文字サイズの変更

  • 小
  • 中
  • 大
新興国情報

英露石油大手TNK-BP、BPに代わってロスネフチとの連合を画策
2011/03/09

TNK-BP、BP株5%取得後にロスネフチ株10%との交換を提案

英露合弁石油大手TNK-BPの経営を実質支配しているロシアの新興財閥グループ、AAR(アルファグループとアクセス・インダストリーズ、レノバで構成)の経営陣が、同社の英国側の株主である石油大手BPに対し、BPの株式5%を46億ポンド(約6,200億円)の現金で取得したあと、露国営石油大手ロスネフチの株式10%と交換することを提案していることが露経済紙ヴェードモスチ(電子版)などの報道で2日までに明らかになった。

これは、BPとロスネフチとの企業連合の結成で“仲間外れ”にされたTNK-BPの経営陣が、是が非でも同連合の一角に食い込もうとして捻り出した苦肉の策だが、いまのところBP側の反応は冷ややかだ。

この提案は、TNK-BPがBPに代わってロスネフチの株式を取得して、ロスネフチと企業連合を組むのが狙いだ。その裏には、TNK‐BPは、ロスネフチが開発権を持っている北極圏南カラ海の3鉱区(計12万5,000平方キロ)の開発プロジェクトに参加することが可能になるという計算がある。

BP、TNK-BPの役員会をボイコット=亀裂深まる

これより先、TNK-BPは2月25日に役員会を開き、BP・ロスネフチ企業連合への参画を決める重要な採決を行う予定だった。

これは、TNK-BPのマキシム・バルスキー副CEO(最高経営責任者)が2月中旬に、西シベリアを訪問した際、記者団に対し、TNK-BPのBP・ロスネフチ企業連合への参画の可能性についてBP側から打診を受けていることを明らかにしたことから、2月25日の役員会でBP提案について議論するとみられていた。

しかし、結局、BP側は同社を代表する役員4人を欠席させ、事実上、役員会をボイコットしたため、ロシア側の筆頭株主であるAARとの亀裂が一段と深まっているのが実態だ。

TNK-BPの役員会はAARの4人とBPの4人、そして独立系の3人の役員構成だが、2月25日の役員会で参画が決まっていれば、BPとAARとの紛争が和解に向かう可能性があったが、結局、役員会が流れたため、TNK‐BPは3月2日に、BP株の取得・ロスネフチ株との交換という新提案を提示してきているのだ。

ロスネフチ、TNK-BPの参画を望まず

TNK-BPとしては、今回のBP株取得提案で仕切り直しを図ろうと、3月12日にパリで役員会を開き、今度こそ、BP株の取得・ロスネフチ株との交換の新提案を決めるかどうかの採決を行うと意気込んでいる。

しかし、ロスネフチのエドゥアルト・クダイナトフCEOは1月にBPとの戦略提携の合意を発表した際、TNK-BPが北極圏の大陸棚の海底油田開発に参加することを望んでいないと明確に拒否しており、今回のTNK-BPの経営陣による提案が実現するかはかなり疑問視されているところだ。

1月のBPとロスネフチとの戦略提携合意では、BPがロスネフチの株式9.5%を取得する一方で、ロスネフチはBPの株式の5%を保有することになっており、この株式交換の価値は両方で160億ドル(約1兆3,100億円)の規模に相当する。

他方、ロシア政府もTNK-BPの参画問題については、ロスネフチを世界的な石油メジャーに育成する方針には変わらず、BPをその目的の達成ために必要な海底油田開発の専門知識やノウハウを提供する戦略パートナーとして認識している。

ロスネフチの会長でもあるロシアのイゴール・セチン副首相は、BPとの北極圏大陸棚海底油田開発に打撃を与える可能性がある相手に対しては、ロスネフチは訴訟で対抗すると警告しているほどで、TNK-BPは入り込む余地はないのが実情だ。

BPとロスネフチは1月14日に、株式交換で企業連合を結成し、ロシア国内外で海底油田の共同開発を進めることで合意したが、AARはロシアとウクライナでの油・ガス田開発はTNP-BPだけが手がけるというBPとの約束違反になるとして、BPにロスネフチとの株式交換による資本提携の差し止め請求をロンドン高等法院に起こし、同法院は2月1日に差し止めを命じている。

今後は、3月7日にロンドン高等法院で差し止めをめぐる審理が開始されるほか、3月中にスウェーデンの国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)に協議の場を移し、同委員会から仲裁裁定を求めることになる公算が大きい。

BPとAARの対立、ロシア企業のIPOにも悪影響

BPとAARとの確執をめぐっては、単に両者の争いにとどまらず、ロンドン証券取引所でのロシア企業のIPO(新規株式公開)が困難になるなどロシア産業界にまで悪影響が及んでいる。これは、両者の争いを国家間の紛争に例えれば、外交によって隠密裏に解決されるならともかく、法廷という公の場に争いごとが持ち出されてしまったことで、投資家はロシア企業に対する投資リスクを強く抱かざるをえなくなるからだ。

米プライベートエクイティ(PE)ファンド大手のカーライル・グループの共同創業者のデービッド・ルーベンシュタイン氏は1日にベルリンで開かれた講演会で、ロシア投資について、過去10年間に2度、投資チームを結成したことがあるが、投資リスクに見合うほどのリターンは得られなかったため、投資チームは解散した、と指摘したほど、ロシア投資はそれほど甘くはないようだ。

すでに、露銑鉄・原料炭生産大手コークス(Koks)グループが1月下旬に予定していた5億2,000万ドル(約430億円)規模のIPOを延期に追いやられたほか、ポンプ製造のHMSハイドローリックやパイプ製造のチェルパイプ(ChelPipe)、金鉱山大手ノルド・ゴールドのロシア企業3社のIPOが中止、あるいは、延期となっている。

コークスはIPO延期理由について、表向きは市場環境が悪化したとしているが、投資家は、市場環境はそれほど悪化しておらず、むしろ、同社の公開価格が高すぎて上場後の株価急落リスクを恐れていると指摘している。また、エジプトやチュニジア、バーレーン、リビアなど中東・北アフリカ地域の反政府暴動で投資家は新興国投資を敬遠する動きを強めたこともロシア企業のIPOにマイナスに作用しているといわれる。

1月28日で終わった週の1週間だけで、投資家は新興市場国を対象にしたファンドへの資金償還請求額は3年ぶりの高水準となる70億ドル(約5,700億円)にも達したという。

(増谷 栄一)

バックナンバー

閉じる

ページの先頭へ戻る