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新興国ニュース



<新興国eye>ブラジル大統領にとって「遠かった」日本

2015-12-03 13:48:00.0

 在ブラジル日本大使館は11月27日、12月2−4日に予定されていたブラジルのルセフ大統領の訪日がキャンセルされたことを明らかにした。前回も訪日がキャンセルされたのだが、その時は大規模なデモが起こり、止むを得ない状況だった。しかし、14年に安倍首相がブラジルを訪問し、15年には日本ブラジル外交関係樹立120周年を記念して秋篠宮ご夫妻がブラジルを訪れ、次は外交的にも当然ルセフ大統領の訪日となるはずであった。

 今回は、同大統領が所属する党の政治家が、初めて現役の国会議員のまま逮捕されるという衝撃的な事件があったところだが、それがすぐに本人の罷免につながるわけでもなく、訪日をキャンセルするに十分な理由とはならないだろう。残念ながら今の日本とブラジルの間に喫緊の問題がなく、大統領が訪日しても得することがないと考えたのだろう。

 パリで大規模テロ事件が発生したのに続き、トルコでロシア機撃墜事件があるなど世界では次々と大事件が起こっている。一方で、ブラジル国内においてもペトロブラスをめぐる大型贈収賄事件で次々と政治家が逮捕され、大統領自身も下院議長とどちらが先に今の政治的地位から引きずり降ろされるかの争いをしている。

 ブラジルにとって、国境を接するラテンアメリカの国でもなく、中国や米国、欧州などの主要貿易相手でもなく、共通する利害の多いBRICsメンバーでもない日本に、往復で3日間近くもかけて訪れる理由がないということかもしれない。ある意味では、日本とブラジルの経済的なつながりが希薄である証左といえるだろう。

 一方、日本からすると16年はリオ五輪があり、その後の五輪が東京という流れがあることや、日本政府としてもGDP600兆円の目標を掲げるなかで、ブラジル側の輸入障壁を取り下げる交渉をしたかっただろう。ブラジルは世界最大の日系人コミュニティーがある国であり、自治体レベルを含めて対外的に交流が盛んな国であることから、距離の遠さに反して心理的には近い国ともいえる。

 ところが、ブラジルからすれば、イタリア系、ドイツ系、アラブ系など世界中から移民を受け入れてきている。さらに、近年は中国、韓国からも移民がどんどん押し寄せている。それゆえ、日本のブラジル外交における位置付けは、年々弱くなっていっていることを日本側も認識する必要があるだろう。日本企業の存在感もブラジル経済市場でかつてほどではなく、車も家電が得意な韓国勢や、貿易面で有利な中国に押されている。さらに、日本は文化的な親近感では欧州に及ばない。そのような背景も相まっての突然の訪日キャンセルである。

 もちろん、外交儀礼上はブラジル側に問題がある。ただ、相手国に魅力を感じてもらえなかった面もあるだけに、日本が国としての魅力を高める努力をしなければ、ダイナミックに変動している国際社会の動きから取り残されることにもなりかねない。

 ブラジルが経済的な苦境にある今、日本の経済的存在感を示せる絶好のチャンスといえるが、残念ながらその気配はない。

【筆者:株式会社クォンタム/輿石信男】
株式会社クォンタムは91年より20年以上、日本とブラジルに関するマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、市場視察のプランニング、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。11年からはJTB法人東京と組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供とよりきめ細かい進出支援を行なっている。

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提供:モーニングスター社

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