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新興国情報

露金属大手ノリリスクの経営支配めぐり新展開=メタロインベスト、ルスアルと連携へ
2011/03/23

露金属大手ノリリスク・ニッケルの経営支配をめぐって、同社の2大株主である露大手投資会社インターロスと露アルミ地金最大手UCルスアルのし烈な戦いが続く中、これまで押され気味だったルスアル陣営にとっては朗報な動きが出てきた。

同2社に次ぐノリリスクの主要株主である露鉄鉱石鉱山最大手メタロインベストが3月17日までに、ノリリスクの持ち株比率を引き上げた上で、ルスアル陣営に見方する方針を明らかにしたからだ。

メタロインベストのオーナーで新興財閥のアリシェル・ウスマノフ氏は、同氏自身が個人的に保有しているノリリスクの株式4%をメタロインベストに譲渡した上で、メタロインベストは市場でノリリスクの株式を追加取得して持ち株比率を引き上げるとしている。現時点ではどの程度まで持ち株比率を引き上げるかは明らかにされていない。

メタロインベストは、3月11日にモスクワで開かれたノリリスクの役員会の新メンバー候補を決める株主総会で、ルスアルの協力を得て、メタロインベストのファハド・モシリ会長がノリリスクの役員候補に就任するために必要な6%以上の投票を獲得、同会長の役員就任の可能性が高まっている。モシリ会長がノリリスクの役員に就任すれば、その後は、ルスアルと共同戦線を組んでノリリスクの経営支配を目指すというシナリオができている。

役員数をめぐり対立激化

もともと、インターロスとルスアルの対立は昨年6月のノリリスクの株主総会にまでさかのぼる。ルスアルとインターロスは、2008年11月に、それぞれノリリスクの株式を25%取得(その後、インターロスは30%に引き上げ)していたにもかかわらず、この株主総会では、インターロスは4人の役員枠を維持したのに対し、ルスアルから役員に選出されたのは3人にとどまったことから、両社の関係が悪化している。

このため、ルスアルの実質オーナーとなっている新興財閥のオレグ・デリパスカ氏はノリリスクに何度も臨時株主総会の開催を要求して役員選出のやり直しを求めるが、これに対し、インターロスを支持するノリリスクの経営陣は自社株買いでルスアルに対抗する戦略を打ち出す。

まず、昨年12月にはノリリスクの株式全体の8%に相当する金庫株を同社に味方するオランダの資源取引大手トラフィギュラ・ビーエ(Trafigura Beheer)に売却、さらには、株式全体の7%に相当する45億ドル(約3,700億円)の自社株買い計画を進めている。

また、ルスアルの株主に対してもルスアルが保有するノリリスク株25%を128億ドル(約1兆400億円)で買い取ると持ちかけ、ルスアルのデリパスカ氏以外の大株主に揺さぶりをかけるなど、あの手この手でルスアルによる経営支配を免れようと画策しているのだ。

ルスアル、訴訟で対抗

これに対し、デリパスカ氏は訴訟で対抗する戦略に転換、両陣営の対立はますますエスカレートするばかりだ。まず、ルスアルは2月中旬に英国と米国の裁判所に対し、ノリリスクの金庫株の売却と自社株買い計画に関する情報開示を求める訴訟を起こしている。

このうち、ロンドン高等法院には、ルスアル側はトラフィギュラが金庫株8%を取得したことに関する情報開示について、同株式の取得を担当していたニューヨークの法律事務所デベボイス&プリンプトンに求めたが、結局、同法院は3月3日に、裁判権の乱用に当たるとして門前払いの判断を示している。

ルスアル側が情報開示を求めた背景には、インターロスがトラフィギュラと結託し、今後、ノリリスクの株式を保有する他の株主から買い戻そうとしていると判断があり、こうした結託行為はロシアの法律に抵触するとして、この企てを阻止する狙いがあった。

ノリリスク、自社株買い再開=差し止め解除で

一方、ノリリスクの自社株買いは1月27日に開始され、当初は2月10日で終了する予定だったが、ルスアルはこれを阻止するため、西インド諸島にある英連邦加盟国セントキッツ・ネイビス連邦の裁判所に差し止め請求訴訟を起こし、2月3日に差し止めに成功している。

しかし、この差し止め命令のあと、初審理が3月2日に同裁判所で開かれる予定だったが、急きょ、エドワード・バニスター判事が2月24-27日に審理を行い、2月28日には差し止め命令を解除する判決を言い渡しため、自社株買いが再開されている。

ノリリスクが進めていたルスアルが保有するノリリスク株25%を買い取る交渉をめぐっては、ルスアルの株主の中にも検討に値するとの声もあった。

ルスアルは、同社の株式47%を保有しているデリパスカ氏が牛耳っている会社だが、今回のノリリスクの経営支配を終始一貫して主張しているのはデリパスカ氏で、必ずしも他の株主とは一枚岩ではない。ノリリスクはそこを突いたのだ。

ルスアルの株式15%を保有する3位の大株主であるSUALパートナーズはノリリスクの自社株買い提案を支持する意向を示し、同2位の投資会社オネクシムとともにルスアルの役員会で同提案を検討すべきだと主張している。

また、ルスアルのビクトル・ベクセリベルク会長も2月に、ノリリスクの買い取り提案について、「ノリリスクの時価総額から判断して、(128億ドルの金額提示は)真剣に検討されるべきだ」との認識を明らかにしている。

しかし、結局は、デリパスカ氏が最後までノリリスクの新提案を受け入れる考えはないとの強硬姿勢を崩さず、売却を支持する株主や幹部の反対を押し切ったため、3月4日の役員会で、買い取り提案を拒否している。

インターロス陣営、役員会の過半数確保=3月株主総会で

両陣営の対立はこう着状態となる中、3月11日にデリパスカ氏の要請で、ノリリスクの役員会の新メンバー候補を決める株主総会がモスクワで開かれたが、非公開のため、今後の正式発表を待たねばならない。しかし、アナリストによると、ルスアルはインターロスと同数の4人の確保を目指したものの、結局、従来通りの3人にとどまったとみられている。

これに対し、インターロス(持ち株比率30%)陣営はインターロスの4人に加え、同陣営に加わっているトラフィギュラ(同8%)とインターロスのオーナーで新興財閥のウラジミール・ポターニン氏が所有するノリリスクの経営陣(同7.2%)と合わせると7人となり、全12人の役員の過半数を占めたもようだ。

一方、ルスアル・メタロインベスト陣営は5人にまでが精一杯ではないかとみられており、依然、インターロス陣営が有利な立場には変わりはないようだ。

ルスアルとノリリスク・インターロス連合との経営支配権をめぐる確執はまだまだ終わったわけでなく、長期化の様相を呈している。モシリ会長は将来的にはメタロインベストをノリリスクとルスアルと合併させて、世界最大の鉱山・金属資源会社を創設したいとしており、今後は両陣営の調整役としての同会長の手腕が見どころだ。

(増谷 栄一)

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