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新興国情報

露ロスネフチと英BPの戦略提携、前途多難に=TNK‐BPの株主が差し止めへ
2011/02/02

露国営石油大手ロスネフチと英石油大手BPは1月中旬に、株式の持ち合いを通じて企業連合を結成し、ロシア国内外で海底油田の共同開発を進めることで合意したが、わずか2週間足らずで暗礁に乗り上げる可能性が出てきた。

暗礁というのは、BPが2003年にロシア新興財閥グループと折半出資で設立した合弁石油会社TNK-BPの筆頭株主であるロシアの投資グループAAR(アルファグループとアクセス・インダストリーズ、レノバで構成)が1月27日に、BPを相手取って、ロンドンの英国高等法院に起こした差し止め請求だ。

AARは請求の中で、BPはロシアとウクライナでの油・ガス田開発はTNP-BPだけが手がけるという約束を反故にしたと主張、BPに約束の履行とロスネフチとの株式交換による資本提携、また、ロシアの国内外での油・ガス田の共同開発に関する合意を即時に中止するよう求めている。

合意では、BPがロスネフチの株式9.5%を取得する一方で、ロスネフチはBPの株式の5%を保有することになっており、この株式交換の価値は78億ドル(約6,400億円)に相当する。

もし、AARの主張が通り、裁判所から合意の差し止め命令が出れば、本格的な訴訟に発展し、BPにとっては大きなつまずきとなるのは必至。しかし、頼みの綱のロシア政府はこの問題には不介入の構えだ。

ノーボスチ通信(電子版)が1月28日報じたところによると、首相府のドミトリー・ペスコフ報道官は「これは民間企業同士のもめごとだが、真にもめごとなのかは分からない。ただ、現時点では政府が取り組むべきではない」と述べており、政府が調停に乗り出すことには慎重な姿勢だ。

もともと、このBPとロスネフチの企業連合の構想は、国際石油市場でのロシアの地位を高めることや、国内の石油資源の枯渇に対処するため、"最後のフロンティア"といわれる、北極圏の大陸棚での石油開発に重点をシフトすることを目指した国家プロジェクトとしての重要な意味を持っている。それだけに、いつまでも政府としても無関心を装うことはできないだろう。

政府が慎重なのは、AARの関係者が指摘しているように、BPは、ロシアとウクライナでの油・ガス田開発はTNP-BPだけが手がけるという約束があることについて、事前にウラジーミル・プーチン首相やロスネフチの会長でもあるイーゴリ・セーチン副首相(エネルギー担当)に十分、説明していなかったことと関係があるようだ。つまり、政府としては、まずはBPの責任で解決すべきとしか言いようがないのだろう。

実際、セーチン副首相は、AARとのもめごとについては、BPはロスネフチとの合意は法律的に完ぺきだと保証している以上、この問題は法律上の問題として処理されると信じているとし、BPに任せているようだ。

英国高等法院は2月1日に審理を開いて裁定を下す予定だが、もし、AARの主張が認められなかった場合には、AARは次のステップとして、スウェーデンにある国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)に仲裁を求める準備を進めているといわれる。

ただ、AARは、BPとロスネフチの企業連合を全面的に壊す意図はなく、TNK-BPも参加させることを望んでいるといわれる。また、BPのロバート・ダドリーCEO(最高経営責任者)もロスネフチとの企業連合結成の枠組み合意はTNK-BPとも分かち合えるようにしたいとしているが、「いますぐということではない」とお茶を濁している。

もともと、BPはTNK-BPよりもロスネフチを長期の戦略的パートナーとしてみているふしがある。内部告発サイトのウィキリークスによると、2008年11月の在ロシア米国大使館の公電で、BPのデービッド・ピーティー副社長(当時)が駐露米大使と会談した際、同社のロシア合弁会社TNK-BPを2-3年以内に会社分割し、石油部門はロシア国営石油大手ロスネフチに、また、天然ガス部門は国営天然ガス大手ガスプロムに吸収される可能性を指摘している。

これが正しければ、BPとロスネフチの戦略的提携を受けて、今後、TNK-BPがロスネフチと経営統合に向かう第一歩となる可能性があるだろう。

(増谷 栄一)

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