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新興国情報

海外資金流入のカギを握るベトナムの貿易赤字、近年は着実に減少
2011/03/29

「ベトナムドン切り下げの背景と影響」の回で貿易赤字が一番の原因と書きました。今回はその貿易赤字について考えていきたいと思います。

まず、貿易赤字により外貨準備高が減少するという問題が起きています。ベトナムの外貨準備高は2008年の239億ドル(約1兆9,500億円)をピークに減少。2009年に75億ドル減の164億ドル、2010年末にはさらに64億ドル減少して推定100億ドルしかないと言われています。2008年より前からずっと貿易収支は赤字だったものの、2008年のリーマン・ショックまでは外国直接投資(FDI)が急増していたため、外貨準備高は増加し続けていました。しかしリーマン・ショック後にFDIが急減し、外貨準備高は危機的な水準まで減少してしまいます。

この危機的状況を打破するためにはFDIの増加と貿易赤字の削減が急務となりました。ベトナム政府はFDIを呼び込むためにかなり努力をしています。最近の日経新聞で日本が官民一体でベトナムの港湾や空港に投資をするという記事がありました。それ以外にもベトナムへのFDIの記事がよく取り上げられていることからもベトナム政府の頑張りが分かると思います。このように政府も力を入れていますし、世界経済の回復に伴ってFDIは増加していくのではないでしょうか。

次に貿易赤字です。2000年から2010年までの11年間の貿易収支をグラフにしました(図1参照)。

図1 ベトナムの貿易収支

図1 ベトナムの貿易収支

この期間、貿易赤字でない年はありませんが、2009年から減少しているのが分かると思います。特に2009年は前年比で大きく減少。世界経済の停滞による機械設備や鉄などの輸入品の減少や国内初の石油精製所の稼働が主な理由です。ベトナムは自国で石油を精製する技術がなかったため、原油を輸出して石油などの精製品を輸入するという非効率的なことをしていました。国内に精製所を作ることで無駄な貿易赤字を減少させられます。現段階では自国の消費量を賄いきれていませんが、2014年にギソン精製所、2015年にロンソン精製所を完成させてすべて自国で賄う計画です。

2010年はドン切り下げの効果が大きいです(2009年の11月、2010年の2月と8月にドン切り下げて合計10%強のドン下落)。また商品の国際価格が上昇したことも追い風となり、原油以外の輸出品の総額が軒並み増加しました。

足元の2011年第1四半期の貿易赤字は前年同期比11%減の30億ドルにとどまる見通しが発表されました(輸出額が33.7%増の193億ドル、輸入額が23.8%増の223億ドル)。2月のドンの9.3%の切り下げが寄与していると思われます。2011年も貿易赤字になるでしょうが、着々と赤字幅を減少させている状況です。

別の指標で見てみましょう。政府は「輸出総額に対して貿易赤字を16%以下に抑えること」を2011年の目標としています。貿易赤字額では2009年と2010年はそれほど変わりませんが、この指標(輸出総額に対する貿易赤字)で見た場合、2008年が28.8%、2009年が22.5%、2010年が17.3%と2010年も大きく減少しています。2011年第1四半期も13.5%と好調です。

貿易赤字の減少とインフレの抑制がうまくいけばマクロ経済はかなり安定するはずです。マクロ経済の安定は外国人投資家に最も嫌がられているインフレや通貨安の解消につながり、海外ファンドの膨大な資金が株式市場に流れ込むというシナリオも十分に想定できるようになります。

不安定な面も多くあるベトナムですが、少しずつ解消されている状況です。今後の貿易収支やインフレ動向に注目していきたいと思っています。

(大鳥 洋子)

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