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新興国ニュース



<新興国eye>ルーラ前大統領の強制捜査とブラジルの民主制

2016-03-09 17:51:00.0

 ついにルーラ前大統領に司直の手が及んだ。元労働運動の闘士で、小学校卒ながら労働者階級の代表となり、貧しい人たちの味方として大統領まで駆け上がったルーラ氏。今まで、強気を貫いて身の潔白をまくし立て、自分が育てて、政権を取った党から何人も贈収賄での逮捕者を出しながら、反省のかけらもなく、責任を感じることもなく、日本的感覚からは信じられないほどの厚顔ぶりであった。退任時に80%を超える支持率を得た実績は簡単にははがれ落ちなかったということなのだろう。

 労働者階級のヒーローが豪華マンションのペントハウスから手を振る姿には何度も違和感を覚えたが、今回の強制捜査は、それら不動産取得から切り込んだもので、ブラジルの司法・検察は常識的であったといえる。これが企業経営者で、松下幸之助のように小学校中退ながら、一大企業グループを作り上げた人が豪邸に住むのは不思議ではないが、8年間大統領を務めたとはいえ、労働者党の代表者が豪邸をいくつも持っているのは、完全に感覚が麻痺をしたとしか言いようがない。検察は丁寧に事実と証拠を積み重ねていき、立証しようとしているようだ。ルーラ氏は、軍事政権時に投獄された経験を持つ筋金入りなので、そう簡単には認めないだろうが…。

 ルーラ氏の事情徴収、強制捜査は、国際的にも報道され、すぐに数字となって現れた。ブラジルを代表する株価指数であるボベスパ指数は、一週間で約18%上昇し、通貨レアルも急騰した。誰も、こんなに早く捜査が前大統領にまでたどり着くとは思っていなかったので、驚きと政権交代への期待が一気に膨らんだ感じだ。

 3月2日には、逃げ回っていた下院議長のクーニャ氏の起訴も正式に決定し、連立与党の大半を占める2大与党である労働者党と民主運動党の中心にメスが入ることになる。

 昨年から今年にかけて、経済は悪化の一途をたどり、政治は茶番劇を繰り返しながら一向に進展せず、明るい要素が何もなかっただけに、今回の件はこれでブラジルの民主主義も経済も新たな段階に入れるかもしれないという予感をみんなが共有したのではないだろうか。

 ブラジルは王朝で始まり、共和制と軍事政権を繰り返しながら、ようやく1980年代に民主制にたどり着いた国である。要するに富裕層・特権階級が長く政治を握り、多くの下層階級の市民を支配していたわけだ。それに対して下克上を起こしたのがルーラ氏であり、労働者党政権の誕生は歴史的な出来事といえた。

 しかし、権力は腐敗するというように、労働者の味方だったはずの人たちが、表向きは低所得者にお金をばらまくボッサ・ファミリアなどの政策を打ちながら、裏では労働者から吸い上げた税金から前例のないほどの巨額をポケットに入れ私腹を肥やしていたわけだ。残念ながら、労働者党は単なる拝金党であった。ペントハウスから手を振りワーキングクラスヒーローとして振る舞うルーラ前大統領の様が拝金党を象徴している。

 今回の強制連行が逮捕にまで行き、検察がまともに機能しているうちに、ブラジルは次のステップに進めれば、再び成長軌道に乗ることもできるだろう。そのためにはまず汚職に関わった政治家には退場してもらわないといけないが、そうすると議会には誰もいなくなるかもしれない…。

【筆者:株式会社クォンタム/輿石信男】
株式会社クォンタムは91年より20年以上、日本とブラジルに関するマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、市場視察のプランニング、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。11年からはJTBコーポレートセールスと組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供とよりきめ細かい進出支援を行なっている。

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提供:モーニングスター社

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