fund_beginer fund_search fund_look



[an error occurred while processing this directive]

<新興国eye>ブラジルで続く政治不在、出口が見えない消費の縮小

2016-05-02 17:55:00.0

 ブラジル地理統計院が4月20日に発表したところによると、15年12月から16年2月までの失業率がついに10.2%と2桁台になった。失業者総数も1040万人と、1000万人の大台を突破した。

 日本は現在、失業率が3%台前半で完全失業者数は約216万人だ。リーマン・ショック後の2009年時点の日本で、失業率が5.08%、完全失業者数が300万人超であったことを考えると、人口約2億のブラジルとはいえ、1000万人は大変な数字である。

 失業率の統計は国によりやり方が違うので単純比較はできないが、サンパウロの中心部であるパウリスタ大通りでも路上生活者がどんどんと増えて、今や10メートル間隔でビルや商店の前に住みついており、現実として深刻な状況になりつつある。

 失業するということは当然、所得がなくなり、消費が減るということだ。WHO(世界保健機関)が発表した2012年のブラジル人1人あたりの年間所得は115万3000円だった。宵越しの金は持たないブラジル人気質を考えると、1000万人が所得を失ったことで、単純計算すれば1年で11兆5000億円の消費市場が消えたこととなる。

 ブラジルの2015年の名目GDP(国内総生産)は約1兆7730億ドル(約189兆円)だったので、2016年は家庭消費が約6%減となると考えた方が良いだろう。

 もちろん、GDPには貿易収支なども反映されるので一概には言えないし、昨年の成長率マイナス3%台という数字も疑わしいのだが、今年も各方面が3%台のマイナス成長を予測をしているのは、希望的過ぎる気がする。

 その根拠の1つとして、この20年間でラテンアメリカの通貨危機など、何度も経済の大幅下降局面があったが、その時でも右肩上がりだったブラジル人にとって非常に大切な2つの分野が大きく下落している。

 ひとつがシュラスコをはじめ、ブラジル人のソウルフードでもある牛肉である。国民1人あたりの牛肉消費量が2015年には前年比8.4%減で、過去15年間で最低だった。もう1つが世界3位の市場規模にまで成長した、きれい好きのブラジルにとって欠かせないコスメ分野だ。こちらも15年には前年比8%減だった。ブラジル衛生・香水・化粧品工業協会によると、前年比でマイナスになったのは23年ぶりとのことだ。

 逆に消費押し上げ要素があるとしたら、公定歩合(SELIC)の引き上げである。13年5月には8%だったSELICは、14年5月には11%に、15年5月は13.5%とさらに上昇。現在では14.25%と、3年でトータル6.25%も引き上げられた。

 利率が上昇すれば、銀行に多額を預けている富裕層の貯蓄は、確実に増えることになる。10億円預けている人の場合、年利が5%アップすれば、新たに5000万円を手にするわけで、その一部が消費に回っているはずだ。

 ブラジルの富裕層は一説によると19万2000人で、総資産は9660億ドルと言われており、その20%がブラジル国内の金融資産であるなら、その5%=約100億ドルが公定歩合の上昇で懐に入ることになる。

 確かに今、ブラジル国内の消費市場で、唯一富裕層向けだけは活況だ。しかしそれでも、1000万人の失業で消える1000億ドルをカバーするのは難しいだろう。首都・ブラジリアが政争に明け暮れている現在、消費を押し上げる手は何も打てていない。消費を回復するためには、雇用を押し上げる施策、そして外資の投資を呼び込む施策が待たれるところだ。今の与党に期待できないが…。

【筆者:株式会社クォンタム/輿石信男】
株式会社クォンタムは91年より20年以上、日本とブラジルに関するマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、市場視察のプランニング、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。11年からはJTB法人東京と組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供とよりきめ細かい進出支援を行なっている。

◎当該記事は外部執筆者により作成されたものです。記事は執筆者が信頼できると判断したデータなどにより作成いたしましたが、その正確性などについて保証するものではありません。

<関連銘柄>
 ボベスパ<1325>、iSエマジン<1582>、上場MSエマ<1681>、
 iS新興国<1362>、上場EM債<1566>

提供:モーニングスター社

関連ニュース

Recommended by logly

いま見られている記事

    ピックアップ