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新興国情報

露国営金融大手VTB、モスクワ銀行の完全買収に向け大詰めへ
2011/03/02

ロシア2位の国営金融大手VTB(対外貿易銀行)によるロシア5位のモスクワ銀行の完全買収をめぐる両行の確執は、モスクワ市政府が2月22日に、VTBを支持して、モスクワ銀行の保有株式46.48%とストリチナヤ保険グループの株式25%超をVTBに1,030億ルーブル(35億ドル、約2,900億円)で売却したことで新たな段階に入った。

これより先、VTBのアンドレイ・コスチン頭取とミハイル・クゾフレフ(Mikhail Kuzovlev)筆頭副頭取の2人は21日のモスクワ銀行の臨時株主総会で取締役に選出されており、これでVTBのモスクワ銀行での取締役数は合計で3人となったことから、VTBはモスクワ銀行の完全買収に向け大詰めの段階に入ったとも言えそうだ。

モスクワ銀行は実力行使でCEO再任を決定、VTBとの対立はエスカレート

もともと、モスクワ銀行はモスクワ市政府が設立した政府系銀行。モスクワのユーリ・ルシコフ前市長が腐敗政治の批判を受けて、昨年9月にドミトリー・メドベージェフ大統領によって解任されたことから、VTBはモスクワ銀行が管理するモスクワ市の資産の管理・運用を目指して、モスクワ銀行の経営権の獲得を目指している。

これに対し、モスクワ銀行の経営陣はあくまでもVTBによる完全買収に徹底抗戦する構えだ。その第1弾として、VTBのクゾフレフ筆頭副頭取をモスクワ銀行の新CEO(最高経営責任者)に選出することが決まっていた3月4日の臨時株主総会を急きょ中止している。

その代わりに、4月、または、5月の株主総会で、モスクワ銀行の大株主でもあるアンドレ・ボロディンCEOを再任することを決めるという実力行使に出ており、両行の対立はエスカレートする一方となっているのが実態だ。

一方、モスクワ銀行の株式6.4%を保有しているGCMインベストメンツも2月16日にモスクワ仲裁裁判所にVTBによるモスクワ銀行の経営権取得を可能にする株主総会の決定を見直すよう訴訟を起こし、現経営陣を支援する動きに出ている。GCMの株式保有の実質的なオーナーはモスクワ銀行の現経営陣との憶測も流れており、モスクワ銀行の経営陣の抵抗は激しさを増している。

モスクワ銀行の経営陣抵抗、「株式価値引き上げ戦術」との見方も

しかし、両行の確執を遠くから眺めているアナリストは、モスクワ銀行の経営陣が激しく抵抗している背景には、VTBによるモスクワ銀行の完全買収のもくろみに乗じ、モスクワ銀行の株式価値を引き上げる戦術があるとみている。

現在、ボロディン氏はレフ・アラルイエフ(Lev Alaluyev)副会長と合わせて同行の20.3%の株式を保有している。また、両氏の株式を含めた現経営陣を支持する少数株主は全体の約40%を保有しているといわれる。

そうした中で、ボロディンCEOは最近、同行の株式価値を自己資本の2−2.4倍に相当する82億−96億ドル(約6,700億−7,850億円)に査定額を引き上げている。

他方、VTBのアンドレイ・コスチン頭取は2月16日にロシアのオンラインニュースメディア、ガゼータ(gazeta.ru)とのインタビューで、2011年上期(1−6月)中にモスクワ銀行の全株式の取得を目指す方針を明らかにして、一部報道ではVTBはすでに少数株主と株式の買い取り交渉を開始したといわれる。

ボロディンCEOの査定に従えば、VTBはこの少数派の40%の株式を33億−38億ドル(約2,700億−3,100億円)で買い取らなければならなくなる可能性がある。アナリストは最終的にはVTBが全株取得に成功する可能性が高いとみているが、それまでには買収額をめぐって、まだ曲折が予想されそうだ。

(増谷 栄一)

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