文字サイズの変更

  • 小
  • 中
  • 大
新興国情報

ベトナムの金融引き締め=マネーサプライ(M2)を110兆ドン削減へ
2011/03/08

ベトナムでは2月11日にベトナムドンが切り下げられ、その10日後(21日)に金融引き締め策が発表されました。金融引き締めの内容は「マネーサプライ(M2)を110兆ドン(約4,400億円)削減する」という大きなものでした(1円=250ドン換算)。加速するインフレの抑制と安定成長を目的に挙げています。

具体的な政策は2つ。1つ目は11年度の貸付成長率目標を23%から18−20%未満に引き下げて50兆ドン削減するというもの。予想される影響・効果は企業の資金繰りの悪化、原材料輸入などの減少による貿易赤字の縮小、インフレの抑制です。

貸付先に関しては、中央銀行の総裁が3月1日に「証券や不動産、非生産セクターへの貸付割合を減少させる方針で、6月末までに22%、12月末までに16%以下にする」と発表しました。逆に生産セクター、農業・農村セクター、輸出企業、中小企業には優先的に貸し付ける方針です。これを受けて、ホーチミン上場の証券銘柄はすべて急落しています(ティッカーはAGR、HCM、SBS、SSI)。

残りの60兆ドンは4つの政策(歳入の増加、財政赤字を5%以下に抑制、政府投資の再検討、財政貸出の10%削減)で削減予定。予想される影響・効果はインフラ関連企業の業績悪化、財政の健全化、インフレ抑制です。共産主義なこともあり、企業と政府の癒着・汚職はかなりあると思われます。そのなかでどれだけ実行できるのか、中央政府の本気度が試されるのではないでしょうか。この110兆ドンのマネーサプライ削減が実現すれば、約30−40億ドルの貿易赤字の削減を見込んでいるそうです。

前回「ドン切り下げ後、市場レートはさらに下落」と書きました。輸出企業は輸出で得たドルを売却しようとせず(企業も国民もドルを保有しようとする傾向がある)、ドン切り下げ後もドル不足は変わりませんでした。そこでドンの下落トレンドに歯止めをかけるためにグエン・タン・ズン首相が2月24日、「国営企業は保有するすべての外貨を銀行へ売却するべき」と発言。同首相はまた、「企業が改めてドルを必要とする場合は、銀行が公式レートで供給するだろう」と言明し、ドン安にブレーキをかけました。

短期的な視点でみればドン切り下げも金融引き締めも株式には非常に悪影響を与えます。しかしこれは高成長を優先してきたベトナムの歪みを是正する行為で、どこかでやらなければならなかったことだと思っています。中長期的に考えれば、多少経済成長が鈍化しても貿易赤字の解消や通貨の安定をさせた方が実りは大きいのではないでしょうか。

注目は今回の金融引き締めがどれほど徹底されるか、またどれだけ効果を出せるかです。

(大鳥 洋子)

大鳥 洋子サイトへのリンク

バックナンバー

閉じる

ページの先頭へ戻る