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新興国情報

ベトナムで最注目の大型IPOが7月29日に実施、市場では「厳しい展開」見込む声も
2011/07/19

今年ベトナムで最も注目されているIPO(新規株式公開)銘柄の1つ、石油製品の輸入販売を手がける国営のベトナム石油総公社(ペトロリメックス)が株式会社化される予定です。同社は国内の石油製品の市場シェアが60%に達する国営企業。資本金は10兆7,000億ドン(約5億2,500万米ドル)で今回のIPOでは2.56%に相当する2743万株を売り出す予定です。民営化後も政府が75%以上の株式を保有し、実質的な経営権を維持します。同社の経営陣は、「足元の株式市況は低迷しているものの、当社のIPOは多数の投資家を引きつけるだろう」と自信を示していますが、市場では厳しい展開を強いられるという予想も出ています。

今年の6月10日に実施されたべトナム鉄鋼総公社のIPOはペトロリメックスと同じように注目されていましたが、結果は失敗に終わっています。最低公募株価が10,100ドンに対して平均落札株価が10,101ドン、売り出した6,598万6,900株に対して落札されたのは3,915万1,400株でした(落札率60%)。同社の経営陣は「新日本製鐵や伊藤忠丸紅鉄鋼が戦略的パートナーへの意向を表明している」と話していたものの、外国人の落札株数は50万株と売り出し株の1%に満たなかったところを見ると、どちらも戦略パートナーにはならなかったようです。

今回のペトロリメックスと比較すると、最低入札価格が額面の10,000ドンに近い10,100ドンで売り出されたべトナム鉄鋼総公社が60%しか落札さなかったにもかかわらず、ペトロリメックスは最低入札価格が15,000ドンと高めに設定されています。株式市場の低迷を受けて、ホーチミン・ハノイ市場でも額面割れする銘柄が多く見られる状況で、15,000ドンの最低入札価格で資金が集まるのかどうかが心配されます。また、国家主導のエネルギー保全政策が背景にあるようで、外国人投資家の参加を認めない方針を明らかにしています。

また、同社は2011年の第1四半期に2兆6,500億ドン(約1億3,000万米ドル)の赤字を計上したことも重しです。赤字のうちドン安によるものが1兆8,540億ドンと、自国通貨が大幅に切り下げられたことが影響しました。政府による補助金も2月で財源が尽き、赤字幅を拡大させた要因です。通貨の切り下げは一時的なものではありますが、政府が75%以上の株式を保有している以上、企業業績よりも政府の意向が優先されることは想像に難くありません。そうなれば、さらなる業績悪化も十分に考えられます。

現在の市場環境、他のIPO動向、足元の業績――どれを取ってもネガティブですが、国を支える大型企業であることは間違いありません。

2015年度までに44億〜48億米ドルを投資し、中南部カインホア省バンフォン経済区で石油製油所を建設することを発表しています。国内ではズンクアット製油所が2010年度から正式稼働しており、第2の製油所として出光興産などが参加するギソン製油所のプロジェクトが進行中です。

他にも、2014年までに中国−ベトナム間に燃料パイプラインを建設するという計画があります。同パイプラインによって、中国広西省にあるペトロチャイナの精油所からベトナムクワンニン省にあるペトロリメックスの貯蔵基地に燃料を輸送します。

このように国営企業ならではの魅力的な案件も多く、将来を有望視されています。IPOはうまくいかない可能性がありますが、ウォッチを続けていきたい企業です。

(大鳥 洋子)

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