fund_beginer fund_search fund_look

新興国ニュース



<新興国eye>冷えたブラジル市場、政府の大型投資プロジェクトに冷めた反応

2015-07-14 15:32:00.0

 7月9日、ジルマ・ルセフ大統領は閣僚を引き連れ、華々しく16年のロジスティック(物流)インフラへの1980億レアル(約7兆7000万円)の投資プロジェクトを発表した。その内訳は、高速道路に66.1億レアル(約2兆5600億円)、鉄道に86.4億レアル(約3兆3600億円)、港湾に37.4億レアル(約1兆4500億円)、空港に8.5億レアル(約3300億円)となっている。

 これらのほとんどのインフラプロジェクトが民間資本を取り入れようとしており、高速道路ではすでに15年と16年に入札が予定されているなど、民間の企業や投資家の参加を求めている。
 ブラジルが好景気だった頃であれば、おそらく順調に投資資金が集まったであろうが、今回の政府主導のプロジェクトの収益性には懸念材料がある。ブラジルの有力紙「エスタード・デ・サンパウロ」が報じているように、上記のうち空港と高速道路は過去にも応札企業が多く、収益が見込める一方、鉄道などの大型プロジェクトはブラジルであまり前例がない。今後のフィージビリティ・スタディ(採算性調査)の結果次第だが、採算は厳しいだろう。
 本来現政権の最初の任期の目玉であったサンパウロ―リオデジャネイロ間の新幹線のような高速鉄道プロジェクトでさえ、結局応札企業が韓国企業連合だけで、他国は採算が合わないと降りてしまった前例もある。

 さらに投資家を尻込みさせるのは、国営石油公社ペトロブラスを舞台に、検察庁が捜査を進めている汚職・贈収賄事件だろう。
 報奨付供述で、まだまだ政官財を巻き込んだ新たな疑惑が次々と出てきており、今回は14年の統一選挙資金として、大手建設会社ウテーセー(UTC)のリカルド・ペッソア被告がペトロブラス社との取引における便宜供与を求めて、大統領へ選挙献金の名目で750万レアル(約3億円)の賄賂を贈ったと証言した。
 これまで、ルセフ大統領とルーラ元大統領は捜査対象として名前が出てこなかったが、いよいよここにきて、両者の名前も出始めており、野党もようやく大統領罷免へ向けて動き始めている。このような環境で、国家プロジェクトに参加するのはリスクが高いと言えるだろう。

 市場の冷え込みも一段と深くなってきた。14年の自動車販売は大幅に前年割れとなったが、今年の上半期の販売数は全国自動車販売業者連盟によると、前年同期比20.6%減とさらに大幅下落している。それに伴って、現在、全自動車メーカー従業員の約25%に当たる約3万5800人が集団休暇かレイオフ(一時帰休)の対象となっている。
 また、エスタード紙によれば、今年の小売売上高も1−4月は前年同期比6.1%減となり、小売店はバーゲンをするなどの対応を迫られている。
 ブラジルは日本と季節が逆なので6月が秋となるが、ほとんどのショッピングセンターに入っている大手衣料品店のC&Aは6月16日から最大60%オフで冬物を売りに出しており、競合他社も続々と追随している。

 今は海外からの投資には、為替水準や割安となった人件費を含めて極めて良い環境にあることを考えると、ゆくゆくは大きな利益につながりそうだが、このような状況の中、逆張りでブラジルの公共投資事業に参加するチャレンジャーはどれくらい現れるだろうか。

【筆者:株式会社クォンタム/輿石信男】
株式会社クォンタムは91年より20年以上、日本とブラジルに関するマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、市場視察のプランニング、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。11年からはJTB法人東京と組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供とよりきめ細かい進出支援を行なっている。

◎当該記事は外部執筆者により作成されたものです。記事は執筆者が信頼できると判断したデータなどにより作成いたしましたが、その正確性などについて保証するものではありません。

<関連銘柄>
 ボベスパ<1325>、iSエマジン<1582>、上場MSエマ<1681>、
 iS新興国<1362>、上場EM債<1566>

提供:モーニングスター社

今、見られている記事

    関連ニュース

    Recommended bylogly