文字サイズの変更

  • 小
  • 中
  • 大
新興国情報

ベトナムドン切り下げの背景と影響(前編)=株価は下落、国民はドンを信用せず
2011/02/22

2月11日、ベトナムドンが対ドルで9.3%切り下げられました。今回の切り下げを含めてドンは2009年11月から4回も切り下げられています。今回特に注目されているのは9.3%という大幅な切り下げです。この切り下げ幅は1993年以来最大となりました。

対ドルのベトナムドン公式レート(09年5月1日〜11年2月17日)

図表

ベトナムには公式レートと市場レートがあり、公式レートは政府が定めたレートで(切り下げたりするのはこのレート)、市場レートは一般のレートで需給の関係で上下します。ベトナムは貿易赤字なので、国内は万年ドル不足です。すると市場レートでドルが高値で売買されることとなり(ドンは下落)、だんだんと公式レートとのカイ離が大きくなっていきます。そのカイ離を埋めるように、公式レートが下落するというのがドン切り下げの構図です。しばらく前から公式レートと市場レートには10%近い開きがあり、それを一気に埋めたのが今回のドン切り下げです。2つのレートのカイ離が大きかったという意味で、ドン切り下げはある程度予想できましたが、9.3%の大幅な切り下げは市場を驚かせました。

株価への影響はどうでしょうか。ドンを切り下げた11日のVN指数は前日比0.05%安の519.98ポイントとそれほど反応していませんでした。しかしその後、VN指数は下げ止まらず、約1週間経った17日の終値は509.83ポイントとなり、じわじわと2.0%下落しました。これは投資資金が金と米ドルに逃げているためと言われています。ドン切り下げで公式レートと市場レートはかなり近づいたものの、また徐々に市場レートが下落しています。1年2カ月で自国通貨が20%以上も下落すれば当然ですが、国民はドンを信用しておらず、株式から金や米ドルにお金をシフトする動きがあるようです。

また今回のドン切り下げのタイミングで、為替レートの変動幅を従来の基準値比±3%から±1%に引き下げました。しかし商業銀行は外貨の売りに「手数料」という名目で上乗せし、変動幅の上限額を超える取引を行なっています。銀行は輸出企業などから高値で米ドルを調達しなければならないため「手数料」として売りの際に転化しているそうです。このように、今のベトナムは銀行さえもレートを守れていない状態です。

ドンが切り下げられる(公式レートが下落する)と市場レートも下がる傾向があります。ドンの実勢レートがどれくらいかという問題ではなく、ベトナム人の中に「公式レートは市場レートよりも高い」という公式が成り立っていて、公式レートが下落したら市場レートもそれに合わせて下落します。

公式レートと市場レートがカイ離しているから公式レートを切り下げているのに、公式レートが切り下がったから市場レートが下がるという悪循環に陥っているように思います。今後、抜本的な改革を迫られることになるのではないでしょうか。

(大鳥 洋子)

大鳥 洋子サイトへのリンク

バックナンバー

閉じる

ページの先頭へ戻る