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ベトナムドン切り下げの背景と影響(後編)=2011年のインフレ目標達成はほぼ絶望的に
2011/03/01

今回はドン切り下げの影響と原因について考えたいと思います。

まず影響についてです。輸入価格の上昇によって(1)インフレと(2)輸入品の減少が予想されます。特に輸入品の多いベトナムでインフレが加速するのは想像に難くありません。2008年に商品が暴騰したとき、消費者物価指数(CPI)は前年比30%弱まで急上昇したように、ベトナムはインフレになりやすい国です。2010年のCPIも政府目標の前年比7%に対し、12.17%と大きく上回ってしまいました。インフレの抑制は最優先課題であるなか、2月11日に発表された9.3%のドン切り下げは一部で「政府は最重要課題であるインフレ抑制よりも経済成長を優先した」と言われたほどです(その後、金融引き締めを発表)。

政府の経済顧問は「ドンを1%切り下げた場合のCPI上昇率は0.15%に達する。今回の切り下げ(9.3%)の場合、1.4%の上昇を招くことになる」と分析しました。

実際にドン切り下げの翌日(12日)にはガス価格が5.6%引き上げられました。その後も24日にガソリン価格が17.6%上昇、電気料金も3月から15%値上げされることになっています。このように公共料金は軒並み上昇しています。今後、食料品なども徐々に値上げされていくことでしょう。

2011年のCPI上昇率の政府目標は7%以内。しかし1月の上昇率が前年同月比12.17%(前月比1.74%)、2月に至っては前年同月比12.24%(前月比2.09%)に達しました。そこに9.3%のドン切り下げ(通貨切り下げによるインフレの影響は数カ月後に現れる)ですから、政府目標の7%以内を達成するのはほぼ絶望的だと思います。

しかしドン切り下げは悪い影響ばかりではありません。輸入価格の上昇によって輸入品が減少し、ドン安によって輸出の拡大が期待されています。そうなれば貿易赤字が縮小するので、ドル不足も緩和されるはずです。

次に原因です。一番の原因が前述した貿易赤字です。(前編)で「ベトナム人の中に『公式レートは市場レートよりも高い』という公式が成り立っている」と書きましたが、その流れを作っているが米ドル不足です。これが解消されない限りはドン安に歯止めがかからないと思います。貿易赤字については別の回でゆっくり話したいと思っているので、今回は割愛させていただきます。ご了承ください。

ほかにもマネー・サプライ(M2)を増加させていることも原因です(2010年は前年比25.3%増)。現地メディアによって「グエン・タン・ズン首相が国営のグループ企業や総公社などに対し、11年の業績を平均で前年比15%成長とするよう指示した」と報じられていました。このように政府は経済の高成長を維持したい思惑があります。その副作用として起こるインフレや通貨安をどう乗り越えていくかが大きな課題となっていました。

前回、「抜本的な改革を迫られることになる」と書きました。ドル切り下げ後、市場レートはさらに下落し、インフレが懸念されるなか、2月21日に中央銀行は金融引き締めを発表しました。次回は「金融引き締め」について触れたいと思います。

ドン切り下げの影響

図表

(大鳥 洋子)

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