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新興国情報

中・越・比3カ国でエスカレートする「スプラトリー(南沙)諸島問題」とは?(後編)
2011/06/28

中国はアフリカでの資源開発に積極的なことも有名で、世界中で資源争奪戦を繰り広げていることは周知の事実かと思います。中国・インドの人口大国がこれからも発展していくとなれば、資源不足になるのは明白であるため、中国がなりふり構わずに資源を確保しようとすることは国策と言えると思います。しかし、米石油会社のユノカルを買収しようとしてアメリカの反感を買うなど、やりすぎ感は否めません(※)。

今回の南シナ海問題も存在していた潜在的な対立の原因は「資源」です。中国は資源に貪欲ですが、これ以上悪化はしないのではないかと考えています。中国はここ最近、比較的柔軟な路線をとってきており、それは「同海域の平和と安定を望んでいる」と発言したことでも読み取れます。ベトナムやフィリピンも中国と本格的に争うのは現実的ではありません。アメリカも積極的な介入というよりは「何かあれば介入する」というスタンスで、中国をけん制している状態です。お互いにケンカにならない程度のジャブを放って、権利を主張したとみています。

しかし今回の問題には資源獲得以外の思惑も存在する可能性があると思っています。ベトナムは5月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比で19.78%に達し、中国も6月のCPI上昇率が同6%を超えるとの見方が強まるなか(5月は同5.5%)、物価上昇が国民の生活を圧迫しています。両国の国民は政府への不満がかなり募っているのではないでしょうか。(理由は様々ですが)中国では各地でデモ隊と警官が衝突しています。

日本の場合、自民党がダメなら民主党、みんなの党など他の選択肢がありますが、一党独裁のベトナムや中国の場合は選択肢がありません。その分、政府への不満は国を不安定にしやすいです。国民の不満を解消できるのが一番いいのですが、ほとんどが簡単に、短期的にできる問題ではありません。そのようなときによく行われるのが「敵づくり」です。実際ベトナムでは物価上昇で持ち切りだった関心がスプラトリー(南沙)諸島問題にすり替わっています。非公式のデモはほとんど行われないベトナムで、非公式の反中デモが3週連続で行われる異例の事態なったのは政府が黙認しているからです。政府が煽っているとまでは言いませんが、矛先を外に向けたいという思いは強いのではないでしょうか。

スプラトリー諸島問題がここまで長引き、大きくなったのは権利を主張する他国へのけん制だけでなく、国民の意識をそらす狙いがあったという見方をする人もいるのです。実際にスプラトリー諸島問題にこのような意図があったかどうかは分かりません。分かりませんが、このような憶測が飛び交うほど高インフレは経済にダメージを与えています。

※中国の政府系企業である中国海洋石油(CNOOC)はカリフォルニア州の石油会社ユノカルを185億ドル(1兆5,000億円)で買収しようとし、アメリカの政治的抵抗を受けて断念した。

(大鳥 洋子)

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