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新興国情報

詐欺と洪水を乗り越えたベナンの大統領選
2011/03/25

ベナンと言って場所がすぐ分かる人は、まずいないと思いますし、そもそも聞いたことがない人が大半でしょう。もしかすると、タレントのゾマホンさんの出身地、ということで知っている人はいるかもしれません。

場所は、ナイジェリアの西。人口890万人(2009年、世銀)、面積11万2,622平方キロメートル(日本の約3分の1)という小さな小さな国です。この国で3月13日大統領選挙が実施されました。

今回は、ベナンという国を紹介するとともに、今回の大統領選の結果について触れたいと思います。

ベナンの経済と政治

世銀によると、2009年の一人当たり国民所得は750ドル(約6万円)。国民の多くが1日当たり2ドル以下で生活するという貧しい国です。実質経済成長率は2008年5.1%、2009年2.7%、2010年3%(CIA、The World Fact Book)と、急速とは言えないまでも着実に成長していると言えます。

産業は未発達で主に自給用農業や綿花、および地域間商業貿易に頼っています。農業が33.2%、工業が14.5%、サービス業が52.3%(CIA、The World Fact Book)。綿花栽培はアフリカで随一の規模を誇ります。またサービス業は、隣国ナイジェリアなどとの貿易やギニア湾に面するコトヌ港の港湾サービスが大きな割合を占めていると言われています。

現職のヤイ大統領は、2006年3月に初当選。汚職の撤廃と経済開発を目指していました。経済開発は、外国企業による投資、特に観光、食品加工、農業、ICT(情報通信技術)分野での進出促進を目指しています。

ベナンの大統領任期は5年なので、今年の3月に大統領選が行われることになっていました。そのような中、昨年2つの重大な事象がベナンを揺るがします。

詐欺事件

1つ目は、Investment Consultancy and Computer Services(以下「ICCS」)という会社が仕掛けた、一大詐欺事件です。

この詐欺は高利回り保証(50−100%)をうたい文句に資金を集め、集まった資金をそれより以前に集まった人々への配当とするというもの。よくある話ではあるのですが、今回の詐欺が突出していたのは、その影響範囲です。以下被害規模を示す数字です。

・被害者数は推計で5万−7万
・被害総額は1.8億ドル(146億円)−3.4億ドル(275億円)
・ICCSの集めた金額は2010年国内総生産の5%以上
・被害者一人当たりの投資金額が一人当たり国内総生産の1.5倍以上

さらにこの事件を深刻なものとしたのは、ヤイ政権が関わっていたという疑惑です。大統領やその他政府高官がICCSのマネージャーと共にメディアに登場していたことが問題になりました。一緒に登場していたこと自体も問題です。しかしこの政府高官が一緒に映っているというのが、政府もお墨付きを与えている確かな組織であるという安心感を大衆に与え、被害が拡大した要因になったことがより大きな問題といえます。

結果、ICCSの詐欺事件が発覚後、ヤイ大統領はICCSに関わっていたと言われる内務大臣、司法長官、治安維持大臣を解任。ヤイ大統領の甥(おい)までもが逮捕・投獄されました。しかし大衆の怒りは収まらずヤイ大統領も共謀していたのではないかと騒がれました。そのため国会では、大統領の弾劾決議案が提出されました。国会議員83人のうち50人が賛成に回ったものの、憲法上大統領の解任に必要な3分の2に満たず否決され、ヤイ大統領は九死に一生を得ました。

洪水

詐欺事件の動揺が収まらない中、ベナンは去年の9月と10月に大洪水に見舞われました。過去50年で最悪の被害とも言われています。洪水は1カ月間にわたって続き、68万人が被害を受けたとされています。水供給システム、公衆衛生システムを破壊しコレラが流行。穀物・家畜への被害はもちろん、家屋破壊は5万5千戸、455の学校に及び、農業関係のインフラも破壊されます。

経済への打撃は当然大きく、GDPの3%が失われたと見積もられています。

このように2010年のベナンは大揺れに揺れました。今月の大統領選は、詐欺事件で政権への信頼が損なわれ、洪水で経済がさらにダメージを受けた中で行われたものでした。現職にとっては厳しいものだったと推察されますが、果たしてどうなったのか。

現職ヤイ大統領が再選と憲法評議会が暫定発表

結果は、ヤイ大統領の勝利でした。得票率53%と過半数を獲得したため、憲法評議会が正式に結果確定を行うと、ヤイ大統領は2期目に突入することになります(既に憲法評議会は暫定結果としてヤイ大統領の当選を発表済み)。

野党候補は100万人以上の有権者が投票を妨げられたとして、この結果について抗議しています。このため最終的な結果の確定は先になるかもしれませんが、3月14日に国連の潘基文事務総長は声明で、今回の選挙が平和かつ秩序あるものとして行われたと発表していることから、最終的にはヤイ大統領が再選するのではないかと考えています。

ベナンは現在とても貧しい国ですし、今後も経済的には厳しい状況が続くと考えられます。ある政治アナリストは、詐欺事件で最大の痛手は経済的なダメージではなく、ベナン国民が自信喪失に陥ってしまう可能性であると指摘しています。しかしベナンは、アフリカでは(残念ながら)数少ない民主的な政権選択が行われているように見えます。このことをベナン国民が誇りとし、平和の維持に努めることで、少しずつでも経済は成長していくのではないかと期待しています。

(佐藤 重臣)

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