fund_beginer fund_search fund_look



アナリストの視点(ファンド)

“パッシブの巨人”に学ぶアクティブ運用術

2016-10-27

 ベンチマークを上回る運用成績を目指すアクティブファンドの苦戦が続いている。国内投信のうち、モーニングスターカテゴリー「国内大型ブレンド」に属するアクティブファンドを対象として、各年においてトータルリターンがパッシブファンド(TOPIX連動型)の平均を上回ったファンドの比率を「勝率」として示したのが図表1だ。アクティブファンドの勝率は、アベノミクス相場で日本株が大幅に上昇した2013年に70%を超えたのをピークに、2014年、2015年と2年連続で40%を下回り、2016年も9月末までの年初来で39%と低迷している。

図表1:アクティブファンドの勝率とTOPIXの年間騰落率推移

図表1:アクティブファンドの勝率とTOPIXの年間騰落率推移

※ 国内公募追加型株式投信(ETF、確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、通貨選択型除く)のうち、モーニングスターカテゴリー「国内大型ブレンド」に属するアクティブファンドが対象
※ トータルリターンが「モーニングスターインデックス TOPIX連動型/類似(単純)」を上回ったファンドの数を集計。コスト控除後のリターンで比較するため、ベンチマークではなくTOPIX連動型ファンドの平均を用いている
※ 2016年は9月末までの年初来
出所:モーニングスター作成

アクティブ運用のカギを握る、3つのポイント

 こうしたアクティブ派にとっての「不都合な事実」がある中、ファンドの選び方を工夫したり、投資法を見直すことで活路を見出そうとする動きが見られる。一つは低コストのアクティブファンド。アクティブファンドの中でも低コストのファンドが相対的に優れた運用成績を出す傾向がある点は、米モーニングスターが「アクティブ/パッシブバロメーター」と題したレポートで検証しており、日本株ファンドにおいても同様の傾向が見られることを以前紹介した。

 もう1つ参考になるのが、世界最大のパッシブファンド運用会社である米国バンガード社のアクティブ運用術だ。同社はパッシブファンドの「巨人」だが、アクティブ運用においても存在感を発揮している。2016年9月末時点で同社が運用する約2兆7,000億ドル(約277兆円)の米国籍投信(ETF、MMF、ファンド・オブ・ファンズによる重複除く)のうち、3割超の約8,600億ドルがアクティブファンド。パフォーマンスも良好で、アクティブファンドのうち純資産残高ベースで8割超がモーニングスターレーティングの4ツ星または5ツ星を獲得している。

 バンガード社の優れたアクティブ運用の秘訣について、ヒントとなるのが、2015年10月付けのレポート「Keys to improving the odds of active management success」(アクティブ運用成功の確率を改善するためのカギ※題名の日本語訳は筆者による)。この中で、アクティブファンドがベンチマークを上回る確率を高めるための3つのポイントとして、「低コスト」、「優れた人材」、そして「我慢強さ」が挙げられた。

 「低コスト」は前述の通りで、「優れた人材」は今回のテーマではないため割愛するが、その名の通り優秀なファンドマネジャーが必要ということになる。では最後の「我慢強さ」とは何か。同社によると、長期でベンチマークを上回るファンドであっても、リターンに一貫性がないので、投資家は「我慢」が必要だ。実際、その証拠として、過去15年間にベンチマークを上回ったアクティブ運用の米国株式ファンド552本のうち、98%に当たる543本が暦年ベースで4年以上ベンチマークを下回った年があったと説明。つまり、長期で見れば勝っているアクティブファンドであっても、そのほとんどが苦戦を強いられる時期があり、投資家はその低迷期にファンドを持ち続ける「我慢強さ」が求められるということだ。

アクティブ上位でも、「常勝」ではない

 翻って日本のアクティブファンドはどうか。バンガード社の調査方法を参考に、日本のアクティブファンドではどのくらいの「我慢」が必要なのか調べた。まず、「国内大型ブレンド」に属するアクティブファンドを対象に、2015年12月末までの過去10年間のトータルリターンがパッシブファンド(TOPIX連動型)の平均を上回ったファンドを集計したところ、10年間の運用実績がある73ファンドのうち、20ファンドが超過リターンを達成していた。次に、この20ファンド(以下では「アクティブ上位ファンド」と呼ぶ)の過去10年間の暦年リターンを確認し、各ファンドが何年間パッシブファンドの平均を上回ったかを見た。10年間通して見ると優秀なアクティブ上位ファンドだが、20ファンドのうち9割の18ファンドが3年以上パッシブファンドの平均に劣後しており、3割超は5年以上劣後していた(図表2)。

