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新興国情報

アフリカからみた東北関東大震災、「原発」「停電」が想起させるもの
2011/03/18

はじめに、東北関東大震災で被災された方々、またご親族の方々に対しまして、心からお見舞い申し上げます。またお亡くなりになられた方々に衷心よりお悔やみ申し上げ、哀悼の意を表します。

今回の大震災についてはアフリカでも多くの国で報道されています。多くのアフリカ諸国では英語圏ではBBCやCNN、フランス語圏ではTV5 Monde、France 24、Radio France Internationaleなど先進国メディアが進出していますが、今回の震災についても、これらのメディアを通じて情報が広まっています。またそれらを受けて、地元メディアでも震災報道をしており、地震の翌日にはセネガルの友人から私宛に安否確認の連絡などが来ました。

ところで南アフリカは、アフリカでは唯一、原子力発電所が商用稼動している国です。発電容量は180万キロワットで、福島第一原子力発電所の総発電容量470万キロワットと比較すると約40%と、決して小さくないと言えます。

また南アフリカでは、原子力発電所の拡大が検討されています。もともと2008年、同国では原子力発電所建設にかかる入札が実施されたのですが、財政難を受けて中止となりました。しかしそれ以降もその可能性は継続的に検討されており、今月末に確定すると言われている統合電源計画(Integrated Resource Plan)では、原子力発電によって2030年までに960万キロワットの発電容量を追加するとみられています。これが実現すれば総電力容量のうちの14%が原子力発電で賄われることになります。

このような背景から、南アフリカでは他のアフリカ諸国と比べてもとりわけ関心が高いようにみえます。南アフリカの週刊誌エンジニアリング・ニュースのウェブ版では、地震発生以降継続して震災報道、特に原子力発電所関係の報道を行っています。

電力関係者の発言をみてみると、現在稼働中の発電所の安全性が強調されているとともに、今後の原発推進という姿勢は変わらないことが示されています。

南アフリカ電力公社エスコムは週明けの3月14日、自国内の原発の安全性とコスト優位性を強調しています。同社のスコット報道官は日本で起きている事象を注視しているとしたうえで、同国は原子力の安全性を重視する文化(nuclear safety culture)を有しているとしています。また建設コストが高いもののいったん建設すれば発電コストは低いともしています。現在操業中であり、かつ停止させるほどの供給余力がないエスコムからすれば、当然の発表と言えるでしょう。

また政府も基本的には原発を引き続き推進するという姿勢を変えていません。ピータースエネルギー大臣は3月15日、日本での地震に起因した福島第一原発の事故によって、将来の原子力発電所についての意思決定や計画立案に影響がある可能性はあるものの、原子力エネルギー拡張したいという意思が影響を受けることはないとしています。同時に、南アフリカの地質学的な条件は日本のそれとは大きく異なり、南アフリカでは同種のリスクに直面したことはないとしています。

これまで、同国の原子力推進の姿勢を受けて多くの国が受注に向けて動き出していました。報道でオープンになっているだけでも、フランス、ロシア、米国、中国、韓国が売り込みを強めています。

このような中、日本企業が極めて厳しい状況に立たされることは間違いありませんし、現時点ではまず現在進行中の原子力発電所の事故を切り抜け、電力需給をバランスさせることが至上命題です。しかし将来的には、今回の教訓を生かし、途上国の安全な電力供給をサポートするという観点で、これまで以上に貢献できる知見が増えることは間違いありません。原発新設のみならず、既設発電所の運用管理なども含めて、ビジネスを展開していく方法も模索してほしいと思います。

ちなみに、セネガルでは私が住んでいたときも、その前もその後も、停電が普通です。計画停電という高尚なものではなく、いつ始まっていつ終わるか分からない停電です。想像していただきたいのですが、いきなり停電が始まって、これがいつ終わるか分からない。1分で終わるのか、2日続くのかも分からない。電気が復旧して、またいつ落ちるかもわからない。これは、計画停電と比べ物にならないくらい、フラストレーションが高いですし生活への影響も大きい。電力が不安定であることを前提とした生活スタイルと、そうでない生活スタイルの違いを考慮しても、いつ終わるか分かって、その影響範囲が分かる計画停電という措置は本当にありがたいと感じています。東京電力・東北電力の方々の努力、技術力には心から敬意を表したいと思います。

(佐藤 重臣)

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