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<新興国eye>ワールドカップはブラジル経済の負の連鎖を断ち切れるか?

2014-06-10 07:37:00.0

 いよいよ今週からブラジルでワールドカップが始まる。ほとんどの競技場やそこにアクセスするための空港などの交通インフラなどは、工事中のまま開幕に突入することになった。おそらく、会期中も工事を継続して、ちょうど閉幕のころに完成するのではないかと思われる。しかし、ブラジルが勝ち進むと、工事どころではなく、仕事も休みになるので、工事完了は難しいかもしれないが…。

 かつては、ワールドカップでブラジルが優勝すると、その年のブラジルのGDP(国内総生産)を1%以上押し上げると言われていた。今回は自国開催であり、政府としては1%以上の経済効果を期待しているはずだが、最近の動向をみると雲行きは怪しくなってきた。逆にGDPが下降する可能性すら、見え隠れし始めている。一向に盛り上がらず、テレビでもデモやストの話題の方が多いような状況では、政府が今後の対応を誤れば、経済の負のスパイラルが加速しかねない。

 まずは、ワールドカップに向けて頻発するストである。先週から今週にかけては、ブラジル経済の中心部であるサンパウロで地下鉄のストライキが行われた。人口約2000万人の大都市サンパウロで、約460万人の足に影響が及んだという。弊社の社員も通常30分で通勤できるところが、地下鉄のストによって起こった今年一番の大渋滞のために、5時間かかって出社した。これが経済に悪影響を与えないはずがない。

 さらにストライキやデモはあらゆる業種に広がっており、サンパウロは医者、教師、裁判所などのインテリ層、リオは警察、銀行の警備員といったデモやストライキに本来備える業種、さらにユニークなのは、デモはホームレスにまで及んでいることだ。彼らにとっては、ワールドカップは賃上げや住むところを勝ち取る絶好機と映っているようだ。

 一方、ストライキとは裏腹に、3日の地理統計院(IBGE)の発表によるとブラジルの14年1−3月期失業率は7.1%で、前年同期の8%よりも0.9%も改善しているが、新聞各紙も単純にブラジル経済の回復の兆しと捉えるところはなく、ワールドカップや大統領選挙があるため一時的に人手不足になっているが、どちらも終わった後に一気に落ち込むのではないかという意見や、経済的に豊かになったために、専業主婦が増え、若者層は就職せずに上の学校へ進む人が増えたためという論調もある。

 さらに中央銀行は13年4月から9会合連続で政策金利(Selic)を引き上げてきたが、ついに5月は据え置きにした。5日に公表した通貨政策委員会議事録によると、これまでインフレ抑制に主眼を置いていたが、どうやら景気後退を防ぐことに移ってきたようだ。水不足による電力危機の問題も、産業界には重くのしかかっている。

 ここまで見てくると、ワールドカップは負の連鎖を強めるほうに作用しそうである。しかし、何が起こるかわからないのがブラジルである。ブラジルのセレソン(代表)が素晴らしい試合を連発し決勝まで進み、見事に優勝をした時にミラクルが起こるかもしれない。ひそかにそれを期待しているのは私だけだろうか…。

【筆者:株式会社クォンタム/輿石信男】
株式会社クォンタムは91年より20年以上、日本とブラジルに関するマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、市場視察のプランニング、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。11年からはJTB法人東京と組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供とよりきめ細かい進出支援を行なっている。

◎当該記事は外部執筆者により作成されたものです。記事は執筆者が信頼できると判断したデータなどにより作成いたしましたが、その正確性などについて保証するものではありません。

提供:モーニングスター社

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