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新興国情報

真の所得水準は? インフォーマルセクターのインパクト
2011/02/04

インフォーマルセクターの一例。我が家の近くの個人商店です。間口が3m、奥行きが2.5m程度の小さなものですが、生鮮食料品以外の日用品は大方そろう「よろず屋」です

途上国の経済を語るときに「インフォーマルセクター(非公式経済)」という言葉が出てきます。インフォーマルセクターとは統計の数字上には表れてこない経済活動のことを指します。インフォーマルセクターの範囲は、国として統計をどこまで細かく取っているかによるので、国・地域によって、さらには行政担当官によって変わってきます。一般には、靴磨き、屋台、路上の物売りなどが例に挙げられることが多いです。

セネガルの場合、フォーマルとインフォーマルを分ける境界線は、事業者・個人から税金が支払われているかどうかであると、私が参加したMBA(経営学修士)プログラムのセネガル人教授は説明していました。したがって、経済活動を行っていても税金を納めていなければ、それはGDP(国内総生産)にカウントされないということです。

それでは、インフォーマルセクターの規模はどのくらいなのでしょうか。セネガルでは、経済活動の約半数が統計に表れてこないと、前述の教授は述べていました。言い換えれば、実際の所得水準は、統計で表される所得水準の倍程度にまで跳ね上がるということです。

また友人とこの話をすると、イメージとしてほぼ全ての個人商店・中小企業が、税金を支払っていないインフォーマルセクターになるということでした。商店を出すための免許代や地代などは支払われるものの、税金は多くの場合支払われないとのことです。逆に言えば、税金が徴収されているのは、外資系企業とごく一部の大規模なセネガル企業に限られるということです。会社数ベースで言えば、全体の2割程度に過ぎないのではないかと語っていました。

投資、特に消費者向け事業(BtoC)を考えるうえで、このことは決して小さくありません。セネガルの一人当たりGDPは統計上1,000ドル前後です。これが実際は2,000ドル程度になるということになれば、手の届く商品の価格帯や購入量が単純に考えて倍にまで上昇することになります。そして「年間1,000ドル程度の所得水準だったら、当社製品には手が届かない」と考えて投資を控えてしまい、機会損失が発生するリスクがあるということになります。

ちなみに、統計数字が全く意味が無いということではありません。たとえインフォーマルセクターが抜けているとしても、統計上の数字は所得水準の複数国間の相対比較には有用だと考えます。また、「統計上の」所得水準と消費量の水準の相関関係(例えば、統計上で一人当たりGDPが何ドルを超えると、ある商品の購入が急速に拡大するなど)を基に投資先の「あたり」をつけるためには、統計上の数字は活用すべきでしょう(本格的に投資を検討する際には、当然のことながら実際の所得水準を知ることが必要です)。

いかがでしょうか。各種メディアで取り上げられる「所得水準」は多くの場合、統計上の数字が基準になっています。しかしそれらの数字については、「実際には言われている金額の倍の所得がある可能性がある」ということを念頭に置く必要があるほどに、インフォーマルセクターのインパクトは大きいのです。前回記述した中間層・富裕層向けビジネスも同様ですが、アフリカというイメージや統計上の数字のみならず、現地で実際に見て消費者の所得水準、購買行動を見ることが、少なくともセネガルの(そして多くのアフリカ諸国での)投資判断には必要となりますし、逆にそうすることで今までは見えてこなかったチャンスを発見することにつながるのです。

(佐藤 重臣)

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