アナリストの視点

基準価額3千円未満が2年連続で100本越えの可能性あり、保有ファンドの基準価額の再確認を!

2020-01-09

2018年には基準価額3千円未満が史上初の100本越え

 年末時点の基準価額が3千円を下回るファンド(※1)の本数が、2019年は2年連続での100本超えとなる可能性が出てきた。2019年は11月末時点で、基準価額が3千円未満のファンドが95本あり、3千円以上3千2百円未満も16本あるためだ。集計可能な2000年以降のデータをみると、2017年までの18年間で100本を超えたことは1度も無く、欧州債務危機下の2011年で62本、金融危機下の2008年でも65本となっていた(図表1参照)。いずれの年も、分類別では国内外の株式が中心、決算回数別では年1回と半期の合計で8割以上を占めており、株式市場の急落と外国為替市場の円高が重なったことによる一時的なパフォーマンスの悪化の影響が大きかった。一方で、基準価額が3千円未満のファンドの本数が103本と、史上初の100本越えとなった2018年は、分類別ではハイイールド債、新興国債、REIT(不動産投資信託)などが目立つ。ただし、決算回数別では年1回が7本と、ファンド全般のパフォーマンスの改善に伴って過去最低水準(6本)に近づく一方で、毎月が93本に急増したのが特徴的だ。

(※1)国内公募追加型株式投信(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等除く)、以下の文章内、図表内で全て同一基準

毎月決算型は10%のリターンでは9割のファンドが分配金の支払いを賄えず

 では、2019年にかけて毎月決算型を中心に、基準価額が3千円未満のファンドが大幅に急増したのはなぜか。そもそも基準価額の低下要因としては、(1)分配金の支払い、(2)組入資産の価格低下、(3)コストの支払いの3点が挙げられるが、過去の分配金の支払いすぎの影響は大きい。例えば、『新光 US−REITオープン』について直近の月報(2019年12月)をみると、設定来の基準価額の変動要因として、保有するREITからの配当の4,208円を中心に、売却益及び為替差益を加えた計5,251円(A)がプラスに寄与している。一方で、信託報酬等の1,510円(B)、分配金の11,248円(C)がいずれもマイナスに寄与しており、(B)と(C)の合計から(A)引いた7,507円と、月報掲載の12月5日の基準価額2,493円を合計すると、設定時の基準価額である10,000円となる。仮に、分配金(C)を保有するREITからの配当や売却益などの合計(A)の範囲内程度にとどめていれば、基準価額は8千円台でとどまっていたことになる。『ピクテ 新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)』の直近の月報では、設定来では株式が1,452円のプラス、為替が2,246円のマイナスで、両者の合計はマイナスとなっているが、6,825円を分配しており、2019年11月末時点の基準価額は1,760円にとどまる。

 両ファンドのように設定来の基準価額の要因分析を月報等で開示しているファンドは多くないが、実際には他のファンドでも投資対象資産から得られる配当や売却益を大きく上回る分配金の支払いが、基準価額の下落に大きく影響している可能性が高い。実際、2018年12月末時点の基準価額が3千円未満となった毎月決算型は、年初来トータルリターンが0%以上10%未満のファンドでは2019年11月末時点の基準価額の方が低かった比率が94%に及んだのに対し、10%以上20%未満では35%、20%以上では7%にとどまった(図表2参照)。つまり、基準価額が3千円未満の毎月決算型が、11か月後の基準価額でプラスを維持するには1割程度のリターンでは不十分だったということになるが、主要資産の利回りは先進国債券では一部の国ではマイナス、REITが3〜4%、新興国債券でも5〜6%程度となる中、売却益や為替差益などで補い続けるのは容易ではない。今後金利の上昇やREIT価格が下落した場合、一段の基準価額の低下、分配金の引き下げなどの可能性が高まる。

運用成績の悪化は組入資産の低迷だけにあらず、基準価額3千円未満の約5割以上が下位20%に低迷

 では、組入資産の価格低下はどうか。基準価額を3千円未満、それ以上の3千円刻みで5段階(6千円以上9千円未満等)に分けて、2019年11月までの過去5年間のトータルリターンがマイナスとなった比率をみると、基準価額が3千円未満は74%、3千円以上6千円未満は60%となっているのに対し、基準価額が1万2千円以上では10%にとどまっており、組入資産の運用成績の悪化が基準価額の低下に直結したように思える。しかし、同期間のファンドのリターンの平均値は、コモディティや新興国債券などでマイナスとなったものの、国内外の株式やREITはプラスとなっており、全ての資産で投資環境が悪かった訳では無い。例えば、2019年11月末時点の基準価額が1,823円の『日本株アルファ・カルテット(毎月分配型)』は、同月末までの過去5年間のトータルリターン(年率)は▲0.95%となっているが、同ファンドが属する国内大型ブレンド平均は5.00%となっている。類似ファンド分類(※2)内で下位20%未満にとどまった比率でみても、基準価額が3千円未満の場合は53%、3千円以上6千円未満の場合は43%となったものの、1万2千円以上では13%にとどまる(図表3参照)。一方で、類似ファンド分類内で下位20%以上40%未満の比率は基準価額3千円未満で18%、1万2千円以上で19%となっており、他の基準価額水準と比較しても極端に大きな差はなかった。つまり、基準価額3千円未満のファンドは、組入資産が下落した場合だけでなく、上昇した場合でもリターンがマイナスとなるファンドがあり、相対的な運用成績が大きく劣後するファンドが目立ったということになる。

(※2)ファンドを79に分類したモーニングスターカテゴリーよりも、より詳細な分類で98にファンドを分類

基準価額の水準は問題ではない、とは言い切れない変化に注意

 最後に、基準価額とコストの関係についてみると、信託報酬等が類似ファンド分類平均を上回ったファンドの比率は、基準価額3千円未満では68%、3千円以上6千円未満では69%となったのに対し、1万2千円以上では56%となった。また、基準価額3千円未満のファンドのフィー・レベル(※3)は、平均以下と以上がほぼ同比率となっており、基準価額とリターンの関係ほど明確な差は見られなかった。ただし、コストは分配金再投資後の基準価額で計算するトータルリターンに対しては中長期的には確実な押し下げ要因になるため、この点については改めて別の角度から検証したい。

(※3)カテゴリーや類似ファンド分類とは別に、アクティブとパッシブファンドを区別した独自の30分類の中で、信託報酬等の水準を判定

 本来は基準価額の高低は運用成績とは必ずしも直結せず、基準価額が高かったとしてもファンドとして割高でもなければ、低かったとしても割安というわけでもない。例えば、現在の基準価額が3千円とした場合、購入時に6千円だったのであれば当該期間のリターンは▲50%となるが、逆に1千5百円だったなら50%となるためだ。また、過去には、基準価額が大幅に低下したとしても、あくまでも運用成績の一時的な悪化にとどまるというファンドも少なくなく、保有し続けることで回復できる可能性も高かった。一方で、近年は毎月決算型で分配金の支払いすぎに伴う基準価額の大幅な低下、相対リターンの悪化などの傾向がみられはじめており、基準価額の水準は気にする必要はない、低くても問題ないと言い切れない状況だ。特に毎月決算型を保有する投資家であれば、年末・年始の時間のある時に、直近の基準価額や対ベンチマーク及び同種ファンドとのパフォーマンス比較に加え、月報などで基準価額の変動要因や分配金の内訳等はどの程度開示されているのか、具体的にそれらを見て理解や納得ができる説明となっているかなどについて改めて確認しておくべきだろう。

(吉田 誠)

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