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新興国情報

露ロスネフチと英BPの戦略提携、米国からの圧力が懸念材料
2011/01/28

ロシアはアジアと欧州を結ぶ接点としての地の利を活かし、ハイテクと国際金融の分野で世界のハブ(拠点)となることを目指して、さまざまなプロジェクトに取り組んでいる。また、2015年までに約900の国営企業を民営化し、約4兆8,000億円の資金調達を目指すなど経済の近代化を急速に進めるロシア経済のダイナミズムは今後、目を離せないところだ。

そこで1回目となる今回のブログでは、1月中旬、露国営石油大手ロスネフチと英石油大手BPが企業連合を結成し、ロシア国内外で海底油田の共同開発を進めることで合意した問題を取り上げる。

合意では、両社は石油・天然ガス資源が豊富に眠るロシア領北極圏の大陸棚の開発や外国の石油・ガス田の開発にも取り組み、当面は、ロスネフチが昨年、政府から開発権を取得した南カラ海の3鉱区(東Prinovozemelsk-1、同2、同3、計12万5,000平方キロ)を共同で開発するとしている。

しかし、両社の戦略提携が今後、スムーズに動き出すまでには曲折がありそうだ。ロシアと同様に、北極圏の石油・ガス資源開発に全力を挙げている米国にとってはロシアに先を越されたくないという思惑があるからだ。

北極圏の海底油田開発をめぐっては、ロシアだけでなく、米国やカナダ、デンマーク、ノルウェーの各国もそれぞれ領有権をめぐって凌ぎを削っており、ロシアとしては、海底油田の開発で先端技術を保有しているBPとの提携によって、同地域での開発で主導権を握りたい思惑がある。

ロシアが北極圏の開発に積極的なのは、ロシア国内の陸上部での油・ガス田開発は全体の75%が着手済みとなっているが、そのうち、50%では資源量が枯渇、30%でも採掘量が低下しているという待ったなしの事情がある。

ロシアの専門家によると、北極圏の油・ガスの可採埋蔵量は石油換算で1,000億トン相当と推定されており、ロシアは2011年末までに北極圏のロシア領内での油・ガス開発の長期計画の策定を急ぐ方針だ。

また、BPにとっては、2010年4月の米メキシコ湾で大量の原油流出事故を引き起こして以降、米国沖の海底油田開発が困難な状況にあることを考えると、提携を通じてロシアの石油・ガスの利権を一手に握るメリットがある。

しかし、その半面、BPは提携によってロシア政府の管理下に入る可能性があるため、BPは今後、米国の議会から厳しい批判の矢面に立たされることが予想される。

米下院天然資源委員会の重要メンバーである民主党のエドワード・J・マーキー議員は1月14日に、今回の提携は米国の国家安全保障や経済安全保障の観点からどんな意味合いを持つか十分に調査する必要があると意気込んでいる。

同議員は今後、BPの米国での投資活動が米国の国益に重大な影響を与えるかどうかについて、対米外国投資委員会(CFIUS)は直ちに調査を開始すべきだとしているのだ。

米政府もオバマ大統領がBPによるメキシコ湾原油流出事故を調査するために設置した特別委員会が先週、北極圏の油・ガス田開発のモラトリアム(一時中止)を提言しており、今後、両社の提携をめぐって、BPは米政府・議会からの圧力にさらされる可能性がある。

また、BPが2003年にロシア新興財閥グループと折半出資で設立した合弁石油会社TNK-BPの他の株主から提訴される可能性もある。TNK-BPの筆頭株主であるロシアの投資グループAAR(アルファグループとアクセス・インダストリーズ、レノバで構成)は、TNP-BPだけがロシア国内での油・ガス田開発を手がけるというBPとの約束違反になるのかどうか調査を開始しており、今後の成り行きが注目されるところだ。

(増谷 栄一)

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