図表2:アクティブ上位ファンドがパッシブファンドの平均に負けた年数

図表2:アクティブ上位ファンドがパッシブファンドの平均に負けた年数

※ 国内公募追加型株式投信(ETF、確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、通貨選択型除く)のうち、2015年12月末時点でモーニングスターカテゴリー「国内大型ブレンド」に属するアクティブファンドが対象
※ 2015年12月末までの過去10年間のトータルリターンが「モーニングスターインデックス TOPIX連動型/類似(単純)」を上回った20ファンドについて、暦年リターンを確認し、それぞれが何年間パッシブファンドの平均を上回ったかを集計
出所:モーニングスター作成

 また、2年以上“連続”してパッシブファンドの平均を下回ったアクティブ上位ファンドの数は20本中7割の14本となっており、優れたアクティブファンドであってもいわゆる「常勝」のイメージには程遠く、多くは複数年にわたり劣後する期間があると言えそうだ。例えば、アクティブ上位ファンドの1つである「DIAM 国内株オープン」。同ファンドの暦年のトータルリターンを見ると2008年までの3年間はパッシブファンドの平均を連続して下回ったものの、アベノミクス相場を含む後半の5年間では連勝し、特に直近の2015年は過去10年で最大の超過収益となった(図表3)。つまり同ファンドの場合、苦戦した序盤の3年に耐えた投資家が後半の挽回で恩恵を受けられたことになる。このように、アクティブファンドで積極的にリターンを狙うのであれば、少なくとも2〜3年の低迷期を想定する必要があるだろう。

図表3:DIAM 国内株オープンのトータルリターンとパッシブファンドの平均

図表3:DIAM 国内株オープンのトータルリターンとパッシブファンドの平均

※ パッシブファンド平均=「モーニングスターインデックス TOPIX連動型/類似(単純)」
出所:モーニングスター作成

「アクティブVSパッシブ」、インベスターリターンで見ると?

 最後に、アクティブ上位ファンドを保有していた投資家が、実際に良いタイミングでファンドに投資できていたのかを、「インベスターリターン」を参考に確認してみたい(図表4)。インベスターリターンは金額加重リターンとも呼ばれ、資金流入を加味するため、ファンドを買い持ちした場合のリターンであるトータルリターンに比べ、投資行動によって差が出てくる。底値で買って収益を稼げた投資家が多い場合は数値が高くなり、逆に高値掴みをして損失が膨らんだ投資家が多い場合は数値が低くなるというイメージだ。

図表4:アクティブ上位ファンドとTOPIX連動型ファンドのインベスターリターン、トータルリターン

図表4:アクティブ上位ファンドとTOPIX連動型ファンドのインベスターリターン、トータルリターン

※ 2015年12月末までの過去10年間(年率)
※ アクティブ上位は、アクティブ上位20ファンドのインベスターリターンとトータルリターンを単純平均
※ TOPIX連動型は、類似ファンド分類「TOPIX連動型」に属するファンドのインベスターリターンとトータルリターンを単純平均
出所:モーニングスター作成

 アクティブ上位ファンドの過去10年間のインベスターリターンは平均で▲1.11%と、トータルリターンの平均1.73%を下回っている。このようにインベスターリターンがトータルリターンを下回っている場合は、売買のタイミングがうまくいっていない、つまり、低迷時に我慢できず売却し好調時を逃している可能性がある。なお、パッシブファンドの参考として、TOPIX連動型ファンドの数値を見ると、インベスターリターンは0.93%と、トータルリターンの0.64%を上回っている。多くの投資家が値上がりの恩恵を受けていることを示唆しており、アクティブ上位ファンドと対照的な結果だ。アクティブ投資家がインベスターリターンにおけるパッシブ投資家との勝負で優位となるには、低迷時を耐える「我慢強さ」が必要となるだろう。

(坂本 浩明)

「アナリストの視点」よく読まれている記事(過去1週間)

アナリストの視点はRSSでも配信しています

バックナンバー