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新興国情報

カンボジア政府と世界銀行の衝突、背景に中国の影
2011/09/05

世界銀行がカンボジア向け新規融資を凍結、住民移転問題で

埋め立てが進むボンコック湖。湖の周りには貧困な人々が多数暮らしていました。

8月9日に世界銀行は、カンボジア・プンペンでの住民移転に問題があるとして、カンボジア向けの新規融資を凍結することを発表しました。プノンペン北部のボンコック湖では、中国系企業により、湖を埋め立てて、高級住宅、オフィス街を新たに建設するプロジェクトが進められています。この事業のために、ボンコック湖周辺に住んでいた住民が強制的に移転を迫られています。世界銀行では、この住民移転に重大な問題があるとして、カンボジア政府に何度も改善を求めてきましたが、その要求が受け入れられなかったため、新規融資を凍結したとしています。

世界銀行などのドナーは、援助をする際に様々な条件を付けることがあります。他方、カンボジアへの影響力を強化している中国は、国内問題には口を出さないとしており、カンボジア政府もこの方針を歓迎しています。今回、カンボジア政府側は、中国の力と資金を背景に、世界銀行への反発を強めており、問題の解決は容易ではないものとみられています。なお、世界銀行は、2006年6月にも入札手続きに不正があったとして、3つの事業への融資を凍結したことがあります。このときは、世界銀行とカンボジアで合意したアクションプランに沿ってカンボジアが改善を実施することとし、その完了を持って、2007年2月に凍結を解除しています。

世界銀行の居丈高の態度は、途上国で嫌われることも多いのは事実です。他方、貧困な住民を無理やり移転させる中国系企業のやり方にも大いに問題があると言わざるを得ません。

援助国会合を無期延期、世銀の融資凍結に対抗か

カンボジア政府は、今年11月に予定されていた援助国会合「第4回カンボジア開発協力フォーラム(CDCF)」を無期延期すると発表しました。援助国会合は、カンボジアに援助を行っている国、国際機関などとカンボジア政府の間で、経済情勢、政策方針、開発実績などを協議するとともに、今後予定する援助を約束する機会となっていました。2010年6月に開催された前回の会合では、援助国側は11億ドル(約850億円)に及ぶ援助を約束しました。会合は、ほぼ1年半に1回の頻度でこれまで定期的に行われてきています。

政府側は否定しているものの、この延期は、プノンペンのボンコック湖周辺の住民移転問題で世界銀行が新規融資を凍結したことに対する対抗措置とみられています。会合では、援助国側から、援助を供与する条件として様々な改革の促進を求められることもあり、カンボジア側での反発が強まっていたとの背景もあります。最近、援助を大幅に増やしている中国は、援助の条件として改革を求めないとしており、カンボジア側もこれを歓迎しています。

会合の無期延期によって、ただちに各国の援助が止まるわけではありませんが、援助国側とカンボジア政府間での貴重な対話の機会が失われるのは、ボディブローのように時間をおいて各国の対カンボジア援助政策に影響を与えることが懸念されます。

(鈴木 博)

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