fund_beginer fund_search fund_look

新興国ニュース



<新興国eye>ブラジル産業界の明暗と懸念、そしてかすかな希望

2015-11-17 17:57:00.0

 ブラジルの有力紙「エスタド・デ・サンパウロ」の11月13日金曜日付の紙面は、ブラジルの現況を映し出す内容で非常に興味深かった。

 まず、経済面のトップ記事は、国営石油公社ペトロブラスの業績で、「レアル安の影響を受けて、第3四半期は37.6億レアル(約1200億円)の赤字」と見出しにあった。原油を輸出しているペトロブラスにとってレアル安は有利なはずなのに、なぜ為替の影響で赤字なのかと思ったら、債務のほとんどが外貨建てで、その利子の支払いがレアルの下落で膨らみ、54億レアルも増えたらしい。まさに赤字はすべて為替のせいということになる。しかも、利子返済の追加分だけで54億レアルもあるというのは異常である。

 同紙によると7−9月の3カ月間で有利子負債が780億レアル増加し、合計は驚くべきことに4023億レアル(約12兆8000億円)に達した。世界一債務が多い石油会社とのことだ。国営企業でなければ、とっくに潰れているだろう。

 消費も相変わらず、上向く気配がない。例年は10月末ぐらいから始まるクリスマス商戦も、気の早いところは9月末からスタート。その背景には、小売売上高が前年比で9月まで7カ月連続のマイナスと減速が続いていることが挙げられる。とりわけ高額商品の売れ行きは鈍い。一方、電気代・水道代は数十%単位で上昇。物価上昇率は10%目前に迫り、昨年28.2%だったローン金利が足元では37.4%まで上がっているため、人々は消費行動に踏み切れない状況になっている。

 逆に、こんな厳しい経済状況でも儲かっているのが、ブラジル銀行、イタウ・ウニバンコ、ブラデスコの3大メガバンク。中でも国営ブラジル銀行は第3四半期において、純利益が対前年比10%増の30.62億レアル(約980億円)となっている。単純にビジネスが好調で利益が増えたわけではないが、何があってもちゃんと利益を出すのがブラジルのメガバンクである。同じ国営でありながらペトロブラスとは極めて対照的だ。今のペトロブラス総裁は、前のブラジル銀行総裁。約1000億円の利益がある会社から、約1000億円の赤字会社へ転身という、今のブラジルを象徴する人事といえる。

 もう1社、好調な企業が紹介されている。製紙・パルプの世界的大手企業であるスザノ社。生産量も前年同期比で9.9%増え、さらに社会開発銀行(BNDES)からのファイナンスも獲得し、工場拡張に16億レアル(約512億円)を投じると発表した。これを好感し株価は一時6%近く上昇した。

 一方、このような好調な企業も含めて、ブラジルの産業界が大きな懸念事項を抱えていることが、この日のサンパウロ州工業連盟(FIESP)の意見広告でわかる。アメリカから始まり日本を含む12カ国の名前を挙げ、先日大筋合意に至ったTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に遅れを取るまいという決意表明とともに、FIESPとして対策の相談と情報提供を開始するとしていた。

 誰に向けた広告なのか、やや漠としていたが、そこにはクリントン元米大統領がブラジリアを訪問した際の講演記事があり、「ブラジルの船は沈まない。世界がブラジルを必要としており、近年の成長を喜んでいる。5年後には、なぜあの時あんなにブラジルの未来を心配していたのかと不思議に思うだろう」と希望が持てるコメントが載っていた。

【筆者:株式会社クォンタム/輿石信男】
株式会社クォンタムは91年より20年以上、日本とブラジルに関するマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、市場視察のプランニング、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。11年からはJTB法人東京と組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供とよりきめ細かい進出支援を行なっている。

◎当該記事は外部執筆者により作成されたものです。記事は執筆者が信頼できると判断したデータなどにより作成いたしましたが、その正確性などについて保証するものではありません。

提供:モーニングスター社

今、見られている記事