上回る状況が出現し、投資家マインドの改善に寄与する。

 いち早く9月最終週には日経平均の中期トレンドをあらわす13週移動平均線が長期線である26週線を上抜くGC(ゴールデンクロス=黄金の交差)を今年初めて達成した。相場の強気信号とされるGCは14年7月以来、2年2カ月ぶりだ。

 円高による収益圧迫や不安定な海外情勢をにらんだ警戒ムードが払しょくされたわけではないが、悪材料をかなり織り込んだ結果の修復機運と見ていいだろう。

図表1:日経平均(週足)

図表1:日経平均(週足)

出所:モーニングスター作成

原油持ち直しも支援材料

 株価上昇へのインパクトが大きい材料の一つは原油価格の持ち直しだ。

 トルコのイスタンブールで開かれた「世界エネルギー会議」でロシアのプーチン大統領は10日、「OPEC(石油輸出国機構)の減産に加わる用意がある」と発言。日量1,100万バレル弱と過去最高レベルの生産を続けている世界有数の産油国ロシアがOPECと共同歩調をとる姿勢を打ち出したことで、原油先物市場にサプライズの買いが広がり、WTI(ウエスト・テキサスインターミディエート)原油先物・期近終値は現地10日、前日比1.54ドル高の1バレル=51.35ドルと、6月8日に付けた年初来高値51.23ドルを更新した。

 一昨年夏場以降、デフレ脱却を目指す日銀の足を引っ張ってきた原油安という流れにはっきり終止符が打たれるようだと、当然ながら「リフレ・ムード」は高まり、内外の株価にはプラスに働く。

 問題はこうした追い風材料を受けて、日本株がどこまで戻るかだ。

 東証1部上場銘柄の平均PBR(株価純資産倍率)は12日現在、1.18倍。PBRは企業の正味の資産価値(=解散価値)からとらえた株価だが、米国の2.0倍、ドイツの1.6倍、英国の1.4倍、フランスの1.5倍などを下回って、先進国の株式マーケットでは最低の水準にある。一方、予想PER(株価収益率)は、日本株が15.0倍。ドイツ、英国、フランスとあまり変わらないが、米国の20.6倍を下回っている。

 1ドル=100円を前提に今年度の収益計画を立てているトヨタ自動車<7203>など指数への影響が大きい輸出型企業が円高抵抗力を発揮して収益巻き返しに動くなら、収益力、資産価値の両面から日本株が再評価機運を高め、日経平均も長期低迷ゾーンから抜け出すだろう。

価格帯別累積出来高で探る上値余地

 注目したいのは日経平均が「戻りの壁」が薄くなるゾーン突入をうかがっている、という事実だ。

 昨年6月以降の価格帯別累積出来高を見ると、一目りょう然(図表2参照)。1万6,500〜1万6,800円どころの累積出来高が突出しているものの、1万7,000円台になると、グンと少なくなっている。価格水準で見る限り、4月22日に付けた1万7,572円にフシ意識が働くものの、累積出来高からとらえた「上値圧迫感」はさほどではない。戻り待ちの滞留玉がかなり多いと推測されるのは2万円超のレベルだ。順調にいけば、1万7,500〜1万8,500円レベルでは市場関係者の多くが想定している以上に軽快な戻り相場に発展する可能性がある。

図表2:日経平均と価格帯別出来高

図表2:日経平均と価格帯別出来高

出所:モーニングスター作成

ドル・円相場、フシ抜け達成

 国内の上場企業は10月下旬から今3月期第2・四半期累計(2Q累計=4〜9月)決算の発表シーズンに入る。内需型企業の業績はこれまでのところ総じて堅調だ。とりわけ上げ潮に乗っているのが建設セクターで、10月11日には大林組<1802>、鹿島<1812>のゼネコン2社がそろって2Q累計の利益見通しを上方修正。大林組は連結営業利益見通しを従来の400億円から590億円(前年同期比38.7%増)に、鹿島も350億円から690億円(同2.15倍)にそれぞれ大きく引き上げた。この調子だと、遠からず大成建設<1801>や清水建設 <1803>も増額修正に踏み切る可能性がある。

 一方、外需系の銘柄では自動車を中心に電機、精密も2Q累計決算で業績の「粘り腰」が確認されるだろう。また、外為市場では8月中旬にドル・円相場が一時99円台まで円高が進んだ後、一度も100円台割れがなく、9月下旬以降は米国の利上げを意識する格好で円高是正が進みつつある。チャート上のフシと意識されてきた75日移動平均線を10月に入ってブレイクしてきたこともドル・円相場の変化を示唆している(図表3)。

 どうやら日本株は年末にかけ次第高の様相を強めそうだ。

図表3:ドル・円相場(2013年8月〜)

図表3:ドル・円相場(2013年8月〜)

出所:モーニングスター作成

(赤間 憲明)

「アナリストの視点」よく読まれている記事(過去1週間)

アナリストの視点はRSSでも配信しています

バックナンバー